柳生一族の陰謀 萬屋錦之介主演 三船敏郎助演 深作欣二監督作品 | 俺の命はウルトラ・アイ

柳生一族の陰謀 萬屋錦之介主演 三船敏郎助演 深作欣二監督作品

『柳生一族の陰謀』

 

映画 トーキー 130分 カラー

昭和五十三年(1978年)一月二十一日封切

製作国 日本

製作言語 日本語

製作会社 東映株式会社

     東映太秦映画村

 

企画 高岩淡

   三村敬三

   日下部五朗

   松平乗道

 

脚本 野上龍雄

   松田寛夫

   深作欣二

 

撮影 中島徹

照明 北口満三郎

録音 溝口正義

編集 市田勇

音楽 津島利章

美術 井川徳道

監督補 土橋亨

記録 田中美佐江

装置 稲田源兵衛

装飾 栄田澄臣

背景 平松敬一郎

スチール 都筑輝孝

宣伝担当 佐々木嗣郎

     田中憲吾

衣裳 轟護

美粧結髪 東和美粧

演技事務 森村英次

擬斗 上野隆三

和榮 中本敏生

進行主任 俵坂孝宏

協力 東映俳優センター

協力 ソニーチバエンタープライズ

舞踊振付 藤間勘五郎

     河上五郎

 

出演

 

萬屋錦之介(柳生但馬守宗矩)

 

千葉真一(柳生十兵衛三厳)

 

松方弘樹(徳川家光)

 

西郷輝彦(徳川忠長)

 

大原麗子(出雲の阿国)

 

原田芳雄(名護屋山三郎)

 

 

志穂美悦子(柳生茜)

工藤堅太郎(柳生又十郎宗冬)

矢吹二朗(柳生左門友矩)

 

 

室田日出男(根来左源太)

真田広之(ハヤテ)

浅野真弓(マン)

中谷一郎(天野刑部)

 

 

梅津栄(三条実条)

大塚剛(ヒラクチ)

曽根晴美(髭)

岩尾正隆(蓬髪)

小林稔侍(片禿)

林彰太郎(朝倉筑後守)

汐路章(久能重吉)

 

 

田中浩(渡辺半蔵)

成瀬正(浪人B)

唐沢民賢(浪人A)

西田良(忠長一行の伝令)

野口貴史(マガリ)

高月忠(エンコ)

原田君事(土居の家臣)

鈴木康弘(鳥居成次)

白川浩二郎(浪人C)

片桐竜次(シオタレ)

畑中猛重

吉澤高明

那須伸太朗

毛利清二

勝野賢三(勘三郎の付人)

五十嵐義弘

阿波児大輔(侍)

高並功(忠長の近習)

木谷邦臣(土井の家臣A)

藤沢徹夫(土井の家臣B)

白井滋郎(土井の家臣C)

司裕介

志茂山高也

笹木俊志(木村助九郎)

寺内文夫

友金敏雄

林三郎

大野栄次

 

 

 

丹波哲郎(小笠原玄信斎)

 

 

 

高橋悦史(松平信綱)

夏八木勲(別木庄左衛門)

 

 

池田譲治

小峰一男

小坂和之

細川純一

西山清孝

大矢敬典

峰蘭太郎

鳥巣哲生

矢部義章

松本泰郎

福本清三(フチカリ)

 

藤長照夫

奈辺悟

壬生新太郎

波多野博

森源太郎

山田良樹

疋田泰盛

浪花五郎

藤川弘

中村時之介(徳大寺右大将)

田口直也(徳川秀忠)

宍戸大全(村田与三)

ジャパンアクションクラブ

 

 

岡島艶子

大江光

和歌林三津江

紅かおる

桂登志子

林三恵

楠三千代

丸平峯子

三谷真理子

富永佳代子

星野美恵子

 

 

中村富十郎(猿若勘三郎)

中村米吉(猿若雪之丞)

 

角川春樹(安藤重長)

水野晴郎

佐藤純彌(小室喜兵衛)

鈴木瑞穂(ナレーター)

 

成田三樹夫(烏丸少将文麿)

中原早苗(春日局)

金子信雄(九条道房)

 

芦田伸介(土井利勝)

 

 

山田五十鈴(崇源院於江与)

 

三船敏郎(徳川義直)

 

 

監督 深作欣二

PICT003 

小川錦一=初代中村錦之助=小川矜一郎

      →初代萬屋錦之介

 

前田禎穂=千葉真一

    =JJ Sony Chiba

    =Sonny Chiba

    =和千永倫道

 

矢吹二朗=千葉治郎

 

下澤広之=下沢広之 

    =真田広之

    =Duke(Henry) Sanada

           =玉川大輔

 

成瀬正=成瀬正孝

 

夏八木勲=夏木勲

 

渡邊一=四代目坂東鶴之助→六代目市村竹之丞

   →五代目中村富十郎

 

小川進一=四代目中村米吉

    →五代目中村歌六

 

深作欣二=ふかさくきんじ

昭和五十三年(1978年)封切当時京都市

映画館で鑑賞。大宮東映であったと思う。

 

平成十五年(2003年)四月十五日

千日会館にて鑑賞。

 

令和四年(2022年)七月十七日発表記事

を再編している。

 元和九年(1623年)五月十一日二代征夷

大将軍徳川秀忠が死去した。死因は食あたり

で毒見役小室喜兵衛が自刃した。

 

 三代将軍の位は長幼の順で長男家光が継ぐ

のが正統と思われていた。だが実母崇源院は

顔に痣がある家光を疎み、美男の次男忠長を

溺愛していた。

 

 

 

 後水尾天皇の皇后和子も忠長の将軍継嗣を

望む。

 

 家光・忠長の叔父義直・土井利勝・酒井雅

楽頭・安藤対馬守らは忠長擁立に熱意を燃や

す。

 

 老中松平信綱や家光の乳母春日局は家光を

正統な継承者として立てようとする。

 

 京の公卿三条実条・九条道房・烏丸少将ら

も覇権争いに熱意を示す。

 

 土井利勝は秀忠死因に疑問を抱き胃袋を

遺体から取り出してくるようにと配下の者

に命じる。

 将軍家剣法指南役柳生但馬守宗矩は次男

左門・三男又十郎・長女茜らを派遣し秀忠

の胃袋を切断させ奪う。

 

 

 信綱は将軍家剣法指南役柳生但馬守宗矩

を呼ぶ。

 

 宗矩は家光に将軍職に就いて頂く為に敢え

て秀忠公を毒殺したと語る。家光は驚愕する。

 

 

   家光「将軍職とは何だ?」

 

 


    但馬「武門の棟梁、いや、

       日本の棟梁のことに

       ござります。」

                             
   家光「それだけか」

 

 

   但馬「その職につける者は、何千万

     のうち、生まれながらに選ばれ

     た者ただ一名。

    若君がそのお方でございます。

    さればこそ、仏に会えば、仏を殺し

    祖師に会えば祖師を殺す、謂わば、

    善悪を超えた不退転の決意が肝要、

    それがお持ちになれぬとのお心なら

    もはや何も申しませぬ。速やかに

    御成敗願わしゅう存じまする」

 

 家光は但馬・信綱・春日局の熱意に打たれ

三代将軍の座に就く意志を固める。

 

 宗矩は長男十兵衛に命じて根来忍者衆を忠長

の領地駿府城下に潜らせて情勢を分析させる。

 

 忠長は利勝から秀忠死因への疑念を聞かされ

将軍継嗣ににより天下の安定を図る事を意識す

る。

 美しい踊り子阿国と愛し合う忠長は戦乱に

身を投じねばならないことを決める。阿国を

慕う名護屋山三郎は嫉妬を抑え彼女の想いが

叶う事のみを望む。

 

 利勝は老中職を辞し、家光は信綱を老中、宗

矩を大目付の位に就け対抗する。

 

 春日局と信綱は御所を尋ね家光への将軍宣下

を待つが望みは叶わない。

 

 利勝は小笠原玄信斎を呼び、忠長に合わせ

柳生一党の討滅の剣士として召し抱えた事を

述べ、忠長様将軍継嗣の暁には玄信斎を将軍

家ご指南役に就ける事を約束する。

 玄信斎は忠長に深々と頭を下げる。

 

 利勝暗殺を狙う左門・茜・根来左源太は甲賀

忍者渡辺左門の逆襲に遭う。

 

 烏丸少将は剣の名人で左門と戦って刺殺し、

茜には「麿の剣は女子を斬らぬ」と述べる。

 

 玄信斎は柳生邸を襲い、十兵衛と戦い、彼の

片目を斬る。

 

 友の歌舞伎役者猿若勘三郎を尋ねた玄信斎

は刺客を欲し、勘三郎は弟子雪之丞の派遣を

決める。

 

 江戸城西丸で侍女に化けた雪之丞が家光を

襲撃するが、くノ一マンが防衛に尽力し、但馬

は雪之丞を斬る。

 

 茜が利勝を襲い刺し違えて相討ちになる。但

馬は京都の公卿勢力との戦いの為十兵衛を派遣

する。十兵衛は烏丸少将と戦いこれを斬った。

 

 朝廷は勅使を江戸に送ることを決める。忠長

は京都に昇り朝廷と話し合うことを決める。

 

 駿府場内に浪人衆が集い山三郎もその中にい

た。

 忠長家臣に扮した又十郎と根来衆が浪人天野

刑部らに鉄砲を渡し、京の公卿と共に家光も居

るという誤情報を流す。

 

 黄瀬川で三条大納言実条の一行を刑部・山

三郎らが襲撃するが家光は居なかった。刑部

は命乞いする実条を嬲り斬殺し鉄砲隊の銃に

撃ち殺される。

 

 陰謀の黒幕宗矩は忠長配下の者が勅使を

暗殺したとして糾弾する。

 

 駿河城に立てこもる忠長は家光との一戦を

決意する。

 崇源院は忠長が生きることを熱く望む。

 

 義直は家光との戦に反対し忠長に投降を勧

める。

 

 忠長家臣別木庄左衛門は、一人城を囲む

安藤重長の軍に突撃し戦死する。

 

 万事休すと感じた忠長は家光に降ることを

決める。

 

 三条大納言暗殺が宗矩の陰謀であることを

山三郎は義直に通報し、義直は宗矩を詰問す

るが宗矩は身に覚えのない事と虚偽を語る。

 

 忠長は使者の宗矩より死罪を告げられ切腹

する。

 

 根来衆は口封じを画策する宗矩の家臣に襲

われ虐殺される。

 

 生き乗った若者ハヤテは十兵衛に怒りをぶつ

ける。

 

 十兵衛は仲間を利用して使い捨て殺した父

但馬の非道に怒りを燃やす。

 

 江戸城では三代将軍職に就いた徳川家光が

勝利を実感する。

 

 その場に十兵衛が現れた。

 

 ◎

 

 十兵衛は父宗矩に大事な者を奪われ

殺された事を告げ、父上の大事なものを

奪ったと明言する。

 

 宗矩は十兵衛から届けられたものを

見て驚愕する。

 

 大切な人を失った父子宗矩と十兵衛は

剣を抜き対決する。

 

 ☆萬屋錦之介・深作欣二 スタア監督激突☆

 小川錦一(おがわ・きんいち)は昭和七年(1

932年)十一月二十日東京府に三代目中村時蔵・

小川ひな夫妻の四男として誕生した。昭和十一年

(1936年)十一月初代中村錦之助の芸名で初舞

台を踏む。

 昭和二十八年(1953年)十一月十五日に『鬼一

法眼三略巻』における虎蔵実は牛若丸を勤めた

後、映画俳優に転身する。

 時代劇映画を中心に活躍する錦之助は名演を

明かし大スタアとなる。

 

 

 昭和三十六年(1961年)十一月二十日、製

作東映京都の映画『反逆児』が公開される。

 無実の罪で切腹を強要される徳川信康の

青春を熱く語る映画である。

 脚本・監督を伊藤大輔、主演を中村錦之助

が勤めた。以後二人は師弟関係となり、映画・

舞台で作品を発表する。

 

 昭和四十六年(1971年)中村錦之助はNHK

大河ドラマ『春の坂道』で柳生宗矩役で主演

する。

 この年の十月歌舞伎座公演で屋号を萬屋に

改める。

 昭和四十七年(1972年)芸名を初代萬屋

錦之介に改めた。

 平成九年(1997年)三月十日六十四歳で

死去した。

 

 

 深作欣二は昭和五年(1930年)七月三日茨城県

東茨城郡に誕生した。

 日本大学芸術学を経て昭和二十八年(1953年)

に東映に入社した。

 昭和三十六年(1936年)六月九日初監督作品

『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』が公開される。

 

 スピーディーで鋭いリズムが作さんの写真に溢

れている。素早く鮮やかに物語を語る。

 アクションのリズムとテンポは光っている。凄

惨な暴力を描いて逆説的に暴力への痛みを語った。

 昭和四十・五十年代は東映のエース監督として

数々のやくざ映画の大傑作を発表し日本映画を牽引

した。

 平成十五年(2003年)一月十二日七十二歳で死

去した。

 

 前田禎穂は昭和十四年(1939年)一月二十二日 

福岡県に生まれた。

 昭和三十四年(1959年)東映に入社した。千葉

真一の芸名でテレビ・映画に出演する。前述の『風

来坊探偵 赤い谷の惨劇』を第一回主演作品とする。

アクションスタアとして世界の銀幕で大活躍を為し

た。

 令和三年(2021年)八月十九日千葉県にて死去

した。八十二歳。

 

 目黒浩樹は昭和十七年(1942年)七月二十三日

東京市に誕生した。

 十七歳で松方弘樹の芸名で映画デビューを主演で

成し遂げる。以後スタア・名優として活躍する。

 平成二十九年(2017年)一月二十一日七十四歳

で死去した。

 

 丹波正三郎は大正十一年(1922年)七月十七日

東京府に誕生した。昭和二十六年(1951年)に新

東宝に入社する。丹波哲郎の芸名を会社から貰う。

 昭和二十七年(1952年)に映画デビューを果た

す。以後三百本の映画に出演し世界の銀幕で活躍

テレビ・舞台にも出演した。

 平成十八年(2006年)九月二十四日八十四歳で

死去した。

 

 三船敏郎は大正九年(1920年)四月一日に誕生

した。 

 平成九年(1997年)十二月二十四日七十四歳で

死去した。

 獣性の迫力で世界映画の歴史に存在感を示した。

『酔いどれ天使』の存在感に深作欣二は感嘆した。

 

 時代劇・任侠路線・実録路線と流れを変化させ

ながら強烈な作品を放ってきた東映は昭和五十二

年(1977年)に当時の課題の実録作品が撮りにく

くなり、時代劇復興の声が挙がった。

 

 千葉真一が『裏柳生』の企画書を深作欣二に提

出した。

 

 深作欣二は伊藤大輔脚本『寺田屋事変』(『寺

田屋騒動』)の映画化を考案していた。

 

 

 『映画監督 深作欣二』(2003年7月12日

発行 ワイズ出版)において、深作欣二は伊藤

大輔の脚本を讃えている。

 

   僕は前に伊藤さんに監督協会でお会

   いしたときに、こっちは弱輩監督だった

   けれど、まあ名前はご存じだったよう

   で、伊藤さんが書かれたシナリオのこと

   でお願いしたことがるんです。「寺田屋

   事変」というシナリオで、これが実に面

   白い。(355頁)

 

  山本有三の小説『同志の人々』の脚本

化作品である。

 

 作さんは『仁義なき戦い』の後に、「時代劇

はこの手もあるな」と思い、映画化に意欲を

燃やし、伊藤大輔に許可を求めた。

 

   伊藤さんが了解してくださったら積極的

   に動くつもりだったんです。それで「やら

   せて頂けないでしょうか」と言ったら、「私

   も引退したわけではなく、これは愛着も

   あって機会がありましたら自分で撮るつも

   りでいる作品ですので、せっかくのお申し

   出ですがお断りします」と。でも、伊藤さん

   は申し出をすごく喜んでいましてね。

   (356頁)

 

 『寺田屋事変』シナリオに作さんは映画化を

希望したが、伊藤大輔が自分自身で撮りたいと

希望を燃やし、作さん演出は許可されなかった。

 けれども、伊藤大輔は若い作さんの申し出を

喜んた。

 

 『仁義なき戦い』の後ということは昭和四十

八年(1973年)以後に監督協会で話し合いが

あったのではないか?

 

 『柳生一族の陰謀』の主演に高岩淡は萬屋

錦之介を推した。

 

 深作欣二は出演交渉に当たり、萬屋錦之介は

自身の判断で師と崇拝する伊藤大輔にシナリオ

を読んでもらい、伊藤先生が面白いと仰った事

を受けて出演を決めた事を語った。

 

 錦之介がシナリオを伊藤大輔に読んでもらっ

たことに深作欣二は否定せず尊敬する伊藤大輔

から面白いという言葉を貰った事を喜んだ。

 

 歴史事実とは全く異なって歴史上の人物を登場

してもらい架空の物語を演じてもらう。

 歴史書や歴史学論文とは違ったフィクションで

ある。

 

 伊藤大輔は映画は嘘であり、嘘であるからこそ

本当らしく作ることが大事で、考証をしっかりす

ると語っている。

 

 歴史上の人物を銀幕の中で虚構を演じてもらう

という営みで深作欣二は、脚本の野上龍雄・松田

寛と壮大な権力闘争を描き重厚なドラマを明かし

た。

 

 そのパワーとエネルギーは凄まじい。

 

 秀忠の死去、死因疑惑から遺体内胃袋の切断、

痣のある家光と美男子忠長の対立、母崇源院の

家光への怒りと忠長への溺愛、忠長と阿国の切

ない恋、宗矩の家光への男惚れ、十兵衛と根来

衆の交流、利勝と茜の相討ち、十兵衛と烏丸少将

の激闘、宗矩の暗躍、忠長の自刃、阿国の最後

と山三郎の悲憤と熱き物語が一気に流れる。

 

 小学四年生に大叔父に連れて貰って一緒に鑑賞

した際は重厚で深い物語に圧倒された。

 

 作さん追悼の2003年4月15日の35歳での二度目

の鑑賞では実録路線のリズムの時代劇であることを

感じ今度は130分が一気に過ぎた。

 

 萬屋錦之介が歌舞伎の時代物のような豪快な台詞

回しで語る。深作欣二は残念に感じ、現代風にして

頂けませんかと頼む。

 「他の方は知りませんが私はこれでやらせて頂き

ます」と錦兄は宣言し豪快な演じ方を貫く。

 撮影中作さんは「又始まった」と舌打ちを露骨

にして反感を現したという。

 

 萬屋錦之介と深作欣二の対立と争いが起こった。

これが本作の緊張感と熱気を逆に盛り上げた。

 

 愛する若君家光を三代将軍の位に就けるために

陰謀を巡らし裏切りと殺戮を犯す悪人宗矩を錦之

介が渾身の熱演で勤め切った。

 

 千葉真一が父に尽くし裏切られる息子十兵衛

の無念を体当たりで演じる。

 サニーにとって十兵衛は生涯の当たり役で以後

数々の作品で演じることになる。

 

 家光は顔に痣があり、母に愛されず、弟に嫉妬

し悪を犯し将軍の座を手に入れる。

 松方弘樹は繊細に家光の悲憤と屈曲と野望を

表現する。

 

 成田三樹夫が烏丸少将を気品豊かに演じた。

上品で冷酷で剣の使い手という難役を鮮やか

に華麗に表した。至芸に感嘆した。

 

 萬屋錦之介と丹波哲郎の決闘シーンは二大

スタアの激突で迫力豊かだ。

 

 大原麗子の阿国が綺麗で悲劇美を鮮やかに

魅せてくれた。

200908062213

 原田芳雄が男の哀愁を演じきる。

 

 

 天野刑部が家光暗殺を狙い逃して三条実条

を嬲り斬り刻む。梅津栄のやられの体当たり

芸は凄い。死の恐怖が漲っていた。中谷一郎

の怒りの表現も壮絶だった。刑部は実条に致

命傷を与え殺害した時に銃弾に撃たれ死ぬ。

 宗矩は忠長に罪を着せて内心喜ぶ。錦兄の

冷酷演技は輝いている。

 

 山田五十鈴は大正六年(1917年)二月五日
に誕生した。本名を山田美津と申し上げる。
 平成二十四年(2012年)七月九日、九十五
歳で死去した。

 於江与の激しい母性愛を重厚に伝えてくれ

た。家光への怒りと忠長への溺愛は迫力豊か

である。

 

 当時十六歳の真田広之の美貌に驚いた。

 

 千葉真一・矢吹二朗兄弟が十兵衛・左門兄弟

役で出演した。

 

 三船敏郎は留め表示だが出番の少ない徳川義直

役で役不足の感は否めない。

 盟友萬屋錦之介との競演はある。この短い激突

に二大スタアが燃えた。

 

 ラストの宗矩の「夢でござる」の大絶叫は

壮絶である。

 

 これは映画館で鑑賞しないと体感することは

無理だ。

 

 深作欣二はアメリカでたまたま上映されてい

た『柳生一族の陰謀』を客席で鑑賞し、誰よりも

萬屋錦之介が脚本を理解していたことを感じた

という。

 

 極悪の剣士・権力者宗矩を銀幕で演じるに当

たって、萬屋錦之介は思い切って歌舞伎時代物

調の豪快・壮大な語りで台詞を述べた。

 

 その演技が宗矩の野望と悲嘆を重厚に表し最

後に悲劇美を輝かせたのである。

 

 深作欣二が描く戦の物語は萬屋錦之介の激烈

な芸によって銀幕に焼き付けられた。

 

 鑑賞四十四年が経過したが、衝撃は今も強烈

である。

 

 伊藤大輔相談企画でもある本作を封切時に銀幕

で見聞しえた縁に感謝する。

 

 萬屋錦之介の「夢でござる」に震える。

 

 三船敏郎 没後二十五年・二十六回忌命日

        令和四年(2022年)十二月二十四日

 

 

                     合掌

 

 

                  南無阿弥陀仏

 

 

                    セブン