堀ちえみさん「“病気になる前の私”を断捨離。そこから希望と目標が生まれた」

2022/03/25

やましたひでこ先生のご自宅(本物っ)にゲストを迎えてスペシャル対談。今月のお客様は堀ちえみさん!アイドル歌手として大ブレイクし、テレビドラマ「スチュワーデス物語」で一世を風靡したのち、2度の離婚や舌がん、特発性重症急性膵炎、特発性大腿骨頭壊死症、関節リウマチ、神経障害性疼痛といった大病など、人生の荒波をたびたび経験。そんな堀さんは、どうも筋金入りのダンシャリアンらしい……。

堀ちえみ:
歌手。1982年「潮騒の少女」で歌手デビュー。翌年、主演を務めたドラマ「スチュワーデス物語」が大ブレイクして社会現象に。2019年に舌がんが発覚、術後に食道がんが見つかる。現在はテレビ出演や講演を行いながら、デビュー40周年記念の単独コンサートを目指してリハビリとボイストレーニングに奮闘。

やましたひでこ:
断捨離®提唱者。1954年、東京生まれ。子育てや介護を経験した後、ヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」から着想を得た「断捨離」理論を構築。BS朝日『ウチ、〝断捨離〞しました!』(毎週月曜夜8時)にレギュラー出演中。最新刊は『自在期』(ビジネス社)。東京と鹿児島県指宿の2拠点生活中。

1年使っていない物は一生使わない

【ひでこ】:堀さんは断捨離を習慣にしているそうですね。

【堀】:はい。幼いころから片づけが好きで、引っ越しも多かったので、自然と身についていました。

【ひでこ】:現在はほぼ毎日、水回りや玄関の掃除をされているとか。最近は大きな断捨離はしましたか?

【堀】:去年の秋に自宅を引っ越すことになったのを機に、大断捨離しました。収納の中身を全部出してみたら、もうビックリで!小まめに捨てていたはずなのに、信じられない量の物が次から次へと(苦笑)。1年使っていない物は一生使いませんから、バサバサ処分しました。

【ひでこ】:おお。それは思いきりがいい!

【堀】:私には子どもが7人いて、そのうち5人は独立して離れて暮らしているんですが、彼らが残していった物も大量にあって。全員に連絡して、引き取ってもらいました。「お母さんは冷たいな~」なんて言う子もいましたけど(笑)。

【ひでこ】:(笑)。同居しているご家族のみなさんも、堀さんと同じく断捨離はお得意なのかしら?

【堀】:それが、そうでもなくて。特に大学生の娘にとって、今回の断捨離はつらかったみたいですね。片方失くしたピアスなんかはいくら高級でも潔く捨てられるのに、妙な物に執着するんですよ。

【ひでこ】:例えば?

【堀】:使ってもいないお菓子の空き缶。「昔お母さんに買ってもらったから」って。

【ひでこ】:物って「関係性の証拠品」なんですよ。堀さんから見たらただの空き缶でも、娘さんにとっては思い出の品。お母さんとの関係が大事だから、捨てたくないのね。

【堀】:その気持ちはうれしいけど、今使っていない物は不要な物。「使わないなら、物もかわいそう。解放してあげようよ」という言い方をして、納得してもらいました。

がんになる前の自分を断捨離。「今」を起点に新たな生き方をめざす

【ひでこ】:堀さんは断捨離の本質をよくご存じね。

【堀】:今回大断捨離を決行して、こんなに大胆に取り組めたのは、がんを経験して「過去を引きずっていたら前には進めない」と学んだおかげだなと実感しました。

【ひでこ】:2019年に舌がんの手術をして、舌を6割切除されたそうですね。

【堀】:はい。代わりに太ももの組織を舌根に移植して。そのため私は、手術前と同じように声を出すことはできません。でも「昔の自分」の視点から今の自分を見てしまうと、悲観しかない。だから「今の自分」を基準にして、実りのある生き方をめざそうと決めました。

【ひでこ】:断捨離は、自分軸で生きるためのお稽古。自分軸とはまさに「今の自分」のことで、そこを起点に未来を見ることが大切です。過去を引きずるのは、電車のボックス席で進行方向に背を向けて座って、通り過ぎた景色ばかり見ているようなもの。

【堀】:私はこの先の景色ばかり見ようとするタイプ(笑)。術後からリハビリとボイストレーニングを必死で続けて、今ではこうして会話もできるし、歌えるまでにもなりました。病気を経験して失った物はあるけれど、「思いを伝えたい、歌いたい」という気持ちはむしろ強くなった気がします。今年はデビュー40周年。単独ライブを目標に、毎日発声と唄のトレーニングをしています。

【ひでこ】:1つ捨てれば、必ず新しい物がやってくるのが断捨離のセオリー。堀さんは過去の自分を断捨離したからこそ、今の自分の思いを伝える、歌う、という新たな希望が手に入ったのでしょうね。そういえば堀さんは、アイドル時代の栄光グッズもたくさんお持ちだっただろうけど、今もお持ちなの?

【堀】:はい。でも残しているのは1つだけなんですよ。「真夏の少女」という2曲目のシングルの衣装です。

【ひでこ】:ほぉ。その衣装は堀さんの思い出の物なのですね。

【堀】:いいえ。単純に、保存状態がいちばんよかっただけです(笑)。

【ひでこ】:その執着心のなさ、お見事です!(拍手)

お互いに依存しない親子関係のために、親ができることは?

【ひでこ】:堀さんは2回の離婚を経て、現在の旦那さまの連れ子を含む7人のお子さんになられた。「家族はこうあるべき」という世間の価値観を塗り替えてきたのですね。そこにはどんな思いがあったのかしら?

【堀】:私の考えでは、家族は個人の集合体。人生は一度きりなんだし、子どもたちには自分の幸せを大事にしてほしいんです。いずれは親の面倒を見ないと」なんてプレッシャーを背負いながら生きてほしくない。それには親の割り切りと子どもの精神的な自立が必要なので、私は子どもがある程度大きくなってからは、あえて少し距離を置いて見守るように心がけてきました。いつまでも手をかけてしまうと、子どもが親への執着を手放せなくなってしまうかもしれない。だから、つないだ手を、ときには親の側から離してあげることも大切なんじゃないかなって思うんですよね。

【ひでこ】:親子といえども、基本は1人の人間どうし。それは血がつながっていてもいなくても同じですよね。世の中には血縁を特別視する傾向があるけれど、血縁へのこだわりは断捨離すべきもののひとつだと私は思うわ。

【堀】:同感です!そもそも、夫婦は血縁ではないし。「母だから」「子だから」という理由で義務や責任を負うのではなく、家族の一員としてお互い協力し、困っているときは助け合う。それが家族生活という名の「同居生活」だと思っています。

【ひでこ】:断捨離は人生を輝かせるための行動哲学。それを自分に根づかせるのって決して簡単なことではないんですよ。でも堀さんはしっかり根づかせていて、幹も太いし実もたくさん!断捨離を習慣にし、人生の荒波を乗り越えるたびに自分と向き合い、取捨選択をしてきた賜物だと思います。「苦労の多い人生ね」なんて意地悪く言ってくる人もいるだろうけど、それは気にならない?

【堀】:全然!助言はもちろん聞くけれど、雑音は断捨離しています(笑)。

【ひでこ】:(笑)。今日の結論。堀さんは一流のダンシャリアンです!

 
 

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