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イラガの生態と人間への影響|刺された時の対処方法・駆除のやり方などを解説

イラガの生態と人間への影響|刺された時の対処方法・駆除のやり方などを解説

公園や街路樹などでよく見かける特徴的な見た目の毛虫「イラガ」。人によっては、既に刺された経験がある人もいるのではないでしょうか。この記事では、イラガの生態から人間への影響、そしてイラガに対する対策までを詳しく解説します。これらの知識を身につけることで、イラガから自身を守るための予防策を理解し、農作物への被害を抑えることができるはずです。

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イラガとは

項目 詳細
和名 イラガ
学名 Monema flavescens Walker
分類 チョウ目イラガ科
分布 全国
発生時期など 通常年1回の発生だが2回発生することもある。幼虫は7〜8月から10月ごろにわたって見られる。木の幹や枝に、暗白色に褐色のしま模様のあるマユが見られ、この状態で越冬する。
寄生植物 柿、サクラ、ウメ、アンズ、ケヤキ、カエデ類、ヤナギ類、クリ、クルミ、ザクロなど幅広い樹木
人への害など 幼虫には多くのトゲを持った突起があり、このトゲは体内の毒腺につながっていて、刺すと同時に相手に毒液を注入し、激痛を与える。
防除方法 ドクガのように、若齢幼虫が集団で発生する習性はない。冬期にマユを確認した場合はかき取る。柿には生物農薬であるBT剤の適用があり、その他の農薬にも登録がある。散布する際は発生樹木に限定するなど飛散防止に努める。

イラガは、その特徴的な形態と生態で知られる昆虫です。

その見た目の特異さだけでなく、人間にとっての影響も大きい生物です。ここでは、イラガの基本的な特徴から生態まで、詳しく見ていきましょう。

イラガの形態と生態

イラガの幼虫は体に独特な突起を持っています。その突起から生えている刺毛(しもう)は、触れると人間に痛みを与えるため、見つけても決して触れないようにしましょう。

イラガを触った時に電撃が走ったような痛みを感じることから、地方によっては別名「でんき虫」とも呼ばれています。

イラガの体長は幼虫で約2センチ、成虫で羽を広げた大きさが約3センチほどで、成虫の体色は黄褐色から黒褐色です。イラガは夜行性で、昼間は木の葉の裏などで休んでいる場合が多いです。

成虫は樹木の葉に産卵し、幼虫は葉を食べて成長後、秋に繭を作ります。

繭は冬越しの場として用いられ、春にさなぎになり、初夏に成虫が出てきます。繭の形はイラガの種類により異なり、樹木の幹や枝に作るのが一般的です。

イラガの生息地と分布

主なイラガの種類 分布 寄生植物
イラガ 全国 柿、サクラ、ウメ、アンズ、ケヤキ、カエデ類、ヤナギ類、クリ、クルミ、ザクロなど幅広い樹木
クロシタアオイラガ 全国 同上
ヒロヘリアオイラガ 本州、九州、沖縄 サクラ、カエデ類、柿などの広葉樹

イラガは日本全国に広く分布しており、特に山間部や森林地帯に多く生息しています。果樹や広葉樹の葉を好んで食べるため、これらがたくさん植えられている場所に集まりやすいです。

家庭の庭や公園でよく見られる樹木の中で、イラガが好むものとしては、柿、サクラ、ウメ、カエデ類、ヤナギ類、クリ、ヤマボウシ、ケヤキなどが挙げられます。

果樹や広葉樹が自宅の庭や近隣に植えられている場合、7〜10月の間にイラガの幼虫が発生する可能性が高まります。

特に都市部では、街路樹として広葉樹が植えられていることが多いため、街中でもイラガに遭遇するリスクが高いです。そのため、都市部や都市近郊の地域でもイラガに対する注意が必要不可欠です。

イラガのライフサイクル

ここでは、イラガが卵から成虫になるまでの過程を詳しく見ていきましょう。

イラガの卵

イラガの卵は、春から初夏にかけて産み付けられます。卵は主に樹木の葉の裏に産み付けられ、その数は一度に数十~数百個にも及びます。

卵は黄色で、直径約1ミリ程度の小さなものです。卵からは、約1週間で幼虫がふ化します。この時期のイラガは、活発に食事を行い急速に成長します。

イラガの幼虫

イラガの幼虫

イラガの幼虫には、体に無数の刺毛(トゲ)が生えており、一見すると奇麗な毛虫のようにも見えるでしょう。

しかし、イラガの刺毛には毒が含まれており、触れると人間に痛みを与えます。

また、幼虫は約1カ月の間、成虫になるまでに脱皮を繰り返します。脱皮した皮にも毒のある刺毛が残っているため、触らないようにしましょう。

【イラガの種類別の特徴】

イラガの種類 幼虫時の特徴
イラガ ・成長時の体長:約24ミリ
・色:黄緑色、褐色の斑紋あり
・毒のトゲを持つ突起あり、触れると痛みが生じる
クロシタアオイラガ ・成長時の体長:約18ミリ
・色:青黄色、青や赤茶色の線が縦に入っている
・毒のトゲを持つ突起があり、触れると痛みが生じる
ヒロヘリアオイラガ ・成長時の体長:約22ミリ
・突起のうち1対に朱色のトゲがある
・毒のトゲを持つ突起が多く、触れると痛みがあり皮膚炎が生じる

イラガの繭

イラガは、幼虫から成虫へと変態するための準備段階として繭を作ります。繭は主に樹木の葉の裏や枝が分かれたところなどに作られ、その中でイラガは成虫へと変態します。

イラガが繭を作る理由としては「寒い時期を乗り越える」という理由のほかにも、鳥などの外敵から身を守る役割を果たすという理由があります。

繭は主に褐色でうずらの卵のような形状をしており、その中でイラガは時間をかけて成虫へと変態し、繭から出てきます。

イラガの中には繭にも毒毛を持っている種類もいるため、駆除する際は割り箸などを活用して直接触らないようにしましょう。

【イラガの種類別の特徴】

イラガの種類 繭時の特徴
イラガ ・大きさ:1.2~1.5センチ
・色:白地に褐色の模様がある
クロシタアオイラガ ・大きさ:イラガとほとんど同じ
・色:暗褐色でしま模様がない
ヒロヘリアオイラガ ・大きさ:イラガとほとんど同じ
・色:樹皮と同じような色
・繭に毒があるため注意が必要

イラガの成虫

イラガの成虫

ヒロヘリアオイラガの成虫(出典:環境省「公園・街路樹等病害虫・雑草管理マニュアル」

イラガが成虫になると、活動は一変します。

成虫のイラガは食事をせず、生涯を通じて飛び回り繁殖に専念します。成虫の期間は約1週間で、その間に次世代のための卵を産みます。

ちなみに、イラガの成虫には毒はありません。

【イラガの種類別の特徴】

イラガの種類 成虫時の特徴
イラガ ・羽を広げた幅:30~35ミリ
・雌は雄より少し大きい
・色:淡黄褐色
・羽の先端:丸みがある
クロシタアオイラガ ・羽を広げた幅:23~29ミリ
・色:前羽は緑色、前羽の外縁と他の部分は黒褐色
ヒロヘリアオイラガ ・羽を広げた幅:約35ミリ
・色:前羽の内側は緑色、前羽の外側と他の部分は褐色

イラガと人間

イラガの幼虫や繭は、毒を持つ刺毛により人間に対して悪い影響を及ぼします。

ここでは、イラガが人間にどのような影響を及ぼすのか、そしてイラガに刺された時はどのように対処すればよいのか、詳しく見ていきましょう。

イラガの刺毛による人間への影響

柿の木やバラ科の木(サクラ、ウメなど)に生息するイラガや、街路樹に見られるヒロヘリアオイラガの幼虫には毒を持つ刺毛があり、幼虫に触れると蜂の刺し傷のような強い痛みや赤み、腫れが出ます。

大抵、数時間で症状は和らぎますが、場合によっては翌日もかゆみや赤みが続くことがあり、これらは遅延型のアレルギー反応と考えられます。

また、前述のとおりイラガの成虫は毒を持っていませんが、ヒロヘリアオイラガの繭には毒性があるため注意しましょう。

イラガに刺された時の対処法

イラガに刺された場合、まずは刺された部位を清潔にし、冷やすことが重要です。冷却することで、痛みや腫れを和らげることができます。

刺毛が皮膚に残っている場合は、粘着テープやガムテープなどを使って取り除いて下さい。ただし、こすったり、押さえつけたりすると、刺毛から毒素がさらに出るため、注意してください。

刺毛を取り除いたら市販の抗ヒスタミン軟膏を活用して、しっかりとアフターケアに努めましょう。

万が一、症状が重い場合や、改善しない場合は、医療機関で受診することをおすすめします。特に、全身的な症状が出た場合や、目や呼吸器に刺毛が入った場合は、すぐに医療機関で受診してください。

イラガの農作物への被害:ブルーベリー栽培における実例

イラガの農作物への被害

ブルーベリー栽培における悩みの一つが、イラガ類による葉の食害です。

特にヒロヘリアオイラガの被害が産地で注目されており、この問題に取り組むための研究が進められています。

ヒロヘリアオイラガによる葉の食害とその対策

山口県を中心とした地域では、ヒロヘリアオイラガが年に2回発生します。ヒロヘリアオイラガはマユで越冬し、5月20日頃から活動を開始します。

5月10日前にその越冬マユを効果的に除去することで、葉への食害を大きく抑えることが可能です。

万が一葉が食害を受けると、植物の光合成能力が低下し、ブルーベリーの生育や収量に悪影響を及ぼす可能性があります。

被害の予防と品質維持の方法

被害の予防と品質維持の方法

食害を防ぐための最良の手段として、4mm目以下の防虫ネットを5月10日頃から設置することが推奨されています。この方法であれば果実の品質に影響がでないため、安心して導入できます。

防虫ネットの被覆法も強度が増すように改善されているため、安定した効果が期待できるでしょう。

イラガの駆除と対策

イラガは、刺毛による人間への影響や、果樹などの植物への被害から、駆除が必要な場合があります。

ここでは、イラガの駆除方法と対策について詳しく解説します。

イラガの駆除方法と注意点

イラガの駆除作業を行う際には、以下の保護具の準備が必要です。

● ゴム手袋:イラガの刺毛から手を守る
● 帽子やサングラス:頭や目を守る
● マスク:殺虫剤やイラガ本体を吸引、誤飲しないように口を守る
● 長袖シャツ・長ズボン:皮膚が露出しないようにし、イラガの刺毛から体を守る

必ず保護具を準備した上で、駆除作業を行うようにしましょう。

また、イラガの駆除方法としては、直接取り除く物理的な方法と、殺虫剤を使用する化学的な方法があります。

駆除方法 手段 詳細
物理的な方法 直接取り除く 長い割り箸やピンセットを使用して、1匹ずつ慎重に除去します。
高圧洗浄機で洗い流す 木や草の上にいるイラガを、高圧洗浄機で洗い流します。
化学的な方法 殺虫剤の使用 市販されているイラガ専用の殺虫剤(※)を使用します。広範囲のイラガを効果的に駆除することができます。

※ 柿の場合は「家庭園芸用スミチオン乳剤」「家庭園芸用マラソン乳剤」など(主に乳剤)、カナメモチの場合は「MY PLANTS 虫からやさしく守るミスト」「ベニカJスプレー」など(主にスプレータイプ)というように、作物によって有効な薬剤が異なります。

イラガ専用の殺虫剤を選ぶ際には、以下のポイントに注意するとよいでしょう。

● 人やペットに有害な成分が含まれていないか
● 効果の持続時間が長いか
● 使用方法が簡単であるか

イラガの駆除作業を行う際には取扱説明書をよく読み、十分な注意を払いながら正しく使用しましょう。誤飲や皮膚への刺激を防ぐための対策も、忘れずに行ってください。

イラガの発生を防ぐ方法

イラガの駆除はもちろん大切ですが、できれば最初から発生を防げるとなお良いでしょう。家庭の庭やベランダにイラガが発生しないようにするための方法を、いくつか紹介します。

殺虫剤の予防散布

早めに殺虫剤を準備して、イラガが発生する前に予防的に散布することで、発生を大きく抑えることができます。

特に、春先や初夏に行うと効果的です。散布する際には、植物や他の生物に影響を与えないよう注意しましょう。

忌避剤(お酢と水)の使用

忌避剤を利用することで、イラガが近寄りにくい環境を作ることができます。忌避剤の作り方としては、100円ショップなどに販売されているスプレーボトルに水と酢を3:1の割合で入れて混ぜるだけです。

イラガをはじめとした毛虫は、お酢の匂いが苦手です。そのため、庭やベランダの植物全体に散布すると侵入を防ぐことができます。

ただし、お酢で作った忌避剤の効果は、1〜2週間程度でなくなってしまうため、定期的に散布するようにしましょう。

イラガの天敵とその活用

イラガの天敵としては、鳥類(シジュウカラ、ツツドリ、カッコウ)や昆虫(カマキリ、ヤドリバエ、イラガイツツバセイボウ)などが挙げられます。鳥類や昆虫は、イラガを餌として捕食したり、寄生したりして繁殖します。

例えば、鳥を引き寄せるための鳥小屋を設置したり、虫を増やすための環境を整えたりすることで、イラガの数を自然に抑えることが可能です。

ただし、天敵を利用する方法は時間がかかるため、短期間での駆除を目指す場合は、他の方法と併用することをおすすめします。

イラガに関するよくある質問

ここでは、イラガについてのよくある質問と回答を、分かりやすくまとめました。

Q. イラガは何の木につく?

イラガは、特に果樹や広葉樹を好みます。

リンゴやモモ、サクランボなどの果樹や、ケヤキ、カエデ類などの広葉樹に多く見られます。樹木の葉は、イラガの幼虫が成長するための重要な食料源です。

Q. イラガの刺毛はなぜ人間に影響を及ぼすのですか?

イラガの刺毛が人間に影響を及ぼすのは、刺毛に含まれる毒素によるものです。毒素は、皮膚に刺さると痛みや炎症を引き起こします。

特に、イラガの幼虫期には刺毛が多く、人間にとっての危険度が高いです。

Q. イラガの刺毛にペットが刺された場合、影響はありますか?

イラガの刺毛に刺された場合、ペットにも影響が出てきます。ペットも人間と同様に、イラガの刺毛による刺激に反応するからです。

特に、皮膚が露出しているタイプの犬や猫は、刺毛による症状を示すことがあるため注意しましょう。刺された時、ペットが異常な行動を示したら、すぐに獣医に連絡してください。

Q. イラガの刺毛による症状は、季節によって変わりますか?

イラガの刺毛による症状は、季節によって変わることはありません。

しかし、イラガの活動が活発化する春から初夏にかけては、接触の機会が増えるため、刺される可能性が高まります。

イラガの特徴を正しく理解して駆除・予防に努めよう

イラガは、農作物だけではなく人にも害を及ぼす昆虫です。

特に、幼虫時期が一番危険性が高く、見た目が珍しい毛虫だからといってむやみに触らないように注意しましょう。万が一、直接触ってしまった場合は、適切な処置を行うようにしてください。

また、イラガの駆除作業を行う際には、必ず保護具を身につけた上で行うようにしましょう。発生を事前に防ぐ方法としては、お酢と水で作った忌避剤でも効果はありますので、ぜひとも試してみてください。

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