J.C.バッハ

76年録音。J.C.バッハの「6つの序曲集」(愛好家に捧げるシンフォニア)です。ホグウッド指揮のエンシェント室内管弦楽団。オワゾリールのC,P.E.バッハ、ジェミニアーニ、シュターミッツ、アーンといった作曲家を採り上げたシリーズの一環です。解説では、ヨハン・クリスティアン・バッハの音楽一家の例外的な特質を二点指摘しています。「すなわち、カトリック教徒に改宗したということと、オペラ作曲家として腕をふるったということである。この2点はそのまま彼のイタリア的背景を象徴しているといっても良かろう」。ナポリ楽派、A.スカルラッティ、ペルゴレージといったオペラセリアの時代から、モーツァルトに直接つながる接点。音楽を巡る都市の関連では、ドイツ音楽は統一前の時代。世界ではまずパリ、次いでロンドン、そして、ナポリがきます。ダ・カーポ方式のアリアで紡ぐオペラ・セリア。イタリアはヴェネツィアで発祥したオペラは、劇性をとどめ当初の朗唱風の歌が紡いできました。ここで、歌付き芝居、ルネサンスに隆盛をほこったポリフォニーの音楽は劇の進行には不向きで、モノディ様式が生み出されます。歌詞を聴き取り易いものとし、伴奏と分離する。この時点で、すでに今日にも演奏されるものと成り得ていますが、神話や伝説の主人公を扱うオペラ・セリアはモーツァルトの時代には題材的には古びたものと変化していました。オペラは作品を意味するopusの複数系主格にすぎません。歌つき芝居から、歌の比重が増す、今日的な歌劇に近いものと成って行くのはアリアの成立、歌がオペラの中心となり、レチタティーヴォで間の劇的進行を進めるという方式が主流となった。それが18世紀のナポリで隆盛をほこったのです。世界を席巻し、モーツァルトが楽旅を重ねて、各地に就職先を求めた折りにも、まず示さなければならなかったのはイタリア方式のオペラを書けることでした。イタリアに学んだヘンデルが、ロンドンで活躍した。それも、その様式に工夫を盛り込むことができたからです。そして、ロンドンに渡り、バッハ一族では例外的に、改宗と、オペラの創作にも携わったのがヨハン・クリスティアン。大バッハ11番目の息子にして末子。そして、先述のように、ロンドンは大都市であり、それがコスモポリタンであると同時に、世俗的な成功をも得ることとなりました。そのかわり、一族からは異端と看做されていたらしい。イギリスのホグウッドには大部の著作『ヘンデル』があり、大都市ロンドンをめぐる音楽家たち。すでに、演奏においても、独自の集積があります。
 音楽が残ったのはロンドンにわたったからだけではありません。それはバッハ一族、大バッハの息子たちがひとしく体験したのは、バロックから次の世代への移行であり、そこには、革命前の啓蒙君主の時代。モーツァルトにギャラントを見るように、その壮麗なものはJ.C.バッハの音楽にも体現されています。シンフォニアそのものは60曲ほどがあり、当盤はその10分の1ほどの量6曲を収めています。曲集の最初の出版の原題は「6つの大序曲 Six grand Overtures」で、シンフォニアが歌劇の序曲からの独立性とともに、その出自をオペラの序曲にもっています。機能的なオーケストラと音量の増大といった音楽上の事情もありました。シューバルトの評「彼のシンフォニアは偉大かつ華麗であり、このジャンルの書法に完璧に適している」。それは人を喜ばす娯楽作品でもあり、実質上の交響曲の先駆。モーツァルトにつながるものを見出し、時に、それと見間違うほどのものとなっています。

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JC Bach Symphonies Concertantes C 46,C 38,C 35,Halstead

J.C. Bach - W B16 - Sonata for keyboard & violin or flute Op 18 No. 1 in C major
Performers: Nicholas McGegan, flute; Christopher Hogwood, piano.