冷蔵ブドウ(シャインマスカット)保存マニュアル、のようなもの | 信州桑原 北澤ぶどう園三代目日誌

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 このところ、シャインマスカットの冷蔵出荷が増えてきたとのことで…、今シーズンに向けた参考に、思いつくところを書いてみました。

 ワタクシの知識と経験と思いこみしかなく不完全ですので、ご指摘、ご意見、ご質問など、どしどしお寄せください。
 じゃんじゃん訂正して、より良くしていきたいと思いますので。


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冷蔵ブドウ(シャインマスカット)保存マニュアル、のようなもの

あくまで個人的な見解です。信じて何かあっても責任は持ちません(^^

●栽培
 病害を考え、できる限り雨除けを検討する。(トンネルメッシュ等。最低でも笠かけ、袋かけを)

 冷蔵貯蔵のことを考えるならば、保存性を考え、2回目GA処理時にフルメットの加用を検討する。
なお、使用の際は粒肥大のことも考え、濃度、着荷量などは十分に検討すること。

1回目のGA処理時にフルメットを加用すると、穂軸も太くなりやすくなる(?)。
粒張り等を考えると使用したいが、太くなり過ぎて白化、木化しやすくなり(特に早い時期の処理?)、貯蔵中に穂軸表面が褐変しやすくなるので注意すること。

 販売側の要請にもよるが、目下は果色を考えて有色袋の使用がベター。
 上記と矛盾する点もあるが、穂軸にもある程度の光が当たるように新梢管理する(穂軸での光合成も活発に行わせる)。

 カルシウム、ケイ素、ホウ素等に気をつけ、丈夫な果粒になるよう心がける。

 貯蔵用に収穫時期を遅くする際には、次年度以降のブドウ樹の養分貯蔵も考えて、着荷量を増やしすぎないようにすること。
 できれば早い時期の礼肥を忘れずに。

 途中で葉色が衰えてこないよう注意して管理する(収穫まで天気次第では灌水を続ける)。
 9月以降、窒素(尿素)の定期的な葉面散布も検討する?


●防除
 冷蔵貯蔵で最も注意すべきは灰色かび病である。
 開花時~袋かけまでの灰色かび病対策が最も重要であるが、冷蔵貯蔵を行う予定の園では、その後も園内の菌密度を下げる意味で、8、9月~も灰色かびの防除を行うことを検討する(農薬散布には専用剤がベター)。

 その他、貯蔵中、まれにホモプシス腐敗病も発生する。
 袋かけ前にEBI剤等の効果のある薬剤を散布することを検討する。(ブドウの病気については登録がないので、あくまで副次効果的な意味合いとして)

 その他、赤さびなどにも注意し、収穫期まで確実に緑葉を維持するように防除を行う。


●収穫
食味・糖度を厳守して収穫を行うこと。
早採り果は、たしかに貯蔵性は良いのだが厳禁で。
 シャインマスカットについては、過熟気味でも貯蔵性があります。

 収穫時期は貯蔵期間、機材の使用等によって検討すべきであるが、10月半ば以降(@長野)か?
 完熟~完熟ちょっと手前ころがベストか?

 園外周など、黄色の進み過ぎている房は冷蔵以外での出荷も考える。ただし、保存性には大差がないので、箱詰めに気をつければOKでしょう?

 収穫は、冷蔵庫内との温度差、貯蔵性を考え、できる限り早朝に行う。
 貯蔵量の多い際は、複数日にわたって収穫するのがベターです。
入庫の際は、端からみっちり積まずに、低段積みにし、コンテナごとの間を空け、冷風を通して果実温度を下げることに留意する。一晩おいて、果実温度が下がってから貯蔵用に積み上げる。

やむを得ず日中に収穫する際は、翌早朝に入庫する。
 ブドウと庫内の温度差がありすぎると、冷蔵機が強く働いてしまうので、設定温度次第では庫内の場所によって凍結の恐れがあります。

 可能な限り1房ずつチェックして、病果、裂果等を取り除くこと。
 房を選べるのであれば、穂軸が細すぎず、しなやかで、緑色がはっきりしたものを貯蔵する。

 穂軸は、フレッシュホルダー(@有限会社フレッシュ)等を使用する場合は長めに切って収穫する。
使用しない場合は穂軸が露出しないよう、袋の縁際で切ること(袋外に露出している穂軸は枯れやすく、長いまま残しておくと、袋内の穂軸にまで枯れ込みが入っていきます)。

 保存はコンテナにて。収穫した袋ごとの状態で貯蔵するのがベターです。
 ウレタンと新聞紙などを敷いてブドウを袋ごと置く。その際は、押し果に注意して、あまりみっちり詰め込まないこと(通常の収穫通りで)。


●貯蔵
 収穫前には庫内・コンテナの洗浄を徹底すること。
 特に庫内は、アルコールで拭くなど除菌を徹底する。

 灰色かび病は低温域でも発生するので、庫内でも十分に気を付ける。
 灰色かび病は3℃くらいではまだ活動している。0℃以下ではかなり活動が鈍るそうです。

 設定温度は、ブドウ(特に穂軸が弱い)が凍結しないように注意して、できうる限りの低温域に調節する。

 ブドウの穂軸は-3℃で凍結するので気を付ける。
 果粒が凍結、解凍すると、品質が著しく低下して商品価値が無くなるので要注意。
 出荷中、庫内に貯蔵するブドウが減ってくると、温度変化が大きくなるので気をつけること。

 冷蔵庫と氷温庫では、庫内の温度変化がかなり異なるので注意する。
 冷蔵庫(冷蔵機)では温度の振れ幅が大きく、氷温庫(氷温機)では比較的小さいと聞きます。個人的には氷温庫の使用がおすすめです。

 庫内の場所によって温度差があるので、複数個所に温度計を設置してチェックすること。
冷蔵機の温度センサーは、概ね高所にあると思うので、床付近の温度に注意する。
 特に最低気温に気をつけること。冷風の吹き出し口の周辺は特に下がります。

 冷風がブドウに直接あたらないよう、風の流れる付近(上部・壁際)のコンテナは貯蔵中、段ボール等でカバーする。

 湿度は、可能な限り高い方が良い(穂軸の保持、果粒の蒸散・呼吸消費等)が、加えて温度も高いと、病気の発生を助長するので、バランスを十分に検討すること。
 氷温庫であれば、-1.5~0℃、湿度90%でもOK?

 フレッシュホルダー等、穂軸からの給水は、ブドウの鮮度保持に抜群の効果を発揮するので、可能な限り導入を検討する。
 なお、その際は庫内の温度に注意する(水が氷るので、最低が-0.5℃以上になるように温度を調節する)。
 給水に添加物を溶かすことは、かなり黒いグレーなので、あくまで水を使用すること。

 給水を行うのならば、湿度は高くなくてもOK。
むしろ、低めに調節して病気の発生を予防する。ただし、低すぎると蒸散が高くなりすぎてしまうので、どのくらいが良いかは要検討。(50~60%くらいか?)

 穂軸の先が水中から出ないように注意して貯蔵する。水切りも効果がある。
 貯蔵の途中でホルダー等に給水する際は、穂軸を切り戻す。

 貯蔵のコンテナは、隙間の無いように積み並べるのがベター。
 並べる際は、先入れ、先出しに注意し、収穫の早いものを入り口付近に積むように気を付ける。
 庫内は、冷気を通すためにも、上部などある程度の空間を空けて貯蔵する。腹八分目で。

 機能性のあるなしに関わらず、密閉される袋(ポリ等)は病害の発生がたいへん懸念されるので、十分に試験したのちに導入を検討すること。

 紫外線ランプ等、明らかに殺菌効果が期待される機材は有用です。

 入庫後は、できる限り開閉は控えること。

 貯蔵するものはできるだけブドウのみで、特にリンゴと一緒は×。


●出庫・荷造り
 結露しないよう、庫内と外気との温度差に気をつけ、早朝に出庫すること。(気温差は5℃以内がベター)
 出庫した際には結露しなくても、日中の温度上昇で結露するので注意(果粒の温度上昇と差があるため)。

 高温が予想される際は、前夜に出庫して袋から出し、扇風機等で風を動かすなど、荷造り前に結露を無くすことを検討する。

 荷造り時に作業場を暖房等で気温を上げる際も、結露に気をつける。できれば室内all暖房での作業はしない方が良い。

 結露が残ったままで流通すると、果実の保存性が著しく低下します。

 荷造りの際は果粒の腐敗に特に注意する。
 各種病気は、オレンジ~茶色の微小斑点としてまず発生している。出庫後1日でもかなり病斑が進行するので、よく見て確認すること。


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