八九式重擲弾筒 | MOWEL BOX

八九式重擲弾筒


八九式

全長 610ミリ

重量 4・72キロ

口径 50ミリ

弾数 1発

生産国 大日本帝国


大日本帝国陸軍の歩兵小隊に配備されていた擲弾筒(グレネードランチャー)で、口径が小さい代わりに手動で角度を変更、水平射撃も可能な為柔軟な運用が可能である。

使用方法は、砲身下部の制退機(アフソーバー)を地面に突き立て、下部棹桿(グリップ)を逆手で保持。目分量で目測をし、砲身下部の撃発桿(トリガー)を引くと弾薬に撃針が接触、点火して発射される。

八九式は45度仰角で無翼擲弾を650メートル、九一式有翼擲弾に至っては800メートルと世界でも類を見ない射程を持つ軽迫撃砲なのに加え、弾等も半径10メートルの殺傷能力を持つので米兵には特に忌み嫌われた。

しかし、当の日本軍では本体重量もさる事ながら弾薬までもが重く、おまけに目分量で熟練を要する事から命中精度が低い上に一撃必殺と言う程までには強力ではなかったこと、また故障も多く管内破裂などの事故も年に数件という単位で起こしたことに加えて、「(幾ら安全ピンがついてるとは言え)重たい爆弾を抱えて戦場を歩き回る」という事もあって、これを扱う兵科は嫌われた模様である。

しかし米軍側は、熟練した擲弾兵に何度も遮蔽物越しや水平発射で擲弾を打ち込まれて散々悩まされた事からこの兵器を高く評価、第二次大戦以降にM79 グレネードランチャー 等を採用、ベトナム戦争でも多く使用したという説が日本では広く喧伝されているが全く根拠はない。 M79の登場時期は第二次世界大戦が終わったはるかに後であり、発射原理も重擲弾筒と異なりドイツの高/低圧理論応用により反動を抑え肩撃ちできるもので、アメリカが影響を受けたというのは無理がある。また兵器としても一方は曲射弾道の小型迫撃砲、一方は直接照準の擲弾銃(小銃擲弾の代替)であり全くカテゴリーの違う兵器である。また重擲弾筒に相当する小型迫撃砲は日本固有のものではなく各国で以前使用されていた事から考えても無理がある。おそらくは「擲弾(グレネード)」といういくぶん曖昧な用語のせいで日本でのみ広がった伝説だと思われる。

 余談ながら八九式の制退機は湾曲した台座が太股にぴったり合ったことから、八九式をニー・モータ(膝撃ち迫撃砲)と呼び、一部はその湾曲した台座をひざの上に乗せて発射するものと勘違いした。実際捕獲した兵士は太股に宛がって発射したために、反動で大腿骨を骨折する者が多発、上層部から『日本軍の鹵獲兵器の使用、試し撃ちは厳禁!』と通達されたという。