生活保護を受けられる条件

平成31年2月に厚生労働省より報告された生活保護の被保護者調査によると、生活保護を受けている方は2,089,641人います。

現状の収入では生活が困難になった方や、病気で働けなくなった方は生活保護が必要となる場合もあります。

結論から言うと、生活保護の条件は以下の4つです。

  • 世帯収入が最低生活費を下回る
  • 家族などの身内から支援を受けられない
  • 病気やケガによって働けない
  • 物件や車などの資産を持っていない

    上記に該当する方は、生活保護への申込が可能です。

    当記事では、生活保護が受けられる条件や申込手順などについて解説します。

    また、生活保護で受け取れる支給金額についても解説します。

    生活保護の受給を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

    生活保護は4つの条件に該当する人なら申請できる

    生活保護の申請方法

    生活保護制度を申請するには、4つの条件を満たす必要があります。

    条件の内容は、以下の通りです。

    • 世帯収入が最低生活費を下回る
    • 家族などの身内から支援を受けられない
    • 病気やケガによって働けない
    • 物件や車などの資産を持っていない

      すべての条件を満たす人のみが、生活保護を申し込みできます。

      一方、「お金が足りないから」というだけの理由では、生活保護を受給できません。

      最低限の生活を維持できる資産や能力がある場合は、生活保護の対象外だからです。

      生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。

      引用元:厚生労働省 |生活保護制度

      病気やケガなどに働けなくなった場合や、最低限の生活を維持するための収入が確保できない場合に生活保護を受けられます。

      生活保護を受けるか考えている方は、自分が申込条件に該当しているか確認してみましょう。

      世帯収入が最低生活費を下回る人は生活保護の受給対象

      世帯収入が最低生活費を下回る人は、生活保護を申請できます。

      最低生活費とは、日本国憲法第25条で保障される「健康で文化的な最低限度の生活」を送るために必要な費用として、厚生労働省が毎年算定する生活費のことです。

      たとえば東京都内で一人暮らしをしている場合、最低生活費は13万円に指定されます。

      月収13万円以下の給与振込履歴

      申請者の世帯月収が13万円以下であれば、生活保護の申請が可能です。

      最低生活費は住んでいる場所や、世帯内で生活している人数によって変動します。

      最低生活費を算出する計算式は、以下の通りです。

      (最低生活費)=(生活扶助基準)+(生活扶助本体日の経過的加算)+(加算額)+(その他扶助)

      引用元: 生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和3年4月)

      生活保護の申請条件が満たせているか不安な人は、よく確認しておいてください。

      家族などの身内から支援を受けられない人も申込可能

      家族などの身内から支援を受けられない方も、生活保護を受けられます。

      通常、親族から経済支援を受けられる場合は、生活保護の対象外です。

      扶養義務者から支援を受けている人も、なんらかの事情がある場合は生活保護を申請できます。

      実際に生活保護法第4条によると、以下の通り定められています。

      (保護の補足性)
      2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
      3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

      引用元:e-gov法令検索|生活保護法

      親族から生活するのに十分な支援を受けている方は、生活保護を利用できません。

      ただし、収入が最低生活に満たない場合は保護の申請が可能です。

      自分の収入が最低生活費に満たしているか確認したい場合は、最低生活費の算出方法を確認しましょう。

      病気やケガで働けない人も生活保護の対象となる

      傷病手当金支給申請書

      生活保護は収入が少ない人だけでなく、病気やケガなどの理由で働けない人も申請できます。

      ただし病気やケガで働けない人が生活保護を申請するには、まずは別の制度を利用するのが必要条件です。

      病気やケガなどが発生した時は、以下の制度が利用できます。

      例えば、病気やケガで会社を休んだ方や就業できない方は傷病手当金が利用できます。

      ただし生活保護は、最低生活費を手に入れるための最終手段です。

      他の制度で最低生活費を確保できる場合、生活保護による支援は受けられません。

      上記の制度を利用しても最低生活費が確保できない場合は、生活保護の申請を検討してみてください。

      物件や車などの資産を持つ人は受給の対象外となる

      物件や車などの資産的に価値のあるものを所有している場合は、生活保護を申請できません。

      資産価値がある品物に該当するものは、以下の通りです。

      • 物件・土地
      • 自動車・バイク
      • 宝石・ブランド品
      • パソコンなど

      生活保護は、資産を売っても生活費が確保できない場合にのみ利用できます。

      自宅に資産価値のある品物が一つでもあると、生活保護を申請するのは難しいです。

      特に物件などの資産価値が高いものは、審査で不利な材料となります。

      これから生活保護を申請する人は、資産価値が高い品物の売却手続きを進めておいてください。

      資産をどうしても残したい方は、生活保護とは違う方法でお金借りるのがおすすめです。

      生活保護は各地域の福祉事務所で申し込める

      福祉事務所の一覧

      生活保護は、全国各地に存在する福祉事務所で相談・申請できます。

      社会福祉事務所とは、社会福祉法第14条に規定されている「福祉に関する事務所」のことです。

      福祉に定める援護や、育成または更生の措置に関する事務を司る第一線の社会福祉行政機関となっています。

      福祉事務所は、都道府県および市には設置が義務付けられている施設です。

      しかし町村での設置は任意となっているため、地域によっては存在しない場合もあります。

      生活保護を申請する際は、まず自分が住む地域に存在する福祉事務所を確認してみてください。

      福祉事務所の設置数は、厚生労働省で確認可能です。

      生活保護を申請したい人は、必ず福祉事務所の場所を把握しておきましょう。

      申請時は現在の生活状況が証明できる書類を提出すべき

      生活保護を申請する時は、現在の生活状況や収入状況が証明できる書類を提出します。

      申請時に用意しておくべき書類は、以下の5つです。

      • 本人確認書類
      • 通帳
      • 給与明細
      • 年金証書
      • 賃貸借契約書

        書類提出は、生活費が不足している事実を証明するのに必須です。

        生活保護を申し込んだ時は、提出した書類を参考にさまざまな調査が実行されます。

          現状を把握できる書類の提出が遅れると、審査時間もその分延びてしまう可能性が高いです。

          申請時から準備しておけば、迅速に手続きを進められます。

          なるべく早く生活保護を受けたい人は、申請時から必要書類を準備しておきましょう。

          生活保護の申請から受給までには最長でも14日程かかる

          生活保護を申請してから受給までにかかる日数は、平均で14日程です。

          ただし調査中に問題が発生すると、需給までに1ヵ月以上かかる場合もあります。

          手続きにこれだけの時間がかかるのは、申込時に入念な調査が実施されるためです。

          生活保護を申し込んだ時は、以下の調査が実施されます。

          1. 生活状況等を把握するための実地調査
          2. 預貯金、保険、不動産等の資産調査
          3. 扶養義務者による扶養の可否の調査
          4. 年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
          5. 就労の可能性の調査

            どんなに手早く対応しても、調査が完了しない限り生活保護は受けられません。

            人によっては結果を待つ間、生活費が底をついてしまう場合もあるはずです。

            もし生活費が不足しそうな時は、「臨時特例つなぎ資金貸付」の申請も検討しておいてください。

            住居のない離職者であり、かつ以下の2つの要件を満たしている場合には申込可能です。

            • 公的給付制度を申請しているが給付開始まで生活費の維持が困難
            • 自分名義の金融機関の口座を有している

            連帯保証人不要かつ無利子で、10万円以内の貸付が受けられます。

            調査結果が出るまでに生活費がなくなりそうな時は、厚生労働省の窓口に相談してみましょう。

            生活保護の受給額は簡単な計算で算出できる

            生活保護でどれくらいの金額を受給してもらえるのかが気になる方もいると思います。

            生活保護受給額は以下の計算式で算出できます。

            (生活保護受給額)=(最低生活費)-(世帯収入)-(資産)

            不動産や、車などの資産があれば生活保護受給額が少なくなる、または受けられなくなるため注意しましょう。

            受給額の計算方法がわかれば、どのくらいの金額を支給してもらえるかを把握できます。

            以下で、生活保護受給額の決まり方や計算方法などについて詳しく解説していきます。

            最低生活費から世帯収入・資産を引いた数値が生活保護の受給額

            生活保護でもらえる受給額は、最低生活費から世帯収入・資産を引いた数値です。

            式にすると以下の通りです。

            (生活保護受給額)=(最低生活費)-(世帯収入)-(資産)

            世帯収入とは、生計をともにしている家族全員の所得合計のことです。

            夫婦2人暮らしで共働きだとすると、夫婦それぞれの年収から控除額を差し引き、それを合計した数値が世帯収入となります。

            また、資産とは「最低限度の生活を手に入れるために利用可能なもの」のことを指しています。

            資産には家や土地、車や預金通帳などがあります。

            資産がある場合は売却すると生活費に充てられるため、生活保護を受けられない可能性もあります。

            つまり、世帯収入と資産の合計が最低生活費を上回っている場合には生活保護を受けることができません。

            日本国憲法第25条の理念にもある通り、最低限度の生活を営めない場合のみ、生活保護を受けられると認識しておきましょう。

            8つの扶助を合計した金額が最低生活費となる

            生活保護受給額の計算時に「最低生活費」が必要になります。

            「最低生活費」は以下の計算式で算出できます。

            最低生活費=生活扶助+住宅扶助

            この最低生活費ですが、基本的には以下の8つの扶助の合計となっています。

            • 日常生活に必要な費用
            • アパート等の家賃
            • 義務教育を受けるために必要な学用品等
            • 医療サービスの費用
            • 介護サービスの費用
            • 出産費用
            • 就労に必要な技能の修得等にかかる費用
            • 葬祭費用

            最低生活費には医療費や介護費なども含まれます。

            もし介護や出産に必要な資金が足りなければ、その費用は生活保護で賄うことが可能です。

            生活保護を受けているからといって、治療や介護などが受けられなくなる訳ではありません。

            生活保護の受給額は級地や世帯人数などに合わせて変動する

            生活保護によって受給できる資金の額は、申込者の住む場所や世帯人数によって変動します。

            世帯内に住む人の数が多いと、生活保護の受給額も多くなります。

            また受給額を算出する際は、住んでいる場所の「級地」も重視されます。

            級地制度とは、物価や生活水準をもとに地域ごとの生活保護の受給額を設定した制度です。

            政府は申込者の級地や世帯人数を把握し、受給額を決定しています。

            具体的に自分が住んでいる地域がどの級地に分類されるかを確認してみましょう。

            生活保護に関する確認事項5つ

            生活保護は申請に多くの条件があるため、「自分は生活保護の対象外だ」と決め付けている方は多いと思います。

            この章では、生活保護についてあまり知られていない情報を紹介していきます。

            生活保護における細かい部分を知っておくことで、生活保護を上手く活用することができます。

            生活保護に関する豆知識は以下の通りです。

            • 年金受給者でも生活保護は申し込める
            • 母子家庭・父子家庭の人も状況によっては申請可能
            • 受給条件の「病気」には精神疾患も含まれる
            • 外国人は永住権を持つ人のみが受給対象となる
            • 国の給付金は収入ではないため生活保護に影響しない

              年金受給者でも生活保護は申し込める

              年金や他の補助制度を利用しても最低生活費に満たない場合、年金受給者でも生活保護の申請ができます。

              例えば、最低生活費が18万円で、年金で8万円を受け取ってる場合、生活保護に申込むことができます。

              生活保護を申し込んで審査に通過することができれば、最低生活費に満たない部分の10万円を受給してもらえます。

              病院などにいく機会が増えて、最低生活費が増えることがあります。

              その際は、生活保護も併用できることを頭に入れておきましょう。

              年金を受け取り、最低生活費に到達している場合は生活保護に申込みできないため注意しましょう。

              母子家庭・父子家庭の人も状況によっては申請可能

              母子家庭・父子家庭であっても、生活保護を受けることは可能です。

              生活保護は、国民の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障する制度となっています。

              母子家庭・父子家庭で生活する方も、条件さえ満たしていれば生活保護の申請が可能です。

              ただし母子家庭・父子家庭は生活保護より、母子・父子・寡婦福祉資金貸付金の申請を進められる場合が多いです。

              母子・父子・寡婦福祉資金貸付金の概要は以下の通りです。

              母子・父子・寡婦福祉資金貸付金は、ひとり親家庭(20歳未満の者(以下「児童」という。)を扶養している家庭)及び寡婦の方(配偶者のない女子で、かつて配偶者のない女子として児童を扶養していたことのある方)等の経済的自立を図るために必要な資金(お子さんの進学、親自身の技能習得や転宅など)を貸し付ける制度です。

              参考:大阪府|ひとり親家庭を支援する貸付制度

              対象者と制度についてまとめましたので、母子家庭・父子家庭の方は参考にしてください。

              対象者 母子・父子寡婦福祉資金貸付金 一覧
              母子家庭の母
              父子家庭の父
              寡婦
              40歳以上の配偶者のない女子であって母子家庭の母及び寡婦以外の者
              母子家庭の児童等
              父子家庭の児童等
              父母のない児童
              寡婦に扶養されている20歳以上の子
              修学資金、修業資金貸付中の親が死亡した時の当該資金の貸付を受けている児童及び20歳以上の子
              技能習得資金
              生活資金
              医療介護資金
              住宅資金
              転宅資金
              結婚資金
              就職支度資金
              修業資金
              修学資金
              就学支度資金

              受給条件の「病気」には精神疾患も含まれる

              精神疾患は生活保護受給条件の「病気」に含まれるため、生活保護に申し込むことができます。

              精神疾患になってしまい、働きたくても働けないという方もいると思います。

              身体的には働けるわけなので、生活保護の対象外になっていると思ってしまいがちです。

              しかし、受給条件にある「病気」には精神疾患も含まれています。

              精神疾患によって働けず、収入が最低生活費に満たなかったとしたら、身体的な病気と同じように捉えて、生活保護への申請をすることができます。

              また、たいていの精神疾患の場合には障害年金がもらえます。

              生活保護よりも障害年金を優先するべきなので、障害年金を受けた上でも最低生活費に到達しなかった場合に、生活保護を受けるようにしましょう。

              外国人は永住権を持つ人のみが受給対象となる

              生活保護は、日本国憲法第25条において「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定しています。

              よって、生活保護の対象となるのは基本的に日本国民のみです。

              しかしながら、国際道義上・人道上の観点から、正しく日本に在住しており、永住・定住などの在留資格をもっている外国人に対しては、生活保護の対象内としています。

              具体的な条件は以下のとおりです。

              1.出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)別表第2の在留資格を有する者(永住者、定住者、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等)
              2.日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の特別永住者(在日韓国人、在日朝鮮人、在日台湾人)
              3.入管法上の認定難民

              引用元:第12回 社会保障審議会福祉部会 生活保護制度の在り方に関する専門委員会

              日本国籍でなくても、永住者、定住者の方は生活保護を受けられます。

              国の給付金は収入ではないため生活保護に影響しない

              「国からの給付金を受け取ってしまうと、収入が増えて生活保護を受けられない」と心配になっている方もいると思います。

              結論から言うと、国の給付金は収入に分類されません。

              そのため、生活保護に影響を与えず給付金を受け取れます。

              北海道の「新型コロナウイルス感染症関係の給付金の生活保護制度上の取扱いについて」には以下のように記載されています。

              特定定額給付金及び令和2年度子育て世帯への臨時特別給付金:基本的に収入認定しない。
              ひとり親世帯臨時特別給付金:当該給付金「基本給付」については、収入認定しない。

              参照元:北海道/福祉局地域福祉課

              給付金は収入認定されないので、生活保護に対して影響を及ぼさないことがわかります。

              自分に当てはまる給付金がある場合は、生活保護に影響があるか調べたうえで受けるようにしましょう。

              「まとめ」生活保護についてわからないことは相談を

              生活保護は国民全員の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度です。

              生活保護を受けるためには、以下の4つの条件を満たす必要があります。

              • 世帯全体の月収が13万円以下である
              • 家族などの身内から支援を受けられない
              • 病気やケガによって働けない
              • 物件や車などの資産を持っていない

                申し込みは、福祉事務所に行き行う必要があります。

                福祉事務所では生活保護に関する相談も受け付けているので、わからないことや困ったことがあれば最寄りの福祉事務所を訪れるようにしましょう。

                生活保護の申請を考えている人は、自分が住んでいる地域に福祉事務所があるか確認しておいてください。