京都市下京区に茶道のお家元である藪内家があります。
その中に、藪内流の象徴とも言うべき茶室「燕庵」(えんなん)があります。
燕庵の特徴は、
茅葺き入母屋造りの屋根をもつひなびた外観と
内部は三帖台目と一帖の相伴席からなり、
初代藪内剣仲が古田織部より譲り受けたとされている茶室です。
その茶室のなかの設えは千家流のものとは少し異なった雰囲気を持ち、
例えば、床畳が高麗縁、床框が漆の真塗りで
また小間の茶室にしては窓が多く、明るく開放的で、
草案風で侘びた景色の中にも武家の格式のようなものを感じます。
そして、点前座と客座の天井も段差がなく、
マコモ天井が連続して張られています。
これは、客も亭主も本来対等であるという武士の精神のようなものを感じます。
そして、この燕庵の外観の独創的で面白いところは、
なんといっても躙り口の前にある
茅葺き屋根の桁を受けている真ん中で曲りのある柱だと思います。
この柱の樹種はサルスベリ(リョーブ)だということですが、
この曲り具合、この寸法となると、
なかなかぴったりのものが見つかりません。
燕庵の材料の注文があると、いつもこの中曲りで苦労させられます。
この度も、燕庵の写しを造られるという仕事があり、
このサルスベリの中曲りを苦労しながら数本用意してみましたが、
さて、すんなりOKをいただけるか、今から心配しています。