林業機械化センターその1 事務所棟

林野庁・森林技術総合研究所の林業機械化センター見学。

この施設は平成7年から11年まで毎年1棟ずつ建設された木造の建物4棟からなっています。まだ林野庁にも予算が比較的ふんだんにあった頃の建物で、それぞれ1億円以上掛けた物です。この連作はアルセッド建築研究所と東大の坂本功先生や当時森林総研におられた現京大教授の小松先生が加わり、稲山先生が構造設計を担当された物です。
なんと錚錚たるメンバーが、楽しみながらひとつずつ建てていったおもしろい施設です。
ここでも稲山パワーが炸裂していますね。この連作の5年間はとても楽しかった様です。


今回はこの4棟の中からまずは事務所棟を紹介します。

1階の平面

2階です。幅方向は同じサイズですが奥行き方向は前後にオーバーハングしていて2階の方が大きい建物です。


オーバーハングの仕組み。

なんと、このオーバーハングは上部の桔木(はねぎ)式の梁から吊っているのです。
ここまでやるのか!と思わせる構造ですね。この部分を下から見るとこんな感じです。

柱は集成材で梁間方向は耐力壁、桁行方向はラーメンになっています。

多層多スパンの木質ラーメン構造は、当時まだほとんど例が無く、試行錯誤だったようです。
地貫、胴差貫、頭貫を2枚の合わせ柱で挟んだ接合部で、貫のめり込みで対応しようと考えたようです。
しかし貫構造では初期剛性が低い為、小松先生のアイデアミズナラの込み栓を打ち付けて剛性を上げたそうです。


接合部の説明を皆熱心に聞いています。


先ほどのオーバーハング部を吊っている梁と柱です。

跳ね出した梁からつり下げているのですが、なんと上部がバチ型に広がった15㎜の合板が一枚差し込んであり、それを梁と柱の両側から釘で留め付け2面せん断にしているだけです。普通は鉄板などを使うところですが、当然その様な無粋な事はしません。(笑)

合板が縦に見えます。この程度でも引張りに有効なのです。驚きでした。


梁の頂部も桔木方式でバランスしているため、非常に簡単な接合でした。
これも接合部に合板が仕込んでありますね。


階段はすべての建物でスタイルを変えてありました。
この事務所棟は肘木スタイルで伝統工法を意識したデザインです。


しかし恐ろしいほど実験的な構造スタイルです。


ヤギモク 遠藤