観た、『裏窓』 | Joon's blog

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『裏窓』を観ました。

 

足を骨折し、暇を持て余すジェフリーズは、吹き抜けを囲むように四方に建っているアパートの住人の生活を裏窓から眺めるのが日課になっていた。

ジェフリーズはその中の一室に住む夫婦が気になる。ベッドから出られない妻とセールスマンの夫は、どうやら上手く行っていないようで、夫の不可解な行動や、その後ベッドから妻が消えた事から、ジェフリーは殺人事件ではないかと推測する。

恋人のリザや家政婦のステラは一笑に付していたが、次々に重なる事実からジェフリーの考えが単なる空想ではないと思い始め……といったお話。

 

監督はアルフレッド・ヒッチコックさん。

アパートの一室から一歩も出ずに起承転結を済ませてしまう、いわゆる密室劇と呼ばれる作風があります。ヒッチコックさんの作品で例を挙げれば『ロープ』ですね。

そこから一歩進んで、あくまでカメラは部屋から出ないまま、部屋の外を映す事で場面転換(に近い手段)とするアイデアはさすがですね。舞台劇なら当たり前の事でしょうが、これが映画の場合となると、場面転換が少ない=代わり映えしない画面の連続で飽きてしまいがちですから。

 

ジェフリーズ=ジェフの住むアパート、と言うよりはビルですね。それぞれ4~5階建てで、吹き抜けを4面で囲むように建っているので、自室の窓から他の3辺の部屋の様子が窺えるというわけです。

夏という時季もあって、もちろんクーラーなんてない時代の話ですから、みんな窓全開で過ごさざるを得ないって事で部屋の中が丸見えなんですよね。暑いくらいなら多少のプライバシーを犠牲にするような(笑)。

あのアパート群が全てセット、しかもジェフの部屋の側も作ってあったのは軽く驚きです。

 

ヒロインのリズを演じるのはグレース・ケリーさん。カメラに寄って来るファーストカットから、掴みはオッケー!です。

この頃の、今ではクラシックビューティーと呼ばれる主演女優って、綺麗なのは分かるけど大したアクションはしないじゃないですか? せいぜいミュージカル作品で踊ったり、小走りするくらいで。

けど、本作におけるグレースさんは綺麗なだけでなく、アクションに近い事をやるのが意外です。梯子を上るわ、フェンスを跨ぐわ、人ん家に闖入しちゃうわと、ずいぶんアクティブなのが魅力です。衣装も可愛いです。

 

元はカメラマンとして世界各地を飛び回っていたジェフと、金持ちのお嬢で綺麗な身なりをしているリザ。

リザはジェフに入れ込んでいて一両日中にでも結婚したいくらいですが、ジェフは結婚には踏み切れない。

ジェフはカメラマンとして、被写体のある所なら世界中の過酷な環境に行かねばならない。けど、小綺麗な恰好ばかりしているようなリザが、危険だったり汚かったりするような場所に付いて来れるか?と問います。

それでも付いて行けると言い張るリザに、いやいや無理でしょと決めつけるジェフでしたが、リザの危険な冒険を見て考えも変わった事でしょう。

特に語られる事はありませんが、ラストカットを見れば一目瞭然です。

 

ジェフに殺人犯と思われる、向かいの部屋に住む男ソーワルト。

この人こそ本作の悪人キャラに思われますが、実は本作の真の悪人は主人公のジェフです。

他人の部屋を覗いているだけでなく、ソーワルトの挙動を邪推した妄想により、無実のソーワルトをどうにか悪人に仕立て上げようとしているのですから。

割と手間暇をかけた警察の調査結果を聞いていながら、それでもソーワルトが悪人であると断定しちゃうんだから、これは立派に名誉棄損です(笑)。

…と言いたいところですが、ラストではこれを覆すと思しきひと言がサラッと出てきます。では、ジェフの憶測は本当は当たっているのでは…?

まぁ、そんな犯人当ての根拠や推測を語り合う余地を残してあるのも、本作の面白さの一つです。ヒッチさん、さすが!

 

夫婦が飼っていた犬が殺され、妻が近所付き合いの何たるかを訴えるシーンは、正直あまり響くものがありませんでしたが、本作の小さなメッセージの一つなんでしょう。俺ッチも含め、現代ではあまりピンと来ない人が多そうですが…。

まぁ、犬は密かに殺されたと思われるので誰も知る由はありませんが、クライマックスのジェフの危急には多くの住人が駆け付けるあたり、そこまで薄情な人間の集まりではない事が実証されたのはほっこりします。

 

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Blu-ray版は映像特典満載。

字幕化が難しい、アパートの住人の小さな台詞も聞ける(知れる)ので、こういう点は吹替版の強みですね。