フェスタサマーミューザ 梅田俊明 日本フィル 村治佳織 松岡裕雅 | ベイのコンサート日記

ベイのコンサート日記

音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

(8月8日・ミューザ川崎シンフォニーホール)
弦楽合奏で演奏されるレスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲」での梅田俊明&日本フィルは品のある響きを維持した。ヴィオラは、昨日のシティ・フィルを思い出すやわらかで温かみのある音だった。

ギターに村治佳織、オーボエ・ダモーレに日本フィルのオーボエ副首席松岡裕雅をソリストに迎えた武満徹「虹へ向かって、パルマ」は、ギターとオーボエ・ダモーレが旋律を交わす中、虹を思わせる色彩感ある響きがホールに広がっていく。
 

ギター協奏曲の中で最も規模が大きく、ソロとのバランスをとるのは難しいとプレトークで梅田が語っていたが、3管編成の木管、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、ハープ2台、チェレスタのほか多数の打楽器という巨大なオーケストラとPAを使うギター、オーボエ・ダモーレがとても良いバランスで聞こえた。
コンサートマスターはアシスタント・コンサートマスターの千葉清加。

 

アンコールに村治佳織が、武満徹晩年の作品「森の中で」の第1曲<ウェインスコット・ポンド―コーネリア・フォスの絵画から―>を弾いた。森の中の静かな池の光景が浮かび思い出を語るような音楽だが、コーネリア・フォスは武満が親しかった作曲家、指揮者ルーカス・フォスの奥さんでもあり、かつてピアニストのグレン・グールドとの間に秘めた恋があったという。
映画でも紹介されていた。

https://www.uplink.co.jp/gould/introduction.php

 

後半は、ベートーヴェンの「交響曲第1番」、第4楽章が生き生きとしてとても良かったが、この調子で第1楽章からやってほしかった。
梅田の指揮は、久しぶりに聴いたが、派手なパフォーマンスや、尖った解釈とは反りが合わない堅実な指揮者だと思う。
わたしが大好きなピエール・モントゥーや、その弟子のサー・ネヴィル・マリナーのような指揮者になれるのではという気がする。
あのような大指揮者が持つ音楽の生命力と輝かしさ、光沢のある響きを身につければ、さらに魅力的な指揮者になれるのではと期待したい。

 

アンコールは、先日の高関健と群響とおなじ、ベートーヴェン「バレエ音楽《プロメテウスの創造物》第1幕序曲」。バッティングは主催者も予想できなかった模様で、ミューザならではのハプニングだが、聴く方は比較がとても面白い。
群響のインパクトのある切れのいい響きに対して、日本フィルは響きが柔らかく、奥行きがある。バレエ音楽としては梅田&日本フィルのほうが合っているかもしれない。

 

フェスタサマーミューザも明日の東京交響楽団フィナーレコンサートを残すのみ
梅田がプレトークで語ったように第2の緊急事態宣言がいつ出てもおかしくない中、これだけの規模(全17公演)の音楽祭を、公演と映像配信で開催・実現した関係者と出演者のみなさんの努力に感謝したい。