3次元浸水ハザードマップの開発

アジア航測株式会社

業種:学術研究、専門・技術サービス業
掲載日 2023年3月31日
適応分野 自然災害・沿岸域

会社概要

株式会社ヒノキヤレスコロゴ

アジア航測株式会社は自然災害発生に伴う計測や情報発信、森林など自然環境資源の保全や育成、再生可能エネルギー事業への参入、社会基盤施設の計画や設計など、空間情報をベースとした防災、環境、社会基盤のコンサルティングを行っている会社である。

気候変動による影響

昨今、気候変動、生物多様性、自然災害への対応や社会基盤維持管理など、 様々な課題が国内外で顕著化しており、2020年には九州地方や中部地方等で広範囲にわたった洪水や土砂災害等の複合災害が発生し、社会や自然環境に大きな影響を与えた。

適応に関する取り組み

従来の2次元のハザードマップでは把握できなかった、自分の家がどこまで浸水するのか、垂直避難を行う際にどの建物に避難すればよいのか、といった分かりやすいリスク情報を提供できるように、3D化されたハザード情報とリアルな写真テクスチャ付の3次元建物モデルを重ねた「3次元浸水ハザードマップ」を開発した。

3次元浸水ハザードマップは、当社が開発した高精度3Dビューワである「LandViewer NX」(注1)の基盤ソフトに、下記の「各種ランドマーク(避難場所等、道路等の主要施設)」「3次元都市モデル」「内水氾濫解析結果」等のデータを搭載し、重ね合わせて表示することで作成している(図1)。

  • 各種ランドマークのデータ取得
    最新の航空測量用カメラであるオブリーク航空カメラを用いて、一度の撮影で直下と4つの斜方視(前方、後方、左方、右方)の写真を同時に撮影(図2)。斜方視の画像の利用により、建物側面など3D空間情報の取得が可能。
  • 3次元都市モデル
    複数の写真から自動的に画素の特徴点を抽出し、3Dモデルを作成するマルチビューステレオ方式を採用することで、現実空間を3Dでリアルに複製。
  • 内水氾濫解析結果
    分布型流出モデル(注2)を活用した氾濫解析を実施。この解析モデルに降雨のデータを付与し、降雨時の流域の表面流を詳細に再現(図3)。当社では、更に航空レーザ計測を用いた微地形情報を活用することにより地表面流の解析精度の向上を図った。本解析手法は、ゲリラ豪雨等による局地的な浸水特性(浸水範囲、浸水深、湛水時間など)を把握するのに特に有効。

委託業務で作成した3次元浸水ハザードマップは福島県郡山市で活用されており、市のWEBサイトにて地域住民向けに、LandViewer NXを用いて作成した市内の主要地点の3次元動画が公開されている。

効果/期待される効果等

従来の浸水ハザードマップでは、2次元の地形図や航空写真の上に氾濫解析結果や避難箇所の情報などを重ね合わせて表示することが一般的であったが、3次元浸水ハザードマップでは、時系列での切り替えや、自由な視点から浸水想定における被害の状況(床下浸水、床上浸水等)を確認することが可能である。また、時系列的な浸水被害についても確認することができるため、避難計画等の基礎資料として活用することができる。

LandViewer NXで描写したハザードマップ
図1 LandViewer NXで描写したハザードマップ
オブリークカメラのレンズ配置と撮影位置
図2 オブリークカメラのレンズ配置と撮影位置
流出モデル概念図
図3 流出モデル概念図

脚注
(注1) 図化やレーザ計測により取得した高密度・高精細のDEMデータと、高解像度のオルソ画像から成る広大な3D空間を高速に描画できる3Dビューア。画面上の操作コントローラを使用し、誰でも簡単に3D空間を体験できる。
(注2) 解析対象流域をメッシュ分割し、各メッシュに地盤高、土地利用条件等の流域特性を表現した解析モデル。

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