人生の師、伊東順二さん その1 | 日本ワイン血風録!

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人生の師と呼べる人がいる人って幸せですよね。ぼくにも何人かそういう人がいます。


その一人が、伊東順二さん。


伊東順二

あまり名前をご存じの方もいらっしゃらないかもしれませんが、ぼくが尊敬する美術評論家で、現在、富山大学の教授。かつては、「たけしの誰でもピカソ」をプロデュースされたり、日本で一番早い時期に、ニューペインティング以降のアーティストを紹介する展覧会を次々にキュレートしたりと、現代美術の啓蒙に貢献した人。

最近でも、NHKの世界中継「世界遺産 フランス縦断の旅」のリポーターを担当したり、「英語でしゃべらナイト」のゲストに出演したり・・・と、メディアにもちょくちょく登場されているので、ご存じの方もいらっしゃるかも?


そういえば、ぼくが今、かけている眼鏡、伊東さんの奥様、女優の小川知子さんのセレクトなんですよ(笑)。奥様もとても素敵な方です。


ぼくは、学生時代、それこそ、伊東さんの著作「現在美術」や「アート・ランナー9.79」を教科書代わりに読ませていただいてました(それこそ、80年代以降のアートをわかりやすく紹介する本なんて、他に皆無でしたから)。・・・・そして、今の仕事についた後、縁あって一緒にお仕事をすることになり、以来、親しくさせていただいています(学生時代の憧れの人と、そんな関係になれるなんて、本当に幸せものだと思います)。





師といっても、何か直接手ほどきを受けたとか・・・そういうことは一切ないですね。


むしろ、一緒にご飯を食べに行ったり、お酒を飲んだり、遊びにいったりするだけ。何か教えてくれるにしても、「みっちー、あれ、見とくといいよ」といわれるだけで、そのことについての解説は、一切ありません。だけど、伊東さんから「あれ、見とくといいよ」といわれるものは、全て何か心に響くものがありました。いつもいいものに触れさせていただいた、と感謝しています。


伊東さんが、フランスで師と仰いだのが、高名な美術評論家ピエール・レスタニイですが、彼から最初に学んだのは、シガーの吸い方であり、バーでのお酒の飲み方であり、女性とのつきあい方だったといいます。美術について直接細かく指導されたことはないそうです。でも、そうやっておつきあいしていくうちに、師の精神性というものが自然とわかっていくものだと、語っていました。


確かにそうだよなあ、と思います。たぶん、ぼくが学んだのも、知識というよりも、生き方のスタイル、ものの感じ方、いいものの選び方、仕事へ取り組む厳しい姿勢・・・そんなものを、さりげない瞬間に見せてくれて、それがスポンジが水を吸い込むように、いつの間にか、吸収していた・・・そんな感じですね。


伊東さんからは今も、「みっちーとは、あの頃は、1年の2/3くらいは一緒に飯くっていたねえ」と、よく懐かしそうに語ってくれます。その1年とは、長崎県美術館の館長を引き受けられ、いろんな逆風を受けながら、歯を食いしばって開館にこぎつけた、伊東さんにとっても一番苦しい時期だったそうです。


そんな苦しい時期に、ともに悩み、さまざまなアイデアを出し、直接関係者じゃないけど、さまざまなご協力ができたことは、ぼくにとっても誇りだなあ。伊東さんは、任期を終えて館長を退任しましたが、長崎に大きな遺産を残されたと思います。今年の夏、そのDNAを受け継いだイベントが、伊東さんのプロデュースで富山で行われたというお話も聞き、我がことのように喜びました。


さて、ぼくも、師に恥じないような仕事をしなければ!