日本のモンキーレンチ-3
JIS 1952年
1951年の5社に引き続き、翌年1952年に同時認証を受けた5社(⑥~⑩)です。
1.JIS全20社リスト
(モンキー16社+パイプレンチだけ4社)
認証No.毎リスト(別番号で認証取り直しの場合は、取り直しの新番号も掲載)
※B4606/パイプレンチも含む。
2.1952年のJIS認証5社
⑥ No.1447:日鍛工機 ⇒ スーパーツール
⑦ No.1448:安中工具 ⇒ 廃業
⑧ No.1449:中日本重工業 ⇒ 三菱重工業 ⇒ 事業撤退
⑨ No.1450(?):松坂鉄工所
⑩ No.1451(?):大同工機 ⇒ サンダー工業 ⇒ 廃業
⑥ 日鍛工機 ⇒ スーパーツール
1)商品
⑥-1 桜なし"SUPER"
・初期のJIS認証モデル。
・日鍛工機のJIS認証番号"1447"が表示されています。
・1953年2月製と推測(桜なしロゴと"3-B1"より)
・一般的な生産年月の製造記号…西暦末尾+A~L(1月~12月)
・最後の"1"は鍛造型等の管理番号。
⑥-2 桜"SUPER"
・ロゴが、桜マークの付いた◇"SUPER"マークに変わります。
・桜マークがまだ中抜きされていませんので、第2世代の"SUPER"ロゴ。
・1968年4月製と推測。(桜付きロゴと"8-D"より)
⑥-3 中抜き桜"SUPER"
・ロゴが、現在も使われている中抜き桜マーク付きの◇"SUPER"(第3世代)に変わります。
・1979年11月生産と推測。(中抜き桜、JIS返上以前で"9K"より)
⑥-4 中抜き桜"SUPER" OEM by 相伍工業
・裏面の"374091”より相伍工業製と分かります。
・OEM生産委託なので、JIS認証を返上した1985年以降の生産。
・2000年頃までに多くの工具メーカーが、JIS規則の束縛(クレセント型しか作れない)から離脱していきますが、日鍛工機は判断が早かったようです。
・そうは言いながら、クレセント型の市場ニーズは継続しているので、しばらくは外部委託品を販売したのだろうと思います。
⑥-5 マツダ向けOEM-1
・デザイン化されたMAZDAのマークが入っています。
・どこかで見たことがあると思ったら、昔々の3輪車にあったようです。
(広告の右下にあるエンブレム)
・裏面の◇"SUPER"ロゴならびにJIS認証番号"1447"より日鍛工機製と分かります。
※JISは、製造者記号またはJIS番号から必ず製造元が分かる素晴らしい制度です。
・JIS-N/普通級。(全型打鍛造ながら、普通の鋼材を使用)
・1957年3月製と推定。(桜なしロゴと"57-3"より)
・生産年度推定が正しければ、1960年に4輪乗用車が登場する前の時代で、3輪車が主流だった頃。
↑広告の右下ロゴ拡大
⑥-6 マツダ向けOEM-2
・東洋工業が1978年まで使用していたシンボルマーク(社章)よりマツダ向けと分かります。(ディーラー整備工場向けの工具?)
・◇"SUPER"の表示はありませんが、"1447"これも日鍛工機製と分かります。
・JIS規則に基づく"P"表示 ⇒ 部分鍛造製(下あごだけ鍛造で、本体は鋳鉄)
・1963or1973年11月製と推定。(シンボルマークと"3-K4"より)
・JISモンキーには23度と15度、それぞれにJIS-H/強力級、N/普通級、P/部分鍛造の3種類があり、全部で6種類(2x3)になります。
・実はJIS認証資料を見てもどの種類で認証を取得しているのか判然としません。
・その中で、日鍛工器は23度でJIS-H, N, Pの3種類を取得していると1967年度まとめに記されていて、その通りであることが実物で確認できました。(⑥-5~7)
⑥-7 BTC/バンザイ向けOEM
・BTC/バンザイ工業向けOEM。(裏面の"1447"より日鍛工機製)
・使用鋼材(ニッケルクロームバナジューム)が表示されていて、JIS-H/強化級。
・自社製品ではJIS-HながらAlloy(鋼材)としか表示していないのに。
・19x2年7月製("2-J1"より)
★ 他のモデル
(1) JISマーク無し
1948年の広告に文字だけながら"モンキレンチ"が登場しますので、少なくとも1948年にはJIS無しモンキーレンチがあったことになります。
(2) "ギヤーN"
スパナを見る限りでは◇SUPERロゴの前に”ギヤーN"ロゴがありましたので、モンキーレンチにも極初期に"ギヤーN"ロゴがあった可能性があります。
2)JIS認証
★1952年5月13日…B4604/モンキーレンチの認証取得 @堺/高須工場
同時に5社がレンチ(B4604/モンキーレンチとB4606/パイプレンチ)で認証を取得していますが、認証時の資料には認証日と認証種類(B4604、B4606いずれ、両方?)は載っていないため、その後の資料から推察が必要になります。
★1957年に工場を同じ堺市の高須町から南清水町に移転しているのですが、JIS認証情報としては工場移転の記録は見つかっていません。
★1965年工場変更(南清水工場⇒見野山工場)
※"B4603"になっていますが、誤植であり、正しくは"B4604"です。
★1989年5月18日…認証返上
3)商標/ロゴ
基本3種類のロゴ(ギヤーN、◇スーパー、◇桜スーパー)に対し、色々なパターンで商標登録されています。
↑1949年、1974年、1986年
↑1974年、1960年、1962年
モンキーレンチ用と思われるこんなロゴも1962年に商標登録されていますが、使用されているのは見たことがありません。
4)広告
↑1948年『大阪府推奨優良工産品名鑑』
↑1962年、1963年『産経会社年鑑』
5)会社情報
1918年/大正7年…創業
・所在地は大阪/堺市の北旅籠町。
・会社名の情報無し。
・個人企業としてペンチやニッパ類の工具を製造。
1942年9月…日鍛工機(株)設立
・開戦(1941年11月)の翌年、大阪府商工部の斡旋による企業合同として日鍛工器を設立。(どのような企業が合同したかの情報は無し)
・工場を北旅籠町から隣の高須町(本社工場)と北清水町(第二工場)に移転。
- - - - - 終戦
1952年…モンキーレンチでJIS認証を取得(B4604-1447)
1954年…早廻しコンビレンチを"スーパーヘッド"ブランドとして発売
1957年…工場を隣の南清水町に再移転(2つの工場を統合)
1960年…メガネでJIS認証を取得(B4632-7254)
1962年…スパナでJIS認証を取得(B4630-8976)
1965年…工販分離
・販売部門が(株)スーパーツールとして日鍛工器から独立
・同時に日鍛工器の本社工場を現在の堺市見野山に移転。
1980年…工販再び合併
・販売会社の社名であった(株)スーパーツールを合併会社の社名に採用。
※スパナやコンビレンチなどの全体解説は当ブログの別ページにて ⇒ こちら
⑦ 安中工具
あまり知られていない会社だと思いますが、自社製のモンキーで考察しています。
また、"安中"の漢字ロゴ入りが日産とプリンス向けOEMで確認できています。
1)商品
下の⑦-1"THUNDER"は、安中工機製だと考えています。
一覧表の⑩にサンダー工業が出てきますので、"THUNDER"モンキーレンチはサンダー工業⑩と考えるのが素直です。
しかしながら、
(1) サンダー工業はパイプレンチでしかJISを取得していない、
(2) サンダー工業は、サンダー印の商標を登録しているが、モンキーレンチのサンダーデザインとは異なる。(サンダー工業の商標は⑩に掲載)
(3) "THUNDER"モンキーレンチには製造者記号が無いことから、JIS取得会社の自社製となる。
(4) 安中工業が、文字だけながら"THUNDER"の商標を登録している。
上記4点の事実より、"THUNDER"モンキーレンチは、サンダー工業製では無く、安中工機製と考えるのが妥当だと思います。
⑦-1 自社製"THUNDER"
・サンダー印、JIS-P/部分鍛造で、安中工機の自社製モンキーレンチと理解しています。
・裏面に"PARTIAL FORGED"(部分鍛造)と正直に表示されています。
・裏面の右端に2文字の刻印が入っていて、製造者記号かと思いましたが、一文字目は数字の"8"ですので、製造者記号では無いことが分かります。
・と言うことは、モンキーレンチでJISを取得している16社のいずれかが自社製として作ったものであることになり、"THUNDER"で商標を登録している安中工業製という結論になります。
⑦-2 日産自動車向けOEM
・日産自動車向けのJIS-P/部分鍛造モンキーレンチです。
・裏面左側に漢字の"安中"ロゴより安中工具製と分かります。
・さらに、同じく裏面のJISマーク右側の"Y"は安中(やすなか)の"Y"だろうと推測します。
⑦-3 丸K印 日産自動車向けOEM
・同一形状の日産向けながら、安中工具では無く二重丸K印(JIS無し)が見つかっています。
・同一形状であることから安中工具製と思います。
。何らかの理由で、安中工具が生産し、二重丸K印ブランドの運営会社経由で日産自動車に供給されたのだろうと推測します。
⑦-4 プリンス自動車向けOEM
・同じく安中製のプリンス自動車向け。
・こちらもJIS-P/部分鍛造です。
・裏面に日産と同じ"安中"ロゴが表示されています。
⑦-5 Queen-Bee向けOEM
・"Queen-Bee"というブランドのモンキーレンチで、裏面のNo.1448より安中工機製と分かります。
・裏面の"KHM TOOL Co., LTD."が"Queen-Bee"のブランド管理会社だと思いますが、会社名とブランド名の両方共に詳細が確認できていません。
・JIS-P/部分鍛造です。
2)JIS認証
★1952年5月13日…B4604/モンキーレンチの認証取得 @大阪/四条工場
B4604/モンキーレンチで、5社同時取。
★1984年3月5日…認証返上
1984年にJIS認証を返上していますので、事業撤退または廃業。
3)商標
会社情報を見ると自社製のモンキーレンチに2つのブランド(地球印とBUD印)があることになっていますが、見つかっていません。
その地球印の方は、商標登録されているのを見つけました。
BUT印の商標は見つけ出せていませんが、『しかし』という意味の"BUT"がブランド名になっているのは頷けません。
商標を是非とも見つけ出して、何故"BUT"なのか確認したいと思っています。
まさか"BAT"(こうもり/バットマン)と間違えている??
↑両方とも1952年
↑1963年/THUNDERの商標登録
・地球印とは出願人が異なりますが、住所は1番地だけの差である同一敷地または隣であり、この"THUNDER"も安中工業の出願と理解しています。
4)広告
見つかっていません。
5)会社情報
下に添付している1952年と1956年の会社紹介と、さらにJIS登録データーだけが手に入る会社情報です。
大阪の枚岡市/"ひらおか"(現在の東大阪市)に会社があり、社長が商標登録を申請している安中幸二郎さんなので、会社名が安中工具。
"やすなか"と"あんなか"のどちらでしょうか?
1984年にJIS認証を返上していますので、この時に事業撤退または廃業したのだろうと推測しています。(以降の会社情報が無いので廃業?)
↑1956年『大阪商工名鑑』
↓1952年『機械と工具年鑑』
⑧ 中日本重工業 ⇒ 新三菱重工業
戦後の三菱財閥解体により、三菱重工業が3分割され、その内の名古屋地域会社が中日本重工業です。
ゼロ戦等を作っていた名古屋の航空機事業所が、工場再建のために行った事業のひとつが工具で、1951年にパイプレンチでJIS認証を取得しています。
パイプレンチ自体は戦前から生産していて、終戦直後から生産を再開した形です。
1)商品
⑧-1 三菱重工業向けOEM by まこと刃物製作所
・中日本重工業(後に三菱重工業に社名復帰)は、パイプレンチでのJIS取得ですので、モンキーレンチは外部委託のOEMになります。
・外箱にNo.466055の表示があり、岐阜/関の"まこと刃物製作所"が製造元と分かります。
・モンキーレンチ本体にはJIS認証番号は刻印されていませんが、外箱に表示のマーク("M"と逆さ"M"合わせ)が本体に刻印されていて、このマークが製造者記号となります。
※本来であれば、JIS認証会社の"まこと刃物製作所"⑱で取り扱うべきですが、三菱重工業がパイプレンチでJIS認証を取得していることに敬意を表して、本項に載せます。
⑧-2 三菱重工業向けOEM JIS無し by まこと刃物製作所
・三菱のJIS無しモデルです。
・⑧-1と比較すると形状はほぼ同じですので、同じく"まこと刃物製作所"製と思います。
・JISマークがありませんので、製造者記号を入れる必要がないため、これだけを見てもどこ製だか全く分からず、トレーサビリティーを重視したJISは素晴らしい規則です。
・⑧-1は裏面に"DROP FOGED"と刻印されていてJIS-Hでしたので、全鍛造とわかりますが、この⑧-2は裏面の"DROP FOGED"が消えていますので、部分鍛造なのかもしれません。(鍛造型とは別にわざわざ鋳造型を追加で作るとは思えませんが)
・⑧-1と⑧-2の裏面同士の比較です。
・上あご部の写真上側と下あご形状が若干異なりますが、それ以外は全く同一形状ですので、共に"まこと刃物製作所"製と断言して良いでしょう。
2)JIS認証
★1952年5月13日…B4604/モンキーレンチの認証取得 @名古屋/大幸工場
B4604/モンキーレンチで、5社同時取得。
★1985年6月15日…認証返上
1985年にJIS認証を返上し、事業撤退。
3)商標
・明治初期に創業した歴史ある会社ですので、1909年/明治42年の商標登録です。
・それでも登録は36,273番目です。(1884年からの登録開始)
4)広告
広告は見つかっていません。
三菱重工業が工具を販売していたことに驚きますが、普通に金物店で取り扱っていたとのこと。
5)会社情報
名古屋の航空機発動機工場の軍需から民需への転換として工具生産を開始。
JIS認証の返上は1985年ですので、終戦直後から40年間は工具事業を続けていたことになります。
⑨ 松阪鉄工所
1)商品
⑨-1 MCC-1
・松阪鉄工所が再取得した認証番号であるNo.3064が刻印されています。
・"P"刻印より、JIS-P/部分鍛造と分かります。
・表面の"MCC"はブランド表示、裏面の"MCC TOOL MFG. CO."は会社名表示になります。
⑨-2 MCC-2(JIS無し)
・⑨-1と同じ形状ですが、JISマークがありません。
・一方で、表面の"MCC"と裏面の"MCC TOOL MFG. CO."は同一です。
・したがい、1952年にJIS認証を取得する前のモデルと思います。
⑨-3 楕円MCC by トップ工業
・ロゴが楕円MCCに変わっています。
・トップ工業に製造委託していることが、表面のNo.656より分かります。
・また、製造者記号として"TK"(トップ工業)が刻印されていますので、中島精密鍛造からトップ工業に社名変更した1963年以降の生産と分かります。
・もし、No.656の刻印が無く、"TK"だけだった場合、"TK"が製造者記号なのか、単に松阪鉄工所の製造記号なのか、松阪鉄工所自身がJISマーク使用権があるため、判断に迷うことになります。
⑨-4 太文字MCC by トップ工業
・ロゴが現在の太文字MCCに変わっています。
・上の⑨-3と同じくトップ工業が製造元です。(No.656と"TK"より)
・トップ工業に生産委託していることから松阪鉄工所はJIS返上したのかと思いましたが、旧JISが終焉する2007年まで認証登録を継続しています。
⑨-5 エコモンキレンチワイド / 現行モデル JIS無し
・JISのデザイン縛りから解放され、軽くて掴み幅が広くなった現行モデル。
・JISモデルでは無くなったため、製造工場/会社の特定が出来なくなりました。
↓現行商品3種(2023年2月/会社HPより)
2)JIS認証
★1952年5月13日…B4606/パイプレンチの認証取得 @三重/垣鼻工場
B4606/パイプレンチで、5社同時取得。
★1954年6月頃(同年10月『JIS』掲載)…B4606/パイプレンチの工場変更 @南工場(三重県松阪市の中で移転)
★1964年12月16日…B4604/モンキーレンチ追加と工場変更(⇒@三重/津工場)
最初はB4606/パイプレンチで認証を取得していましたが、B4604/モンキーレンチも追加取得し、同時に工場も移転。
★2008年12月…JIS法規改正に伴い旧JIS認証権が自動消滅(JQAへの切り替えは行わず)
3)商標
※MCCの由来…松阪鋳鋼所(Matsuzaka Cast Steel & Co)より
4)広告
↑戦前1939年『工場仕入案内』パイプレンチ
↑1960年『帝国銀行会社要録』、1961年『機工取引便覧』
・モンキーレンチ登場(JIS認証取得前)
5)会社情報
・1915年/大正5年…安西鋳造所を創業
・1926年…松阪鋳鋼所(Matsuzaka Cast Steel & Co)に改称
・1928年頃…パイプレンチ等の製造を開始
- - - - - 終戦
・1952年…松阪鉄工所を設立、同年パイプレンチでJIS認証取得
・1964年…モンキーレンチのJIS認証取得
※現在の松阪鉄工所ホームページ ⇒ こちら
↑戦前1937年『新日本大観』
↑1959年『機械工業名鑑』
↑1957年『日本経済新報』
↑1957年『通商産業研究』
⑩ 大同工機 ⇒ サンダー工業/新サンダー工業
↑戦前のパイプレンチ
・広告イラストの拡大画像ですので鮮明ではありませんが、凹パネル内に”THUNDER MFG. CO."と刻印されているように見えます。
1)商品
JIS認証はパイプレンチで取得しています。
イナズマ印/THUNDERの名前で戦前からパイプレンチだけでなくモンキーレンチも販売していた様です。(1939年の会社資料より)
戦前の広告が唯一の商品形状に関する情報源で、戦後の商品情報は確認できていません。
2) JIS認証
★1952年5月13日…大同工機としてB4606/パイプレンチの認証取得 @大阪/大開工場
B4606/パイプレンチで、5社同時取得。
認証日と認証番号を示す情報がありませんが、同時取得会社の登録情報から考えて、
認証日は1952年5月13日、認証番号は松阪製作所の次なのでNo.1951と推測します。
★1953年11月16日…サンダー工業として別の認証番号(No.2722)で取り直し
住所が1番地しか違わないことから同じ工場で取り直したのだろうと思いますが、単に会社名変更では無く、認証をわざわざ取り直して別番号になった理由が良く分かりません。(登録事項に重要な変更があり、会社名変更だけには出来なかった??)
↑1954年3月『JIS』 by 日本規格協会
3) 商標
1950年に商標出願し、1954年になってから登録が認められています。(普通は1年未満で承認されますが、4年掛かった理由は?)
戦前の広告に既にTHUNDER/サンダーという言葉が出てきますが、イナズマ印ロゴは登場していませんので、イナズマ印ロゴは戦後になってから使われたのだろうと推測します。
戦後のTHUNDERパイプレンチを見つけ、商標登録されたロゴが使われているか確認したいところです。
前述の安中工具⑦で説明の通り、サンダー工業だけでなく、安中工具もTHUNDERの商標を工具類(19番)で登録しています。
ほぼ同時期の登録になっていますが、出願はサンダー工業が先で、登録(公告)は後から出願した安中工具が先になっています。
同じ工具業界で同時期に同じ商標を登録するのも変な話です。
住所は異なりますが、同じ大阪なので、ひょっとして関連会社なのかなとも考えてしまいます。
真相は不明ですが、THUNDER商標に関する両者の関係性についてご存じの方がいらっしゃいましたら、当ページのコメント欄で教えて頂きたく。
4) 広告
戦前の広告だけ見つかっています。
既にサンダー印/THUNDERが使われています。(日本語では”雷名轟”)
パイプレンチとスパナのイラストが載っています。
後述する会社資料にはモンキーレンチとパイプレンチの両方に言及されていますので、広告には載っていませんが、モンキーレンチは戦前からあったのだろうと推測します。
↑1939年『躍進工業大鑑』
5) 会社情報
販売:伊藤商店、製造:大同機械工具製作所として戦前からモンキーレンチを製造販売していました。
戦後に大同工機(株)となり、1952年5月にJIS認証を取得。
給与遅配などの会社運営上のトラブルがあったとの記録もあり、その関係からかJIS認証取得した半年後の1952年11月にサンダー工業(株)に社名変更しています。
同じ月に新サンダー工業(株)という会社を同一住所、同一電話番号(別社長)で設立しています。
2社が同時に設立された理由が製造機能上の分割なのか登記上のテクニックなのかは不明です。
なお、1955年のJISまとめリストには"サンダー工業"、1958年リストには"新サンダー工業"になっています。
1967年のJIS認証まとめには含まれていませんので、1967年よりも以前に廃業(倒産?)したのだろうと思います。
商標の競合や同じような社名の会社が2つなど正体不明な会社です。
↑1939年『躍進工業大鑑』
↑1954年7月『国勢総覧』
↑↓1958年『工作機械と工具年鑑』
この回、終わり
日本のモンキーレンチ/全13編には、こちらから