「柳生一族の陰謀」の公家「烏丸少将」には実在のモデルがいた? | えいいちのはなしANNEX

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深作欣二監督のヤクザ映画で常にインテリやくざを演じていた成田三樹夫が、亡くなったときの新聞記事に「代表作は『柳生一族の陰謀』の公家・烏丸少将」と書かれていたのでびっくりしました。あの役はホントに印象的でしたね。なよっとした公家が刀を持つとめっちゃ強い。彼が主人公でもいいくらいの強烈なキャラです。大好きですね。

舞うような、空を飛ぶような剣さばきが、鳥っぽくて、優雅なようで実は邪悪な魔物、ってキャラが「カラス・マ」という響きにぴったりだ、ってんで付けられた名前でしょうから、完全に架空の人物です。


と思ったら、この烏丸少将の「モデル」とされる人物がいるんですって。

権大納言・烏丸光広、歌人にして能書家、当代一流の文化人。吉川英治の「宮本武蔵」にも侠気の人物として登場してるんですって。そのへんから「剣豪公家」のイメージに合ったんでしょう。
烏丸光広は、少将に任じられたこともないし、文麿という字(あざな)でもありません。ただ、同時代の公家でいちばんの有名人だったので、「この人がモデル」というリップサービスをしたんじゃないかなと。「歴史マニア向けサービス」ってやつでしょう。一流文化人の烏丸という公家が、実は闇の世界では剣の達人だったりしたら面白いじゃん、という。


あの当時の東映時代劇って、時代考証はきわめていい加減というか、有名人の名前はどんどん使ってしまえ、というところがありましたからね。有名な「十三人の刺客」に出てくる暴君は実在のモデルがいますが、名前をおもいきり間違えている(実在の養父の名前と取り違えている)くらいで。かなり、いい加減ですけど、まあ娯楽大作ですから。
そういえば「柳生一族の陰謀」って、ラストに「とんでもない事態」が起こって、萬屋錦之助が「このようなことがあるはずがない、これは夢じゃ、夢じゃ、夢でござる~」って叫んだあと、「歴史は常に勝者によって書き換えられ、真実は闇に葬られる」的なナレーションがありますよね。つまり、この映画全体が大法螺なんだけど、実は真実があるかもよ、って言ってるわけで。一流文化人として天寿を全うしたとされる烏丸光広が、裏の顔では剣豪の討幕主義者だった、なんてことだってあるかもよ、ってことですね。
ないだろうけど(笑)。