(036)原子力科学館 | 茨城県の名所(海・山・花・歴史)

  基本情報

【紹介No.】:036
【名称】:原子力科学館(げんしりょくかがくかん)
【住所】:那珂郡東海村村松225-2
【営業時間】:9:00~16:00(月曜休館)
【駐車場】:あり
【緯度経度】:36.458470714760416, 140.59646395903113

 

  2023年8月26日訪問

245号線を走って東海村に入ると、「原子力科学館」の看板が見えてくる。

最初のうちは「お、こんなところに科学館が・・・」と思っているうちに通り過ぎてしまうのでなかなか入る機会がなかったが、今回ははじめから行くつもりで向かった。

 

 

 

 

博物館などではよく見かける「霧箱」。でもこんなに大きい霧箱は初めて見た。

 

 

 

 

 

飛行場の手荷物検査であるようなX線透視装置。

 

 

核分裂による連鎖反応をドミノ倒しに見立てたゲーム。ゲームのやり方(機械の使い方)が分からずかなり悩んだ。自分だけかな?面白そうだったのに残念。

 

 

ブラックライトの紫外線を当てると発光する「ウランガラス」。微量のウラニウムが含有してある。

 

 

ちなみに、昔はカメラ用の交換レンズにも似たものがあり、トリウムを含有した「アトムレンズ」というものがある。写りが良いとのことだったが、経年で黄変するので今では使えないものが多いようだ。

 

それから「オクロの天然原子炉」のパネル展示。

人間が介在せず、天然に原子炉ができていたというのはロマンをかきたてる。

 

 

科学の遊び場のコーナー。

これを見たとき、段ボール箱を叩くと煙の輪が出るやつかと思った。けれども煙は全く無かった。「係の人がいる時じゃないと煙が出せないのかな?」と思いながら箱を叩いたら、少し離れたビニールひもが揺れた。それは見えない「空気砲」だった。

結構離れても威力が落ちずに届くので、なかなか面白い。今度、自分でも作ってみようと思う。

 

 

下の写真は、本館内部を上から見下ろしたところ。

 

 

本館の隣に別館があり、そちらはパネル展示だけでなくミニチュアや原寸の再現展示があった。

 

 

ミニチュアは細かいところまでよく出来ている。

細かいところの作り込みは、見ている者の意識をそこに引き込む効果があり、しかも俯瞰して見るので、本物を見るよりも理解が高まることも多い。

 

 

 

そして最後に、東海村の原子力燃料製造企業JCOが起こした臨界事故の原寸大現場再現模型。

 

 

事故当時、自分は都内の会社で仕事中だったけれども、ニュースで「放射能漏れが起きた」という情報が出たので、急いで自宅に電話をかけて換気扇を止めるように言ったことを覚えてる。

常磐線も止まってしまい、事故の影響の大きさにも戸惑った。

その後しばらくして続報が出て、放射性物質が漏れたわけではなく、臨界事故により中性子線が漏れたということだった。

 

臨界そのものはしばらく続き、中性子の反射剤となっていると思われる冷却水のタンクを破壊するための決死隊をJCO社内で募って事故を収束させたと聞いた。

テレビで当時の官房長官が「後でやりすぎたと言われるくらいの対策を取る」と言ってたのを見て、手に汗を握ったのを今でも覚えている。

 

事故の要因は、作業員が臨界の危険性を教育されていなかったこと、国に認可された作業標準ではない裏マニュアルを作り、しかもその裏マニュアルの安全策さえ守らず作業効率だけで作業を行ったことだった。

 

 

確か、均一な濃度の硝酸ウラニルを小分けにしたものを製造するために、まず大きな容器で濃度を調製しようとしたんじゃなかったかと記憶している。

 

私は大学時代に化学専攻だったから、均一な濃度の溶液を複数容器で調製するには、それぞれの容器で濃度を調製するよりも、いったん大きな容器で調製したのち、溶液を小分けにするほうが均一なものが作れると思った。現場の作業員もそう思っても不思議ではない。臨界の危険性を教育されていなかったので、きっと改善活動としてやってしまったのかと想像する。

 

本来の貯塔は細長い形状で臨界を起こさない形状制御をしていたそうだけれども、ここで選んでしまったのが太い形状の沈殿槽だった。これでは放射性物質を狭い範囲に集めてしまうので、臨界が起きて当然だった。

 

結果的に2人の作業員のかたが、一瞬のうちに致死量を遥かに超えた放射線を浴びることとなってしまった・・・。

 

 

このような事故は風化してはならないが、何もしなければ風化は避けられない。

そういう意味で、このようなリアリティを感じさせる展示があるのはとても良いことだと思う。

 

ただ、もう少し勇気をもってマネキンなどで注ぎ込む様子を見せるようにして欲しかった。臨界時の2人の作業員の位置関係など、テレビ映像では見たものの、やはりそのものとして見てみたかった。