このブログでつげ義春の作品をとりあげるのは、「紅い花」以来2度目になります。
「紅い花」の時には、同系統の作品「海辺の叙景」と共に、つげ義春漫画の抒情性について少し書きましたが、今回のテーマである「ねじ式」は、それと真逆な不条理漫画です。
そしてこの「ねじ式」は、自分が言うまでもなくつげ義春の最も有名な作品であり、怪しげな魅力に満ち満ちています。
自分が最初にこの「ねじ式」に出会ったのは、中学生の頃だったでしょうか。
1969年に発表されたこの漫画は、もはや漫画界の伝説であり、また「つげ義春」という作家も、寡作で孤高でミステリアスな漫画家として知られていました。
そして、自分も最初にこの「ねじ式」を読んだ時は、やはり大きな衝撃を受けました。
起承転結の破綻したストーリー、夢の中に出てくる風景をそのまま描き込んだような絵・・・
中学生の自分にとってはゾクゾクする刺激があり、しかしそれでいて、何か懐かしいような奇妙な感じも伴う漫画でした。
「メメクラゲ」という謎の(?)生物のネーミングもすごいものです。
(後日、何らかの書物で、これは本当はつげ義春が「××クラゲ」という伏字のように書いたのを、写植での段階で誤って「メメクラゲ」としてしまったという説を読んだことがありますが、偶然の産物だとしても秀逸です。)
そして、特に自分が初読の時に心惹かれたコマが、下のものです。
昔は眼科の看板って、本当にこういう眼の絵が描かれていたのでしょうか。
ただ、その真偽は別としても、この眼の看板のオンパレードと、「ちくしょう」という割には無表情な主人公の顔は、非常に印象的でした。
また、その他にも、お面をかぶった機関車の子供運転手、「ねじ式」の手術を行う色っぽい女医さん、そして名言「イシャはどこだ!」のおじさんなど、奇妙で魅力的なキャラクターがたくさん登場します。
まさに一読したら、そのまま脳内に居ついてしまう漫画でした。
つげ義春の漫画には、この他にも多くの不条理系漫画がありますが、やはり自分にとって、この「ねじ式」にかなう物はありません。(「ゲンセンカン主人」なんかは、不条理とはまたちょっと違うゾクゾクした味のある名作ですが・・・)
もう20年ほど前にはなりますが、この「ねじ式」が映画化されたので、自分ももちろん観に行きました。
浅野忠信が「ねじ式」の主人公を演じていましたが、ちょっとイメージとは違いました。監督はあの『網走番外地』の石井輝男で、原作の雰囲気を再現するべく奮闘されたとは思いますが、やはり原作の衝撃はなかなか超えるのは難しかったかな、と思います。
現在、自分の家には、一体どういう経緯で手に入れたのかちょっと覚えてはいないのですが、この「ねじ式」の主人公のゼンマイ人形があります。
ネジを巻くと最初はゆっくりカタカタと歩き出し、そのうちにいきなり走り出します。
何とも不気味で、カワイイ玩具です。