絵柄が強烈に何かを主張していて、

どうしても気になって、

引き付けられてしまうマンガ家というのがたまにいるが、

福満しげゆきはまさにそうだった。

 

最初は「モーニングでエッセイマンガを書いている人」

として認識していただけなので、

特に興味もなく、作品も読まなかったのだが、

どうしても絵柄の強烈なインパクトだけは頭から離れず、

ラーメン屋でラーメンを待っている間につい読んでしまった。

 

といっても、麺を「カタ」で注文していたので、

ラーメンはすぐ来てしまい、

2ページくらいしか読めなかったのだが、

その2ページを読んだだけで、

主人公の内向的で被害妄想的な思考に、

すっかりはまってしまった。

 

色々な作品を読んでわかったのだが、

やはり福満しげゆきは「ガロ」出身のマンガ家で、

デビュー作の「娘味」は、

恋人と二人で母親を殺して食べるという、

70年代の「ガロ」によくあったような、

「なんとかコンプレックス」の反映のような、

自虐的な若者が、

ただそのパッションをぶちまけただけのような、

暗く、陰鬱な内容のマンガであった。

 

福満しげゆきのメジャーな作品は

モーニングの「僕の小規模な生活」と

アクションの「うちの妻ってどうでしょう」なのだが、

どちらも、おそらく作者本人がモデルと思われる、

内向的で被害妄想的な東京出身のマンガ家が、

編集者の言葉を勝手に悪く受け止めて

腹を立てたりビクビクしたり、

マイナス思考を循環させながら生活していて、

そんなマンガ家の「夫」を、

九州出身の、大らかで感情の起伏の激しい「妻」が、

元気づけたり罵倒したりしながら支えていく、

というような内容である。

 

この「妻」は九州のどこの出身なのだろうか?

言葉の感じから、福岡ではなさそうなのだが、

とにかく、東京出身の自閉症のひきこもりのような夫を、

強烈なパワーで奮い立たせ、引っ張っていく、

都会の人間には理解できないワイルドな存在として、

「巨人の星」の左門豊作や、

「アタックNo.1」の垣之内良子などと同じようなジャンルの

キャラクター設定になっている。

 

この「妻」の存在によって、

マンガに「明るさ」や「未来への希望」があるため、

メジャー誌に掲載できる作品になっているのである。

あの「娘味」の作者が、よくここまで社会復帰できたなと、

他人事ながらとても嬉しい気持ちになる。

 

しかし、まだまだ関東以北の人にとっての「九州」という土地は、

得体の知れない「異文化」の香りがする場所として

認識されているようである。