2021.11.02 [更新/お知らせ]
「若手ならではの才能の発掘ができる瞬間に立ち会えるのは面白い」(行定勲監督)ー10/30(土)Amazon Prime Video テイクワン賞ファイナリスト作品上映

takeone_Award

©2021 TIFF

 
Amazon Prime Video テイクワン賞
日時:2021月10月30日(土)10:30~
場所:シャンテSC1
登壇者:行定勲監督、児玉隆志さん(プライム・ビデオジャパン カントリーマネージャー)
司会:市山尚三(TIFFプログラミング・ディレクター)
 
市山PD:本日のゲストをご紹介します。映画監督の行定勲さんとプライム・ビデオジャパン カントリーマネージャーの児玉隆志さんです。
行定監督にはAmazon Prime Videoテイクワン賞の審査員長を務めていただいています。
 
行定勲監督(以下、行定監督):今回はじめて新設されたテイクワン賞という新しい賞レースに審査員長として選出されたことに非常に感謝するとともに光栄に思っています。これまでたくさんの審査員をしているんですけれど、今年だけでも短編の審査って3つ目なんです。ここ(TIFF)で選ばれた作品はここらしい、選出している人たちがかなり気合の入ったものを、審査員たちに議論をさせるためにこの選出された作品があるんだなと思わせられるような、結構わくわくするような作品ばかりで、これから裏でどんな審査会になるのかっていうのが今からすごく楽しみにしています。そういう新しい賞に参加できることを非常にうれしく思っています。よろしくお願いします。
 
市山PD:ありがとうございます。
児玉さんから一言、そして今回このAmazon Prime Videoテイクワン賞を設立された趣旨をお聞かせください。
 
児玉隆志さん(プライム・ビデオジャパン カントリーマネージャー)(以下、児玉さん):皆さんこんにちは。Amazon Prime Videoで日本の責任者をやっております、児玉隆志と申します。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
我々が東京国際映画祭をご協力させていただいて、このような賞をサポートさせていただけること光栄に思っております。
我々として、これをサポートさせていただく目的、大きな意義は二つありまして、やはり出会いが欲しいんですね。Amazon Prime Videoももう6年以上日本でやっていますけれど、まだまだオリジナル作品が足りてないと思っています。特に映画というのは日本の皆さん、本当に好きで一番観られてるカテゴリーだと思います。なので、そういった作品をこれからどんどん増やしていく意味で新たな才能にめぐり合いたい。
そしてグローバルでプライムビデオとしてはホームフォータレントというのを目標にしています。これはクリエイターの方々、監督の方々とか演者さんの方々に、まず配信系にかぎらずメディアのどこと仕事するかとなったときに、プライムビデオがいいんじゃないかなと最初に思っていただけるような存在になりたいなと考えています。そういう時に行定さんのような方とはもちろんパートナーシップを組んでどんどんやりたいんですけれども、新しい才能にも出会いたい。日本においてTIFFという素晴らしいイベントに協賛させていただくことで、そういった出会いの場となればいいなと思って今回の賞に賛同させていただきました。
二つ目の目的は、これはもう応援です。コロナの期間、映画館が閉まったりがありました。インディーズ系だったり助監督系だったり、映画監督になる道というのは色んなところから出ておられると思うのですが、活躍の場が限られてしまったと思うんですね。そういったときに少しでも表現の場といったものがご提供できればいいなと思って今回賛同させていただきました。
 
市山PD:宮原拓也監督の『EVEN』、金子雅和監督の『水虎』、古川原壮志監督の『なぎさ』、キム・ユンス監督の『日曜日、凪』、もうひとつ古川原壮志監督の『Birdland』、そして瑚海(さんごうみ)みどりさんの『橋の下で』、こだかさりさんの『窓越しのキス』、小田香さんの『夜行列車』、節田朋一郎監督の『必要と不必要』。この9作品が最後のファイナリストの作品に残りました。
こちらの審査員会での決定によりTIFFのクロージングの11月8日の授賞式の時に最優秀作品が発表されることになっています。
児玉さん、最優秀作品の方には賞金が100万円が授与されますが、それ以外にも特典がありますか。
 
児玉さん:アマゾンではこれからオリジナルの作品も作っていきたいと考えておりますので、一緒に開発して企画して、それが日本のお客様、世界のお客様に非常に求められているということであるならば、実際に映画にする挑戦をしていただきたいなと思っています。
 
市山PD:行定さん、賞金を出して奨励しますというだけでなく、企画提案も権利が与えられるというのはどうでしょう。
 
行定監督:その時点で僕と一緒ですからね。僕もアマゾンさんに提案して、まだ撮ってない状態ですから。僕より早く撮られるんじゃないかなという状況にありますよね(笑)
もうすでにライバルですね。
ライバルというか、(今回のファイナリストの)新しい作家たちっていうのは、劇場公開はされていないけど、ほぼプロなんですよね。自分がこれを撮りたいという信念のもとに撮られている作品が多いですね。そういう作品っていうのはある種、自由で純度の高い作品性があるっていうところが面白いところなんです。そういう部分があることには嫉妬しますね。やはり若手の人ならではの才能の発掘ができるっていう瞬間に立ち会えるのは面白いなと思います。
 
市山PD:それでは賞から少し離れるのですが、行定監督とアマゾンの関係についてお聞きしたいと思います。去年、『劇場』という行定監督が監督された映画がアマゾンプライムで配信されましたが、このあたりの経緯を教えていただけますか。まず児玉さんからお願いいたします。
 
児玉さん:はい。去年、行定監督の『劇場』という素晴らしい作品を、ほぼ劇場と同じウィンドウで配信させていただきました。
きっかけはもう本当に助け合いだったなあという風に考えています。突然、コロナ禍で劇場が閉まってしまって、行定さんが出されようとしていた作品が思ったような形の規模で出せなくなってしまった。
一方で、我々も、常に新しい映画作品をライセンスしていただいたり、作ったりしている訳なんですけども、コロナのせいで供給がすごく滞るんですね。製作もすごく延びて、来るはずだったオリジナル作品(の配信)が先の方になってしまったり、ライセンスしていただけるはずだった作品が随分先になったりだとか。そういう意味では、お客様に常にフレッシュな作品をお届けしたい、より良い作品をお届けしたいというところで、双方非常に良い助け合いができたのかなと思ってます。
最初に、日本の作品を全世界にドンっと一気に出して、本当に多くの方に観て楽しんでいただけた作品だったという風に思っています。本当に感謝しかありません。
 
行定監督:もうずいぶん前のことのように感じますけど。コロナ禍において劇場が閉鎖されるという想像もつかないことに直面したわけですが、そのときにどう自分の作品が観られるかということをすごく考えるきっかけになった作品になりました。
タイトルが『劇場』というぐらいですから、映画館で観ていただくことを前提にラストシーンとかも作っているような作品だったので、非常に困惑している部分もありました。ただ、今、この作品をいい形で観客が観たいというときに届けないと、きっと自分が思ったような上映でなくなる、映画館は続くし、映画祭も続くわけなので、劇場で観ていただくきっかけはどこかで作ればいいということもありました。アマゾンプライムさんには非常に無理を言って、配信が生業なので配信だけということが前提だったはずなのですが、同日の劇場公開を許可していただきました。そこにはすごく大きな意味があったかなと思っています。
僕個人としては、配信作品であれ、やはり劇場でかかることを映画として考えているんですね。ずっとそうやって作ってきたので、劇場で観ていただくことは非常に重要で、特に映画祭の意味がすごくこれから大きく関わってくるのだろうと思います。
スクリーンで観るということと、自分だけの環境で観るのとは違うと思います。作った我々にとっては、観ていただくことが前提だった。コロナ禍において、それは非常に重要だったので、この選択をしたのですが、そういう意味では配信プラットフォームの会社と一緒に組んで、作品を作って、劇場公開ということを並行してやれないかということが常に議題になるんですよね。これからは必要なことだと思うし、劇場も、日本の映画の考え方、日本映画での興行という考え方も変わっていかなければならない。いつ変えるかというきっかけは中々ないのですが、世界的に言えば、それは並行して行われることなんだと。それでも今日のように劇場に足を運んでくださる方々はたくさんいるわけですよね。映画館でしか味わえないことを訴えかけていきたいし、作品の持つ力は配信でも失われない。これが両立するかどうかということがすごく問われたなと思いました。
そういう意味では非常にいい経験をさせていただいて、全世界配信という、240 ヵ国以上のところに、まさか僕の映画が、この国の人たちに観てもらうことなんてこれまで一度なかったところまで同じ日に届くというのは、これは夢のようなことですよね。そういう意味では『劇場』という作品は挑戦できる作品だったなと思いました。
 
市山PD:児玉さんは、行定監督がおっしゃられた配信と同時に劇場公開もという件についてご意見をお聞かせいただけますか?
 
児玉さん:『劇場』という作品もそうでしたし、今年は庵野監督の『シン・エヴァンゲリオン』もありました。この2つを同じような規模で全世界でやらせていただいて思ったのですが、劇場に先に出すことで配信がネガティブになることはほとんどないなと正直思っています。
劇場の方々には、配信に近いタイミングで出すことにまだリスクがあると考えている方もいらっしゃると思います。まだまだデータを溜めなければいけないのかもしれませんが、いろんな実験をするのが大事だと思います。これはこれでなければならない、という固定するようなことは、我々は全く考えていません。本当に1人でも多くのお客さまに観ていただければ、それが一番いいことです。それが劇場の後でも先でも同時でも、フレキシブルに、柔軟に、考えていきたいと思っています。
 
市山PD:『劇場』の公開のときには、ユーロスペースやいろいろな所で上映されましたが、あの映画館は配信同時でも全然問題なかったのですか?
 
行定監督:そうですね。ユーロスペースは駆け込んだ形ですが、新作と同じように、作品をまず観てもらって、「これはうちでかけなければいけないね」と言っていただけたということが大きかったですね。全国で20スクリーンと限定したので、僕はコロナ禍であっても舞台挨拶にまわらせていただき、いろいろとお叱りもあるかと思いながら、コロナ禍においても劇場に足を運んでくださる人たちを大切にしなければならないと思いました。
そういう意味では快く、むしろそれ以上の声があった。「うちにかけさせてくれ」と。最初に20スクリーンとお約束したので、それ以上はできなかったのですが、本当にありがたいことで、全国からそれの3倍ぐらいの「うちで上映したいんだけど」という話をいただけたので、そういう意味では、劇場側がこの作品を見せたいという思いの中で動いてくださるので、すごくありがたかったです。
 
市山PD:去年の7月は、映画館は開いていたけど、コロナを警戒している時期でしたね。
 
行定監督:そうですね。旧作をやって、あとは座席を50%以下にするっていう状況ではあったんですね。
 
市山PD:皆さん『劇場』はご覧になったでしょうか。アマゾンプライムでも配信中です。素晴らしい映画なのでもし観ていない方がいらっしゃったら、ぜひ観ていただければと思います。
試写で観させていただいて、その時は映画館で、全国で、もっと大きく公開しますというお話を聞いていました。そこから4月以降にコロナが広まったということだったと思います。
 
行定監督:そうですね。観ていただいて、その後香港国際映画祭のクロージング作品に選出されたんですけど、それも中止になりました。
ことごとく映画祭が、チョンジュ(全州国際映画祭)とか、決まってた映画祭がダメになってしまってという状況でしたね。劇場で、スクリーンで観た、という人がすごく少なくなってしまいました。これからも、何があっても劇場でかけてくれって言っていこうとは思っています。
 
市山PD:今度は将来の話です。さっき行定監督が少し提案してらっしゃるようなことも伺いましたけど、このAmazon Prime Video と製作する可能性もあるという感じですか?
 
行定監督:めちゃくちゃありますよ(笑)。提案して、なかなかまだ進んでおらず、実現していないですね。3つくらいかな。興味はいただいています。
 
市山PD:それはいわゆる映画スタイルですか? シリーズものですか?
 
行定監督:映画スタイルですね。今のところ、3つとも映画スタイルです。
 
市山PD:シリーズものを作るというのは今のところは考えていらっしゃらないですか?
 
行定監督:シリーズものは、ずっと書いてるんです。非常にへんてこりんなものを書いていてですね。それはまだアマゾンさんには提案していないです。ちょっとどうかなあとは思いますが。あの、今までにない感じなので。
 
児玉さん:ぜひ聞かせてください。
 
行定監督:すごく変ですけど、これは実現したら本当にやりたい作品なんです。でもお金がかかっちゃうんじゃないって言われちゃいそうなところなんですよね。
 
市山PD:児玉さんは日本でこれから作られるとおっしゃっていましたけど、劇・映画スタイルのものと、シリーズものは両方やられる予定ですか? それとも、どちらかが比重が多いんでしょうか?
 
児玉さん:両方です。本当に両方です。アメリカとかのドラマって10シーズンくらい続くじゃないですか。ただ、日本の方々の視聴スタイルとしては、それはちょっと無理があるみたいですね。ですので、テレビシリーズにしても何十話ということではなくて、比較的もう少し短めの方が良いかなと。ただ、映画とテレビシリーズというのは両方目指していきたいと思っています。
 
行定監督:じゃあ僕のはだめですね(笑)。
 
市山PD:あ、そうなんですか。何シーズン目に入ってます?
 
行定監督:シナリオがね、3シーズンくらいあるなあと思って。いつ終わるんだろう、この作品っていうことだったので。短い方がいいですね。
 
児玉さん:できれば短い方が良いですけど、でもシーズンごとに一旦完結するスタイルだったらアメリカ的に、第1シーズン良ければ第2シーズンっていうのはあるかと思いますので。ぜひちょっと聞かせていただければと。
 
行定監督:そうですね。
 
市山PD:最後に若い監督も観に来ていらっしゃるかもしれないので、これから映画にデビューする新人監督の方々へのメッセージがあれば。児玉さんから、一言いただけますか。
 
児玉さん:そうですね。クリエイターの時代が本当に来たなと思っています。配信って、先ほど監督もおっしゃられていたように、同じ日に全世界に一気にもっていけるんですね。一つ一つの国で交渉する必要もなくなってきましたし、一つ一つの国で放送局とか映画館だとか押さえなくても世界中の地域に、もちろんダビングとか字幕は付けたりする必要があるんですけど、一気にいける。これは、すごいチャンスだなと思っています。今まで国内だけの市場だった。もちろん国内の市場のファンを捕まえなければ、そこのファンを満足させなければいけないのが第一ですけれども、非常にわかりやすい作品であれば国境を越えて簡単に海外にファンが作れる時代になったと思っています。
今、日本のコンテンツ輸出の状況って8割ぐらいアニメだと思います。実写ってそれに比べてまだ全然遅れているんですけど、これだけ露出をしやすくなった時代においては実写のほうがこれからどんどんヒット作品が出て海外で活躍される、求められる作品を創れる方が増えるんじゃないかと思って、すごいチャンスだと思って、頑張っていただきたいなと思います。是非いい作品を創ってください。
 
市山PD:ありがとうございました。行定監督、お願いします。
 
行定監督:児玉さんがおっしゃったみたいに、知られるスピードってすごく早くなったって思うんですね。今度は知るスピードっていうか、観客の問題になってくるんだろうなと思って。作品がありすぎて何を選んでいいのか、選択していいのかわからない状況がある中で、知られるスピードだけが速くなって、その知られるスピードに乗った監督たちっていうのはどんどん次から次と需要がある。その格差が生まれないような状況が作れたらいいなと思ってます。丹念にいい作品を地味だけと作ってる人たちを、発見していかなければいけない。映画祭はそこに焦点が合わされると、その映画祭っていうのは価値のある映画祭になっていくと。
このテイクワン賞っていうのを僕も市山さんから電話があって、わけわからず市山さんの話だから面白そうだなって引き受けたんです。今はもう胡坐かいて作ってる監督ばかりじゃないと思うんですけど、ベテランから中堅の監督たちが、結構触発されるようなものが選出されてるんですよね。これが知らずと自分たちの力だけで生み出されてることに、僕自身もすごく触発されて。これはこういう作品とちゃんと向き合わなきゃいけないと思わされたんです。そういう意味では知ること、映画祭はその最たるもので、知らなかった作品を敢えて観る。有名な人気のある誰々が出てるっていう見方ではなくて、ふと時間が空いた時にその作品と出会ったことで、非常に世界が広がるっていうことがあるので、この賞もその一助になればいいなと、これからも続いていってほしいなと思ってます。
多分ここからすごい才能が、数年後には、あの時賞をあげなきゃよかったなというやつがいたりするんだろうなという感じがもうすでにしますので、非常に心して審査したいなと(笑)。
それは潰すという意味では、もちろんなくて(笑)。心して向き合いたいなというふうに思っております。
 
 
Amazon Prime Video テイクワン賞は、11月8日のクロージングセレモニーにて受賞者を発表します。

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