活動的な馬鹿より恐ろしいものは無い



18世紀から19世紀にかけて活躍したドイツの詩人であり小説家である、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテが残した名言です。

馬鹿かどうかはさておき、「ラーメン大好き小泉さん」において、最もアクティブに活動し、かつ最も恐ろしい結果をもたらすのは、かの悪辣な小泉さんストーカー・大澤悠であると言っても過言では無いでしょう。

そして、そんな大澤悠に投げかけられる小泉さんの視線は冷ややかであり、その言葉は時として辛辣極まりないものとなります。

(「馬鹿ですね」)

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ラーメン大好き小泉さん


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小泉さんに懸想して止まない大澤悠が、その想いの大きさ故に暴走して恐るべし結果をもたらし、そして小泉さんから冷遇されるその有様は、小泉さんの一風変わったキャラクター、「人類よりも麺類」というスタンスを際立たせる印象的な場面であり、最早、本作品の一種の様式美と言ってもいいのではないでしょうか。

また、大澤悠が浮かべる悲しみや落胆の表情、絶望に打ちひしがれた様子は、読む者の哀れみの涙を誘って止みません。

言い過ぎですねごめんなさい。

大澤悠ファンの皆さんごめんなさい。

私だってホントは大澤悠のこと凄く好きなんです。大澤悠が小泉さんに酷く扱われるその時、私の心に去来する想いの大半は哀れみでありますが、ごくごく若干とは言えども愛ゆえの同情、そして悲しみもあるのかもしれません。誤差の範疇なのかもしれませんが。


さて、何故に大澤悠がかくも冷遇されるか?についてですが、小泉さんと大澤悠とでは対人関係のスタンスが全く異なること、そして、大澤悠の一方的なコミュニケーションの癖が大きな要因なのではないか?と考えます。

てな訳で、大澤悠が小泉さんから冷遇される事例について紹介するとともに、何でこんなことになっとゃうんだろ?ってことについて考察してみたいと思います。

 

1 十九杯目での冷遇事例

今回は、2巻第10話・十九杯目での冷遇事例について取り上げさせて頂きます。


喫茶店で寛ぐ高橋潤と中村美沙。そんな二人に、大阪に行っているはずの大澤悠から助けを求める電話がかかってくる。何でも大澤悠は、兄・大澤修と一緒に大阪から新幹線で東京に帰る途中、名古屋駅にて小泉さんらしき人影を認め、勢いで新幹線から降りてしまったらしい。しかも手ぶらで。ドン引きする高橋潤。

(助けを求める電話)

悠バカすぎ!そんなん絶対人違いだって!」と言う中村美沙に大澤悠は応える。

「小泉さんはいたよ。小泉さんを間違えるはずがない」。

その声色は真面目そのものであり、中村美沙はドン引きした。

[考察]

普段から仲良く接していて、大澤悠の言動には慣れっこなはずの高橋潤や中村美沙をしてもドン引きさせてしまう大澤悠の異様な行動が描かれたシーンです。小泉さんらしき人影を認めるや否や、後先を考えず、財布も持たず、そして兄の大澤修に何も言わずに新幹線を降りてしまう大澤悠。完全にヤバい人です。

そして、「小泉さんはいたよ。小泉さんを間違えるはずがない」という大澤悠の発言、そしてその時の表情は、そのヤバさをより際立たせていると言えるでしょう。

(ドン引きな行動、ドン引きな発言、ヤバい目付き)

大澤悠、ヤバいです。

 

途方に暮れつつも駅近くのラーメン屋さんに入り、そして、唯一持っていた500円でラーメンを頼む大澤悠。いざラーメンを食べようとしたところ、付いていた「不思議先割れスプーン」の使い方が分からず困惑する。そんな大澤悠の耳にアドバイスが聞こえる。「別に好きなように食べればいいと思います。」

そう、大澤悠の隣には、何故か小泉さんが座っていたのだった。

(再会)

小泉さんと一緒に美味しくラーメンを平らげる大澤悠。

ラーメンを食べ終え、店の外に出た小泉さんは言う。「〆(シメ)の一杯いけそうですね」そして、どこかに向かおうとする小泉さんを、大澤悠は「待って!!」と叫びながら追いかける。そんな大澤悠に小泉さんは言う。

「別に貴方はついて来なくていいです。」

(来たぞ冷遇!)

[考察]

小泉さんの何とも矛盾した言動が描かれたシーンです。

自分から大澤悠の隣に座り、ラーメンフォークに使い方について解説し、一緒にラーメンを平らげ、そしてあと一杯ラーメンを食べると大澤悠に宣言するかと思えば、彼女が着いてくることを冷たく拒否する。

もうですね、何がしたいのか訳が分かりません。

そして、狼狽えながらも付いて行く大澤悠、まさに様式美です。

(ラーメンフォーク&ラーメン)

 


「〆(シメ)の一杯」を一緒に堪能し、そして駅へと戻った小泉さんと大澤悠。「ラーメンとチケット代、後でお返ししますんで」としょげ返った様子で言う大澤悠に対し、小泉さんはこう言葉を投げかける。

「ばかですね。いきあたりばったりで途中下車なんて。」

「まったく貴方は何を考えているのやら」

(「バカですね」)

大澤悠は答える。

「ラーメンに夢中な小泉さんに夢中だからだよ」

(告白?!)

そして、口籠もりながら、もうちょっと仲良くできたらなどと大澤悠は口にし、また、帰りの新幹線で一緒に座ろうと提案する。

そんな大澤悠のスマホにメールが着信した。

そのメールは小泉さんからのものだった。メールには只一言だけ。

「嫌です。」

それを見た大澤悠は驚喜するのであった。

「小泉さんからの初メール!!? ついに私たち、メル友に」

(拒絶と驚喜)

[考察]

大澤悠、いい感じで告白っぽいことを言います。頬を赤らめ、背景もキラキラ的な感じで良さげな雰囲気です。けれども、小泉さんの心が揺らぐことは一切無く、一緒に座ろうとの誘いもむべなく断られます。

いい感じで語りかけ、そしてザクッと断られる。

まさに、あの「一杯目」のラストをリフレインしている感じの情景です。

(一杯目のラストシーン)

普通の人ならば、気分はもう地獄なシーンなのでしょう。

しかしながら、ここは流石な我らが大澤悠!

ついに私たちメル友に」と、小泉さんからメールが届いたことに驚喜しています。さすがは家訓が『めげない 引かない あきらめない』だけあって、何事もポジティブに捉えてしまいます。

まさに、ポジティブ倒錯モンスターです。

恐るべし大澤悠!

(台湾らーめん)

 

2 まとめた感想

このエピソードで印象的なのは、何と言っても小泉さんが大澤悠に対して述べた「ばかですね」という台詞ではないでしょうか。

大澤悠、彼女は小泉さんの言う通り「馬鹿」なのかもしれません。

しかしながら、その「馬鹿」は、何かを大好きになってしまったが故の「馬鹿」であり、何かに一生懸命になってしまったが故の視野狭窄がもたらすものとも言えるのでしょう。

何かに無我夢中になり、そして衝動的に行動してしまう。

対象こそ異なれ、それは小泉さんも一緒なのでしょう。

(気が付いたら名古屋にいた小泉さん)

このブログとてそうです。

何かを大好きになり、何かに心囚われ、そして、その思いの丈を綴り続ける。

その有様は、傍から見れば滑稽でもあるのでしょう。

「馬鹿」に見えるものでもあるのでしょう。

 

何かを真剣に好きになったなら、もう走り続けるしかないのかもしれません。

傍から見たら、それが歪であっても、変であっても、「馬鹿」であっても。