「やさしいおせっかい」のブランド価値を新聞で発信「メンソレータム」のブランディング

 ロート製薬が展開する「メンソレータム」の全面広告が2022年11月5日、朝日新聞朝刊に掲載されました。医薬品から化粧品まで幅広い商品をそろえる同社が、「リトルナース」でおなじみの「メンソレータム」ブランドの価値をグラフィックとメッセージで伝えようと企画。新聞広告が持つ力を改めて感じたというロート製薬マーケティング&コミュニケーション部部長の角田康之氏に、広告展開の狙いや「メンソレータム」のブランディングについて聞きました。

100年以上歴史のあるブランドを見つめ直す中で発見した「やさしいおせっかい」という言葉

 目薬や胃腸薬だけではなく、ヘルス&ビューティー関連の商品にも力を入れているロート製薬。培ってきた製薬技術を生かしたスキンケアブランドを2000年以降新たに次々と立ち上げ、「肌ラボ」「オバジ」「メラノCC®」などのブランドが育つ中、長い歴史を持ち、生活者から安定した支持を得ているのが「リトルナース」のシンボルでおなじみの「メンソレータム」ブランドだ。

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角田氏

 「メンソレータム」は1894年にアメリカで家庭用皮膚薬として誕生。ロート製薬は1975年に「メンソレータム」社より日本での商標専用利用権を取得してスキンケア市場に参入。1988年には同社を買収して経営権を取得し、目薬、胃腸薬に次ぐ、第3の事業の柱として、健やかで美しい肌のための製品提案を続けてきた。角田氏は「現在100を超える製品数を提案しており、製薬会社らしさを体現する大事なスキンケアブランドと認識しています」と話す。
 2020年にスタートした「メンソレータム」のブランディングでは、ヘルス&ビューティー関連の商品が市場にあふれる中で、生活者が商品に感じる価値をしっかりと表現し、商品と生活者との結びつきを強めるところに力点を置いた。たどりついたブランド価値は「やさしいおせっかい」。
 角田氏は「おせっかいという言葉は、時としてちょっと余計なものと捉えられがちです。しかし、本人が気づいていないかもしれない、ちょっとしたお肌のトラブルでも『何とかしてあげたい』と思う気持ちこそ、ブランドが大切にしている価値でもあります。心も含めて真剣に寄り添いたいという前のめりな思いをどう表現しようかと社員同士で議論を重ねる中で、あえて『おせっかい』という言葉を使って価値を表現してみようと決めました」と振り返る。

『実写版』だからストレートに伝わる人の温もり

 11月5日に掲載された全面広告は、ブランドカラーでもある緑色で記されたメインコピー「お肌はいつもあとまわし?」が目を引く。

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新聞掲載にも使用したグラフィックイメージ

 「熱が出たら薬を飲んだり、なるべく早く病院に行ったりしますよね。それなのに、いたい、かゆい、つらい、そんなお肌の悩みは、いつもあとまわし。なんでだろう? お肌は、もっと心配されていいと思うのです」などと文章でつづり、「ガサガサ、ヒリヒリ、ジンジン お肌のあれこれ、なんとかしたいのだ。」とサブコピーで締めくくる。紙面で微笑むのはブランドキャラクターの「なーちゃん」。やさしいまなざしで救急箱を持って立つ姿が印象的だ。

 「ブランディングを始めて3年目。お客様にスキンケアをより身近に感じていただきたいと考えました。皮ふのかゆみや痛みなどは、本人にとっては生活の中で大きなストレスなのに、後回しにしがちです。周囲も気づいていないことが結構あります。お肌の悩みは、『後回しにしなくてもいいのですよ』というメッセージを言葉として広く伝えたいと思いました」と角田氏は新聞広告に込めた意図を話す。「なーちゃん」を登場させた理由については、「看護帽をかぶった女性は『メンソレータム』の大きなシンボル。『やさしいおせっかい』に含まれる人間的な温もりを、『実写』にしてストレートに表現した方が伝わると思いました」と語る。

 新聞広告には二次元コードを掲載。YouTubeで公開中の動画「なーちゃんはきょうもしんぱいです。」にアクセスできるようにした。七五三の写真を撮るタイミングでかゆみが出た子どもに、かかないでがまんするように言ってしまう母親や、手荒れで水がしみる妻に「なんだ、手荒れかあ~」と言う夫など、つい後回しにされがちな場面をストーリー仕立てで紹介。「お肌はもっと、心配されていいと思うのです。」となーちゃんが声を掛け、気づきを与えている。「動画では特に視聴者が共感できそうなシーンをピックアップしました。見る人がハッピーな気持ちになり、スキンケアは自分を守ってくれるものだとほっこりしていただければうれしい」。

新聞広告の魅力はメッセージを強く伝えられること

 新聞広告掲載後には商品のユーザーや社員から「見ました!」「いいね!」など高く評価する声が聞かれ、コールセンターにも「とても心に響いて一気に見てしまいました」などの感想が寄せられた。SNSの公式アカウントにも温かく好意的なコメント増え、生活者と思いを重ねることができ、手応えを感じているという。

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 新聞広告の魅力については、「人に何らかのメッセージを伝えるときに、固定されたビジュアルは大切だと以前から思っていました。最近でいえば、サッカーのワールドカップ。選手と監督が通路裏で抱き合う一枚の写真は、映像以上にメッセージを強く感じさせてくれます。新聞広告にもそのようなメッセージを伝える力があります。『メンソレータム』ブランドの価値をお客様の心にいかに届けるかを考えたときに新聞広告は欠かせませんでした。新聞広告はまだまだ手法があると思うので、朝日新聞の強みを生かし、どんな展開が続けられるか考えていきたい」と期待する。

お客様とのコミュニケーションから生まれる価値

 ロート製薬の商品開発で出発点となるのは生活者の声だ。「やさしいおせっかい」も、「肌の悩みは後回しにしがちですよね」という生活者の声を聞いた担当者が「あ、わかる!」と共感したことがスタートだった。
 「1960年代には出荷する商品にアンケートはがきを封入し、寄せられる声を商品開発や社員の励みにしてきました。毎週金曜日の朝礼時には、お客様からの声を『よろこびっくりの声』と題して全社員で共有し、私たちのビジネスの意味を考え、お客様に感謝する時間を持つことを続けています」。2022年にリニューアルした「メンソレータム®AD」では、「手の力が弱く、ふたを開けにくくなった」という生活者の声をヒントに、誰もが使いやすいユニバーサルデザインの開けやすい商品に改良したのもその一例だと明かす。

 「お客様が商品を選ぶ基準は、効能効果はもちろんのこと、価格面を含めてより細分化しています。『メンソレータム』ブランドは、『この商品なら効いてくれる』『これでなければ!』という信頼感や愛情を背景にした第3の選択肢で選ばれるものとして、大切に育てていきたいと考えています。最終的に商品を購買いただけるような取り組みの一方で、お客様との結びつきを強めるキャンペーンも大切。さまざまなコミュニケーションを通して、お客様に『ああ、そうそう、わかってるね』と言っていただけるような取り組みを続けていきたいと思います」と語った。

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