<開城郊外が舞台のモデル ドラマ愛の不時着>
第3章 地理-3.行政区域,
朝鮮八道について
ピョンヤンとソウル以外にも特色有る都市が多く、それらを取り上げ歴史地理を掘り下げて行ければ良いのですが、沼にハマる恐れがあるので旧八道を順に取り上げその中で簡単に触れる事にします。
その後、韓国の広域市、共和国の特別市を扱います。
朝鮮の行政区域は高麗の5道両界オードリャンゲに源を発しています。
<五道両界>
朝鮮王朝はその区分を基に全国を八道に区切り支配しました。
今でも全国を表す言葉として
「八道江山(팔도강산):パルトガンサン」と言う語が普遍的で、我が国をあらわす言葉として使われます。
この区分が長期に渡り機能し、地域の特性を語る際にもしばし使用される位メジャーです。
<朝鮮王朝時代の八道>
「畿」とは都から500里(1里約400m)圏内を指します。日本の近畿も同じ意味です。
そう書いて気がつきましたが、朝鮮は日本の1里の1/10なんですね。
と言う事は日本の方が畿が10倍広いって事?ってどうでも良い疑問でした。
別名はメジャーでは有りませんが畿甸(기전)や畿中(기중)または赤畿(적기)と言う呼び方も有ります。
<朝鮮八道地図1469-1481>
❷ソウルから北東方面に咸鏡道(함경도)ハムギョンド。
当初の永吉道(ヨンギルト)→咸吉道(ハムギルト)→ 咸鏡道(ハムギョンド)→永安道(ヨンアンド)→咸鏡道と変化しました。
道名は全て重要な邑(こおり고을)の名2文字を合わせて作名されましたので、この場合永興(ヨンフン영흥),吉州(キルチュ길주),安辺(アンビョン안변),咸興(ハムフン함흥), 鏡城(キョンソン경성)からの合成です。
別名は関北(クァンブク관북)です。語源は各道の項目で触れます。
朝鮮王朝の太祖李成桂(イソンゲ리성계)の出身地でした。
<映画 八道江山パルトカンサンシリーズ>
❸ソウルから北西方面に平安道(평안도)ピョンアンド。
言わずもがな平壌(ピョンヤン평양)と安州(アンジュ안주)からの命名です。
別名は関西(クァンソ관서)です。
故キムイルソン(金日成)主席の出身地です。
❹ ソウルと京畿の西北には黄海道(황해도)ファンヘド。
黄州(ファンジュ황주)と海州(へージュ해주)から。
海の黄海からでは無い事に留意です。
別名は海西(ヘーソ해서)地方です。
金九、イスンマン(李承晩)元大統領の出身地です。
<左右道界と重要邑>
❺ ソウルと京畿の東には江原道(강원도)カンウォンド。江陵(カンルン강릉)と原州(ウォンジュ원주)からです。
別名は関東(クァンドン관동)、または嶺東(リョンドン령동)ですが、太白山以西を関西(クァンソ관서) 嶺西(リョンソ령서)と別に呼ぶ場合もあります。金剛山が鎮座し、同じ太白山脈は朝鮮の背骨と呼ばれています。
2018年ピョンチャン(平昌)オリンピックが開かれました。
<キムジョンホのテ–ドンヨチド大東輿地図>
❻ソウルと京畿の西南には忠清道(충청도)チュンチョンド。
忠州(チュンジュ충주)と清州(チョンジュ청주)から。
朝鮮王朝時代上記と公州(コンジュ공주)、洪城(ホンソン홍성)の組み合わせで충공도, 청공도, 공충도, 충홍도, 홍충도, 공홍도と幾度も変更が有りました。
あと残りは何通りでしょう?
使って居ない方が少ない様子。
別名は湖西(ホーソ호서)です(湖中ホジュン호중とも呼びます)。
朝鮮時代リャンバン(両班:特権階級、地主)の里として有名でした。
<BTSの歌 八道江山パルトカンサン>
❼ソウルから南東に慶尚道(경상도)キョンサンド。
慶州(キョンジュ경주)と尚州(サンジュ상주)からです。
別名は嶺南(リョンナム령남)です。
キムヨンサム(金泳三)、ノ ムヒョン(盧武鉉)、パクチョンヒ(朴正煕)元大統領、ムンジェイン(文在寅)大統領が出身です。在日韓国朝鮮人の約5割がこの道出身です。
韓国第2の都市プサン(釜山)が有ります。
❽ソウルから南西に全羅道(전라도)チョルラド。
全州(チョンジュ전주)と羅州(ラジュ라주)です。
別名は湖南(ホナム호남)です。
キムデジュン(金大中)元大統領の出身地です。
朝鮮随一の穀倉地帯と呼ばれています。
現代の大きな市や重要な市とラインナップが少々異なっている点が興味深いです。
<左右道の区分>
因みに左右道に分かれて居ましたが、あくまで漢城(ソウル)を基準に分けたので、南北で左右が違う事を記しておきます。
(上記地図参照)
これは江戸城(皇居)を中心に丁目、番地がつけられて居る東京の町と同じ感覚と言えます。
八道制はある程度地形に沿っている為利点も多いのですが、一つ一つの区分が大きく、例えば太白テベク山脈で分断されている東西を一つの江原道にするなど、経済的結び付きを無視している側面も有り、最適とは言えない区分でした。
<旧韓末 二十三府制>
その後いくつかの道は軍事目的から左右道になり(上部の地図に記載有り)、1894年甲午改革で地方活性化を狙い
二十三府制(23부제)と言う行政区域に変更されハ道は姿を消します。
しかし国王高宗の「俄館播遷(아관파천)アグァンパチョン」による甲午改革否定の混乱の中でこちらも僅か1年半余りで再度変更。
旧八道を基本に、新たに黄海道と江原道を除く6道が南北道に分割され、京畿を含み13道制となりました。
<13道制>
タラレバになりますが、この時の23府制は机上で作成されたので欠陥も有りましたが、核都市を中心に区分していて地方自治を進める上でうってつけだったと言えます。
その様な経験が無い我が国にとって大事な試みでしたが早期に挫折し残念です。
府名に今尚有名な都市が名を連ねており、地図を見比べると分かりますが、この区分は現在の共和国の道区分に影響を与えています。
新しい13道制は日帝期にも維持されますが、解放後変化しました。
ここで余談ですが、朝鮮半島は何の形でしょうか?
普通ウサギの形と言うのが一般的です。
しかし、弱々しいウサギでは無くて我が国古来より自生し、数々の民譚や俗談に登場するトラに見る向きもあります。
初めて提唱したのは、文学の巨頭で有りのちに親日派となる崔南善(최남선)で、雑誌「少年」で披露しました。
こんな感じですね。
向きは違いますが、中国大陸を虎視眈々と狙う姿が頼もしくも有ります。
88年ソウルオリンピックでもウサギは弱々しいと言うのでマスコットがトラのホドリになった事は記憶に残る事と思います。
その造形がケロッグのキャラクターに類似して居るとの訴えでトラブルを巻き起こしたのはオマケのハナシ(笑)。
<ホドリ>
では本題に戻り、まず解放後の韓国の方を見ます。
首都ソウルは特別市(특별시)になりました。
江原道は南北に分断され(南北道にはならず)、開城(ケソン개성)は6.25後北に所属した為京畿道から離れ、全羅南道から済州島(チェジュド제주도)が済州道チェジュドとして分離しました。
尚、現在済州道は済州特別自治道(특별자치도)に変更されています。
<韓国行政地図>
日本の政令指定都市にも似て、市が道と同等の格となる広域市(광역시)として
京畿道から仁川(인천)インチョン市、
忠清南道から大田(대전)テジョン市、
慶尚北道から大邱(대구)テーグ市、
慶尚南道から釜山(부산)プサン市と
蔚山(울산)ウルサン市、
全羅南道から光州(광주)クァンジュ市が分離独立しています。
<全国の代名詞として使用>
慶尚南道では現在の道所在地の昌原(チャンウォン창원)と馬山(マサン마산),鎮海(チンへ진해)市が合併し(新)昌原市となり、101万人の人口を擁し広域市への希望が高まりましたが、道の反対も有り広域市として分離独立は困難そうです。
また京畿道の水原(スウォン수원), 高陽(コヤン고양)市なども100万人を超え広域市への昇格条件を満たしていますが同じく見送られて居ます。
他に首都機能移転先として設定された世宗特別自治市(세종특별자치시)セジョンが忠清南北道から分離され特別自治市として設置されています。
<共和国 行政地図>
次に、共和国ではまず首都ピョンヤンが直轄市となりました(평양직할시)。
咸鏡南道(함경남도)から両江道(량강도)リャンガンドが分離、
平安北道(평안북도)から慈江道(자강도)チャガンドが分離、黄海道は南北に分離となりました。
ちなみに両江道は鴨緑江(アムロクカン압록강)と図満江(トゥマンガン두만강)両江が合わさる道と言う意味から、慈江道は慈城(チャソン자성)と江界(カンギェ강계)市から採られています。
南の広域市にあたる特別市は幾度か変遷が有りますが、現在南浦(남포)ナンポと羅先(라선)ラソン、開城(개성)ケソン市が特別市となっております。開城(개성)市は長く特別市でしたが黄海南道に特級市として編入されました。しかし最近2019年10月に開城特別市に再度昇格したとのニュースが有りました。
ドラマ愛の不時着に出る地方都市のモデルは開城と近郊の邑(고을)と言われて居ます。
他に新義州(신의주)シヌィジュ特別行政区と金剛山国際観光特別区(금강산국제관광특별구)クムガンサンが有ります。
新義州の工業団地造成で中国との合弁事業が共和国経済の新たな起爆剤となりそうです
追って各道及び広域市、特別市について8つに分け簡単に述べます。
<参考資料>
청아출판사 새국사사전
보진재 고등학교 사회과부도
2011年 조선 최고인민회의상임위원회 정령
련합뉴스 2020-02-13付
인천문화통신 3.0. 잡지 소년창간호