チゴダラ科 イソアイナメ:写真追加 | ウッカリカサゴのブログ

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日本産魚類の仔稚魚のスケッチや標本写真、分類・同定等に関する文献情報、
趣味の沖釣り・油画などについての雑録です。


イソアイナメ (6.6mmNL)  
791112 相模湾
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イソアイナメ (19.0mmSL)  
831223 千葉県御宿

 

既往知見:日本産チゴダラ科魚類には8属17種が知られ(下表参照),その幼期形態に関する知見は,

 ・カナダダラ属のカナダダラ(岡本,2014),

 ナガチゴダラ属のナガチゴダラ(岡本,2014),

 ヒメダラ属(旧イトヒキダラ属)のヒメダラ(沖山,1988),

 カラスダラ属のカラスダラ(岡本,2014),

 イトヒキダラ属のイトヒキダラ(岡本,2014),

 ソコクロダラ属のソコクロダラ(岡本,2014),

 チゴダラ属のチゴダラ(岡本,2014)とエゾイソアイナメ(沖山,1988)

についての記載があるにすぎず,他海域産のイソアイナメ属の幼期形態に関する知見も見当たらない。

 

材 料:1983年12月23日の強風時に,千葉県御宿町の岩和田漁港内で仮死状態で表層を漂っていた1個体(体長19.0mm)をタモ網で採集した。

 

種の同定:この稚魚標本は背鰭6棘59軟条,臀鰭56軟条,胸鰭24軟条,腹鰭9軟条,尾鰭33軟条,鰓条骨数7本であった。既に鰭条数が成魚の定数に達していると考えられ,腹鰭条数が9本であることからイソアイナメ属に属する(表参照)。曰本産イソアイナメ属にはイソアイナメとホソダラの2種が知られるが,背・臂・胸・尾鰭条数の組み合わせからイソアイナメに同定できる。

 

形態的特徴:体はやや細長い。吻は短く,その先端は鈍い。頭部は比較的幅広いが,尾部は側扁する。頭長は体長の29%を占める。眼は比較的大きく,頭長の32%を占める。口は大きく,眼の後縁に達する。肛門は第2背鰭の第6軟条下に位置し,肛門前長は体長の42%を占める。臂鰭起部は背鰭第8軟条下に位置する。腹鰭の先端部は臂鰭第6軟条の基底に達し,第2条が最も長い。肛門前方に発光器は認められない。下顎先端部に1本のやや太いひげがある。黒色素胞は体全体および背・臂鰭基部・腹鰭でよく発達するが,尾部末端部では乏しく,肛門の周囲とひげは無色。

 

類似種との識別:初期稚魚については,体全体に黒色素胞が発達する,臀鰭が背鰭起部より後方から始まる,腹鰭は著しく伸長しない,腹鰭条数が9本であることにより,他属と識別できる。

 

分 布:成魚は南日本の太平洋側に分布する。

 

文 献:Fahay and Markle(1984),Kitagawa et al.(1985),沖山(1988),岡本(2014)


 

付 記:

 

魚類検索三版「分類学的付記と文献」で,中坊・甲斐 (2013) はイソアイナメについて,
『本種の分布水深は,岡村・尼岡編 (1997;総合文献) では,深海とされているが,Paulin (1983) では20 m 以浅の浅海域である。若狭湾から得られた標本 (FAKU 131591-131592) も定置網で得られており,水深はせいぜい数十メートルである。分布水深については再確認の必要性がある。』
と記載している。