オラファー・エリアソン ときに川は橋となる | 帰ってきた神保町日記      ~Return to the Kingdom of Books~

オラファー・エリアソン ときに川は橋となる

 先週末の土曜日、東京都現代美術館で開催中の「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」を観てきました。
 オラファー・エリアソンは1967年生まれのアイスランド系デンマーク人のアーティストです。
 以下、ウェブサイトからプロフィールの抜粋です。
 
 光や水、霧などの自然現象を新しい知覚体験として屋内外に再現する作品を数多く手がけ、世界的に高く評価されている。テート・モダン(ロンドン)で発表した《ウェザー・プロジェクト》(2003年)やニューヨークのイースト川に人工の滝を出現させたパブリックアート・プロジェクト(2008年)等、大規模なインスタレーションで広く知られている。近年は、電力にアクセスできない地域に住む人びとに届けられる携帯式のソーラーライト「リトルサン」(エンジニアのフレデリック・オッテセンと共同開発)や、グリーンランドから溶け落ちた巨大な氷を街なかに展示することで人びとに気候変動を体感させる「アイス・ウォッチ」(地質学者のミニック・ロージングとの共同プロジェクト)といった社会的課題をめぐる取り組みにも力を注いでいる。
 
 プロフィールからもわかるように、環境問題に深い関心を持ったアーティストで、今回の展示にもそういったテーマが強く反映されています。
 個展のタイトルである「ときに川は橋となる」についてエリアソンは「まだ明確になっていないことや目に見えないものが、たしかに見えるようになるという物事の見方の根本的なシフトを意味しています。地球環境の急激かつ不可逆的な変化に直面している私たちは、今すぐ、生きるためのシステムをデザインし直し、未来を再設計しなくてはなりません。そのためには、あらゆるものに対する私たちの眼差しを根本的に再考する必要があります。私たちはこれまでずっと、過去に基づいて現在を構築してきました。私たちは今、未来が求めるものにしたがって現在を形づくらなければなりません。伝統的な進歩史観を考え直すためのきっかけになること、それがこうした視点のシフトの可能性なのです。
 
 とまあ、難しい話はともかく、アートは観て、感じてなんぼ。
 展示物は撮影可能だったので、印象的な展示をいくつか紹介します。
 まず目を引くのは《太陽の中心への探査》と名付けられた作品。いわゆるインスタ映えする美しい造形です。
 
 
 続いて《あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること》と名付けられた2020年の作品。自分の影がパステルカラーの何色ものライトで壁面に映し出されます。

 

 
 中でもいちばん面白かったのは、今回の展示のために作られた、個展のタイトルにもなっている《ときに川は橋となる》。巨大な筒状の暗幕の中の中心に、水を張った丸い水槽があります。その水面の揺らめきが、暗幕の内側に投射され、不思議な模様を描きます。
 

 


 

 

 どれも幻想的で美しく、見とれてしまいます。

 これらの展示に共通しているのは、どれも定まった形をしているわけではなく、観る人によって常に変わっていくということです。つまり極めて個人的な体験を基にしたアートということです。

 日々の個人的な体験の中に奇跡のような美しいものがあり、ひいてはそれが環境と人間とのつながりを考えるきっかけになる、そんなメッセージがこれらの作品に込められているように感じました。

 9月まで開催されているので、時間があればまた観に行ってみたいと思います。