ヴィクトリア・ムローヴァ with ジュネーヴ・カメラータ、デイヴィッド・グレイルザマー(指揮) | ベイのコンサート日記

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ヴィクトリア・ムローヴァ with ジュネーヴ・カメラータ、デイヴィッド・グレイルザマー(指揮)(610日、武蔵野市民文化会館大ホール)

 日本で1回だけの公演。メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」のムローヴァの音は、一本筋が通っていてたくましい。楽器はストラディヴァリウス「ジュールズ・フォーク」を使用した。艶やかで美しい音ではあるが、情感たっぷりということはなく、どこか近寄りがたい威厳がある。男性的と言ってもいい。師レオニード・コーガンの音楽性が受け継がれているのではないか、という推測も可能だろう。

 デイヴィッド・グレイルザマー(指揮)ジュネーヴ・カメラータは6型くらいの小編成。ムローヴァが主役のメンデルスゾーンだった。

 ムローヴァのアンコールは、アバドとの間に生まれた息子のミッシャ・ムローヴァ・アバドが作曲した「ブラジル」。サン・パウロの朝を思わせるような静謐な音楽だった。

 

 後半は、ジュネーヴ・カメラータの首席チェリスト、イラ・ボギルがソロを弾く、ジョナサン・ケレン「ガーシュイン《ポーギーとベス》の主題による変奏曲」(日本初演)。ケレンはイスラエル出身のヴァイオリニスト、作曲家で40代前半。7分の作品だが「サマー・タイム」など聴きなじんだメロディーをあえてはずしており、つかみどころが正直なかった。

 最後はベートーヴェン「交響曲第8番」。小編成の室内オーケストラなのでやむを得ないとは言え、弦の迫力は少ない。アインザッツもぴったり合わないところもあり、指揮者の責任も大きいだろう。木管はうまく、特にクラリネット奏者が目立っていた。

他にアイヴズ「答えのない質問」も演奏された。