フェルメール「マリアとマルタの家のキリスト」と「取り持ち女」 | フェルメールの小部屋 The Art of Painting

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フェルメールの絵の謎解き(解釈)ブログです。

フェルメールが制作年代を作品に残したのは「取り持ち女(1656年)」「天文学者(1668年)」「地理学者(1669年」の3作品になります。
 
他の作品の制作年代は様々な研究者によるものですので、研究者によって当然差異はあります。
 
これから記事にしていく制作順は、「信仰の寓意」と「絵画芸術」の解釈によって得た「はじめと終わりの描き方→X線で見える下の絵」と「サインの書体」・「画中画・地図の描き方の変化作品と作品との関連性などを見ながら、迷ったところは「」という、ブログ筆者の解釈からなる制作順であることをご理解ください。
 
なお、「聖プラクセディス」「ディアナとニンフたち」「フルートを持つ女」の3作品は除外いたします。

1.「マリアとマルタの家のキリスト」

 

●サインの書体は、Mの字に↓が加わったものに、eerと続きます。
●X線の情報がないので、とりあえず下の絵はないものと考えます。

●ウィキペディアによる制作年代は1654-55年頃。

●現存されている作品の中で、最も初期のものと推定されています。これは異論なしです。

 

2.「取り持ち女」 1656年

●サインの書体は、Mの字に↓が加わったものに、eerと続きます。これは、「マリアとマルタんの家のキリスト」と同じです。さらに、1656の日付もあります。
左端の男性の頭部の背後にだけ、周囲の壁と区別するように紙か布が貼ってあります。その上にフェルメールのサインが記載されています。
絵を見る側に向ける視線とサインの場所から、この左端の男性はフェルメールの自画像の可能性が高く、自分も自画像説を推します。
 
●X線で見た時に、下の絵があります。
はじめは、赤い服の男性は帽子をかぶっておらず、視線は抱える女性の顔に向けられます。柄模様のタペストリーの上にかかっている黒い上着のようなものもありませんでした。
あとから帽子をかぶせ、視線を変更し、黒い上着を描き足しているのですが、この時はまだ、構想が定まらずに描き直しているだけに見えます。
 
●デカンタ(ワインの壺)は、青と白模様です。
 
●タイトルにある「取り持ち女」は、左から2番目の黒い服の女のことです。
グラスを持つ若い女と赤い服の男性との仲介役(仲を取り持つ)をしているのです。
 
●フェルメールの描いた風俗画では最も初期のものと推定されています。これは異論なしです。