進学校の競争に疲れていた八軒勇吾。入学した「大蝦夷農業高等学校」通称「エゾノー」は広大な大自然に囲まれた学校。一般家庭で育った八軒は、はじめての経験に悪戦苦闘......鋼の錬金術師の荒川弘が描く酪農青春グラフティー。


第9話「八軒、豚丼に迷う」

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夏休みも終わり、アキの母の車で送ってもらう八軒。また人手が必要になったらお願いと言う母に、あんなに失敗したのに、おれなんかでいいんですかと言うと、「あんなに失敗して凹みまくったんだもの、次は慎重にやってくれるっしょ。一回失敗したくらいで、おれなんか、なんて言っちゃだめよ」それを聞いた八軒は、「おれ、御影んちの子供に生まれたかった~」

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寮に帰る前に、一ヶ月近く会っていない豚丼のところに行く。豚丼がすっかりブタになっていた。ダルダルのブクブクと言う八軒だが、先生は、豚の体脂肪率は15%前後だと言う。人間の男の平均は10~20、女は20~30、わたし、豚よりブタだわとアキ(私もですわwww)

大きくなった豚丼だが、おひとよしは相変わらず。他の豚に比べると小さい。食いが悪いから、このままでは体重不足で等外だと言われる。枝肉は、極上、上、中、並、等外と格付けがあり、等外では、あってないような値しかつかないと先生。豚丼に別にエサをやりながら考える八軒。

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一ヶ月ぶりの仲間たち。多摩子は別人のようになっていた。痩せたというかトランスフォームだよねと相川。常盤は夏休みデビュー? 髪はニワトリのトサカみたいだし、服もすごい。夏休みを満喫しすぎたようだと担任に言われる。持ち物、アクセサリ、服装、髪、数え役満の常盤は処分について職員会議にかけられることに。停学など生ぬるいと担任は言った。

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寮で。常盤は涙の断髪式。八軒は友だちから出荷までに豚を仕上げる秘策「水とき」を聞く。常盤の処分は一週間の強制労働に決定。豚舎に行くと八軒がいた。先生にたのんで出荷まで豚丼の世話をさせてもらうことにしたと語る。最後まで世話したら、よけいに別れがせつなくなると言われるが八軒は、

「ここで何もしないと、なんか後悔しそうだし、でもしかしたら、何か見えてくるんじゃないかなんて......」

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エサを水で溶いて与える八軒。いい食べっぷりの豚丼。毎朝3時起きで世話をする。一週間がたち、八軒はやつれていたが、豚丼は他の豚と変わらないくらいになる。9キロ増えて90キロになった。格付け、中は硬い。そろそろ出荷できそうだと言われる。

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豚肉を食べるなんて当たり前のことなのにモヤモヤする。考え事をしていた八軒は馬術部の練習中に馬からずり落ち、危ないし馬にも失礼だから今日はもう乗らないほうがいいと言われる。

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気分転換に、みんなでお祭りに行こうとアキが誘う。たくさんの屋台にバイトで稼いだ八軒ひおごってくれと言われるが断る。常盤は家の手伝いをしてもらったこづかいを全部おしゃれ?に使ってしまったと言う。「あ~お金の使い方の残念な人だ」

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「合言葉は、残さずきちんと食べましょう」食べ盛りの上に労働でお腹をすかせているエゾノー生は次々、屋台を撃破していく。炭水化物系をピンポイントで根こそぎ、他の客の事を考えない鬼? 食い物屋台は壮絶な様相を呈していた。

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元気でた? アキが八軒にたずねる。豚丼のこと、できることは全部やっておきたいと八軒。でもやる前よりモヤモヤがでかくなっている。豚丼は家畜で人間が食うために飼っているんだと頭ではわかっているが、割り切れなくてジタバタしているうちに出荷目前になった。でも今日、誘ってもらって元気になった。と、豚の丸焼きがふるまわれる放送が。さすがにこれは......

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元気のない八軒のところに、みんなが集まってくる。豚丼のこと世話したら何か見えてくるかもと言っていたが、ますます見えなくなってきたと八軒。その様子を見た、先輩の稲田たち。さっさと気持ちを切り替えればいいのにという声に稲田は、

「わかったふりしてスルーすることもできるはずだが、まじめに受け止めて、まわりにもまじめに返している。ピザのときもそうだったが、まじめにやっていると、いつのまにか人が集まってくるんだよな」

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「価値観が凝り固まっている群れに、八軒のような異物がまざることによって、ふだんやらないようなディスカッションが起こっている。価値観の違うものがまざれば、群れは進化する。1D酪農科学科、おもしろくなってきたな」先生は言った。

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みんなで歩く八軒の前に兄が現れる。屋台でバイトしていて買出しに行ってきたと言う。兄は八軒に、

「よかったな、友だちいっぱいで、楽しそうじゃん」

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そこの焼きそば屋でバイトしているから、食いに来いよと兄、ちょっと安くしてやるの言葉にみんな喜んで屋台に行く。八軒はみんなに言うのを忘れていた。兄の料理は......

「焼きそばを不味く作れるのって才能だと思います」(アキ)

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翌朝、寮の朝食の時間。今日はカレー。「ここのカレー美味しいわよね」と多摩子。見ると元の姿に戻っていた。「なによ」「いや、なにがあっても驚かない」

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カレーはやっぱり豚肉だな。いや鶏だ。牛だろ。豚肉派が多いよう。八軒もカレーの肉を食べた。

「うまい」


【感想】

・豚丼、八軒の努力のかいあって、立派に成長したようで、よかったですね。豚丼の成長にも驚いたけど、常盤のはっちゃけぶりも、すごいな。なにより驚いたのは多摩子ですけどねwww

・それにしても、八軒のまわりは、いつも友だちが集まって、素敵な高校生活ですね。豚丼と別れる時が近づいてきました。八軒には、何か見えてくるでしょうか。