SWにおける「」の代名詞がダース・ベイダーであることは誰もが異論を差挾む余地はないでしょう。

そして、伝説の小泉さんストーカーである大澤悠が、この作品随一の「」であることについても異論の余地は無いのでしょう。

(決して見つめ合わない二人)

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ラーメン大好き小泉さん


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大澤悠が熱烈かつ執拗に小泉さんにアプローチし、冷たくあしらわれる様は、小泉さんの一風変わったキャラクター、「人類よりも麺類」というスタンスを際立たせる印象的な場面であり、そして、本作品の一種の様式美と言ってもいいのではないでしょうか。また、大澤悠が浮かべる悲しみや落胆の表情、絶望に打ちひしがれた様子は、非常に胸踊るものがあります。執拗かつ悪辣なストーカー行為の報いでもあり、ある種のカタルシスを覚える方もおられるのではないでしょうか。

言い過ぎですねごめんなさい。

大澤悠ファンの皆さんごめんなさい。

私だってホントは大澤悠のこと凄く好きなんです。しかしながら、軽くディすらないと逆に失礼な気がするもので。好きでもなければ大澤悠シリーズなんて書かないですよ。

私的には超VIP待遇のつもりなんです。


そもそも作者的にも「小泉さん」の主人公は実質的に大澤悠って認識ですし!



さて、何故に大澤悠がかくも冷遇されるか?についてですが、小泉さんと大澤悠とでは対人関係のスタンスが全く異なること、そして、大澤悠の一方的なコミュニケーションの癖が大きな要因なのではないか?と考えます。

てな訳で、大澤悠が小泉さんから冷遇される事例について紹介するとともに、何でこんなことになっとゃうんだろ?ってことについて考察してみたいと思います。



三杯目での冷遇事例

今回取り上げるのは1巻第3話、三杯目での天下一品における冷遇事例について紹介します。


放課後、都内某所のラーメン屋さんにて小泉さんは「こってり+唐揚げ定食」を注文する。着丼したラーメンを美味しそうに食べる小泉さん。そして、小泉さんの悪辣なストーカー・大澤悠は、脳内実況しながらそんな小泉さんをうっとりと見つめる。

(幸せそうな小泉さん、見つめる大澤悠)

[考察]

ネットリとした脳内実況をし、そして小泉さんに熱視線を送る大澤悠の有様が描かれています。「一杯目」において、ラーメンを幸せそうに食べる小泉さんに心囚われてしまったのでしょう。もう、大澤悠は引き返すことはできないのでしょう。

(心囚われた刹那(一杯目))


小泉さんは幸せそうな表情から一転、無表情モードとなり、大澤悠に「あの、見ないでもらえますか?」と言う。大澤悠は「しまった、つい見とれて脳内実況が途中抜けてたよ」と訳の分からない事を言う。

そして、小泉さんは「大体どうしてアナタがここに?あなたと一緒に来た覚えはないのですが?」と問いただす。

大澤悠は光のない目となり、「えー、いまさらー?」と述べた後、以下のように答える。

(光のない目)

①校門で小泉さんを見かけ、「一緒に帰ろう」と声をかけるも無視(スルー)される。

②仕方ないから軽い感じで尾行する。

③電車を乗り継いでラーメンを食べに行く小泉さんを最後まで尾行する。


それを聞き、小泉さんは「ストーカー行為はやめてください」と真面目な口調で言う。

大澤悠はニコーと笑いながら、「ラーメン美味しいね」と言い、小泉さんは「……」となる。

(まさにストーカー行為)

[考察]

読む者が大澤悠の異常性を確信するであろう記念すべきシーンとも言えましょう。

小泉さんの関わらないでオーラに動ずることなく、電車を乗り継いでまでストーカーし、挙句は小泉さんの正面に陣取り、小泉さんがラーメンを食べる姿を逐一見つめ、そして脳内実況なるものをしている訳です。空気の読めないサイコ野郎だと誰しもがドン引きするシーンであろうと思います。小泉さんにストーカー行為を止めるよう言われてもはぐらかすところが、かねてからの常習犯であることを伺わせます。何故、大澤悠はこのような行動を取ることができるのでしょうか?にんげんなのに?ストーカーが人の後を追尾する理由などをググって調べようとしてみるのですが、あまりいい感じに説明してくれてるのがありません。私も幸いにストーカーしたことないんで実体験としては分かりません。なもんで適当に考えます。理由としては大きく3つあるのかなと考えます。

恋愛?対象に対し正常なコミュニケーションが取れない

大澤悠の行動は、正直ブッ壊れたものだと思います。相手の意図を全く顧みない行動です。しかしながら、常日頃からこういった行動をしている訳ではないのでしょう。高橋潤や中村美沙と普通の友達付き合いをしているのですから、普段の行動は双方向的なコミュニケーションに基づいており、一方的な思い込みによるものではないのかと思われます。それに対し、大澤悠的には、小泉さんに対しては恋愛に近い感情を抱いているのかと思われます。そういったモードに入ったら通常の双方向のコミュニケーションが取れなくなってしまうのでしょう。ですので、相手のリアクションをフィードバックして行動するということができません。基本的に自分の思い込みだけで行動します。

恋愛?中、自己の行動を客観視できない

正直、恋愛モードに入ったら、誰しも自己の行動を客観視することは普段と比べて困難になるとは思います。恋愛中の言動を後になって振り返り、赤面してしまうことは誰しも経験があることかと思います。しかしながら、大澤悠はその傾向が過剰なのでしょう。完全に箍が外れているとしか思えません。拒否的な態度を示されているのにずっとストーカーをするなど自己の行動を客観視できないとしか思えません。

恋愛?対象への感情投影の度が過ぎている

恋愛中、相手に自分の事を好いて欲しいと思うのは当然でしょうし、自分がこれだけ相手のことを好いているのだから相手も自分を好いているだろうと考えるのもごく自然の心理なのでしょう。こんなことを、自己の感情を相手に「投影」する、などといった言い方をします(逆に、自分が相手に敵意を持っているから、相手も自分に敵意を抱いていると思ってしまい、過剰に身構えてしまうとかいうのも「投影」の一種です)。大澤悠はその傾向が過剰であるのでしょう。自分が相手のことを好きでエスカレートした行動を取っても、相手も自分に好意を抱いていると潜在的にせよ顕在的にせよ思ってしまうので、自分の行動が許容される、と思ってしまうのではないでしょうか。


そして、小泉さんも正直訳が分かりません。何故このタイミングで大澤悠のストーカーを非難するのでしょうか?少なくとも大澤悠が前に座った時点でストーカー行為を追及しても良さそうなものですが。ツッコミどころ満載です。

おそらくですが、ラーメンへの衝動の前では大澤悠のストーカーなど取るに足らないものだったのではないでしょうか。とにかく早くラーメンにありつくこと、それが小泉さんの最優先事項であり、大澤悠をあしらうことはラーメンにありつき一息ついてからでいい、あるいは大澤悠など眼中にない的な状況だったのではないでしょうか。ストーカー行為は決して心地よくはないのでしょうけれども、ラーメンへの熱意の前では大澤悠への鬱陶しさは二の次なのでしょう。げに恐ろしきラーメンサイコパスです。


大澤悠は小泉さんからのストーカー行為の追及をはぐらかすかのようにラーメンのスープのことを話題にする。スープのドロっとした感じをカルボナーラに例え、そして、あろうことか「白いスープだから『豚骨ラーメン』かな?」などと口走ってしまう。

小泉さんは気色ばみ、そして「乳白色のスープが全て豚骨スープだと思っていませんか?」と大澤悠の認識を質す。小泉さんの懸念通り、大澤悠の認識は…

・白く濁っている→豚骨

・透明→塩

・茶色く濁っている→味噌

・茶色く透明→醤油

程度のものだった。

そんな大澤悠に小泉さんは言い放つ。

そんな認識で良く今まで生きてこれましたね、驚きです。

大澤悠はエェーッ的な感じで「いや、特に困ったことはなかったし。フツーそんなもんだって」と答える。

(大澤悠(16歳)、放課後の天一で人生を否定される)

[考察]

大澤悠、16歳。彼女なりに嬉しいこと、楽しいことのあった人生だったのでしょう。友達や家族との関わりも彼女なりに充実していたのでしょう。しかし、そんな大澤悠の人生は、小泉さんによって否定されました。放課後のラーメン屋、高円寺の天一で。「白濁スープ=豚骨」と口走ったばかりに。

大澤悠の人生や存在意義の全否定はどうでもいいとして、「そんな認識でよく今まで生きてこれましたね、驚きです。」という小泉さんの台詞、シビれます。作中でも屈指の名台詞と言えるのではないでしょうか。人生の中で一度は使ってみたいですね。多分、ケンカになりますけど。

しかし、ラーメンのスープの認識が甘いばかりに人生を否定とは、げに恐るべしラーメンサイコパスです。ぶっちゃけ私だって小泉さん読むまでは「天一のスープって豚骨?でもなんか違うよね~。だけど旨いから、まいっか!」的なノリだったので、ここだけは大澤悠に同意せざるを得ません。しかしながら、もし小泉さんが全知全能のラーメン神となり、人類の生殺を司るようなったら、大澤悠や私なぞ、小泉さんの指の一鳴らしで泡沫(うたかた)の如くこの世から消え去るに違いありません。ラーメンより人類という小泉さんのスタンスが現れているキレのある名台詞です。


小泉さんはラーメンのスープの解説を始める。「出汁」と「タレ」はラーメンのスープの基本要素であること、そして、それぞれの配合や香味油等により、スープの分類が複雑化していることを大澤悠に教える。

(小泉さんのラーメンスープ講座)

[考察]

大澤悠のラーメンに対する知識の無さに小泉さんがイラッとしてついつい解説を始め、そしていつしか熱の入った語りになるというパターンです。人生を否定されつつも小泉さんの語りを引き出すという、大澤悠の本作品の狂言回しとしての面目躍如なシーンです。しかし、小泉さんの語りを引き出すパターンも大澤悠や高橋潤とでは異なるところもまた興味深い部分です。


天一のスープはコラーゲンが豊富だと小泉さんから聞いた大澤悠は血相を変え、お肌がツルツルになる!とスープを飲み干そうとするも、時間を経てしまっていたため、麺がスープを吸収しブヨブヨになってしまっていた。

ムダ話をふっかけたことを小泉さんに謝る大澤悠。しかし、全ては小泉さんの計画通りだった。「この時を待っていました」、「麺にスープが完全に浸透したところで、一気に掻き込む!」と言い、ブヨブヨ麺を一気に食べる。

(必殺技みたいな)

呆気に取られる大澤悠。そして小泉さんは上気した表情で「個人的にはこの食し方がベスト」と述べ、また、卵を潰して入れたらカルボラーメンだとか週一で食べたくなる中毒性などとブツブツと述べる。大澤悠は「そんなに!?マジか!?」と内心で若干引く。

(恍惚の小泉さん、引き気味の大澤悠)

[考察]

ついさっきまではクールに淡々とラーメンのスープについて語っていた小泉さんですか、急に必殺技みたいな感じでラーメンを食べ始め、そして恍惚モードに突入しました。態度の急変に流石の大澤悠もなんか引き気味です。

空気の読めない大澤悠に対し、徹底的にマイペースな小泉さん、ってことなのでしょう。


まとめの考察

本エピソードは、大澤悠のストーカー気質や小泉さんに対する歪んだ愛情、また、小泉さんのとことんマイペースな姿勢とホンッットにラーメンにしか興味のない態度など、2人の人間関係に係るエッセンスが濃密に詰め込まれているものと言えましょう。

また、大澤悠と小泉さんとの珍妙不可思議な、全く噛み合わない会話の果てに小泉さんのラーメン語りが始まるという本作品の極めて重要な展開のスタイルも示されています。

そして、2人の人間関係が維持される要因の一つとして、小泉さんがラーメンにしか興味がない故に大澤悠のストーカー行為もさほど気にはしていない、という要素もまた垣間見ることができます(そもそも人間関係が成り立ってる?と言われれば疑問ではありますが…)。

果たして…大澤悠の想いが報われる日は来るのでしょうか?きっとないのでしょうね…(^人^)