道ばたに見る春の草たち 広瀬重夫
 チチコグサ・ハハコグサのなかま

写真38 チチコグサ(左)とハハコグサ(右)
5月,垂水区.


■チチコグサとハハコグサ
 学校の中庭の遊び場で見かけました.草の姿,形,そして名前までよく似ています.そろって同じ場所で見つかったのが珍しくて写真にしました(写真38).これを見てみなさんは,どこに違いを見つけましたか?

 チチコグサのロゼット葉(写真39),頭状花がまばらに残り,その近くにはたくさんの細長い葉のロゼットが見られます.



チチコグサとハハコグサを比べる 写真39 チチコグサのロゼット葉
5月,灘区.
生育 横にはう茎 花時のロゼット葉 葉の形 頭状花の色
チチコグサ 多年生 ある ある 幅のある線形 黄緑色
ハハコグサ 越年生 ない ない 長いしゃもじ形 黄色

<用語説明>
多年草(生):地上部が枯れても地下に残った根茎から毎年芽を出して生育を続ける.
越年草(生):秋頃芽を出し,冬を越して春に花,夏には枯れる.



写真40 ウラジロチチコグサ
5月,灘区.
写真41 タチチチコグサ
5月,須磨区.


■ウラジロチチコグサ
 最近,公園や校庭でよく見かけるようになった帰化植物(写真40).人の踏みつけに耐えられる草のひとつで,地上部のあるなしにかかわらず,いつでもロゼット葉が見られます.

■タチチチコグサ
 チチコグサに似ています(写真41)が,茎の上の方の頭状花のつけ方が違うのを写真で比べましょう.


写真42 ウスベニチチコグサ
5月,須磨区.
写真43 セイタカハハコグサ
4月,灘区.


■ウスベニチチコグサ
 タチチチコグサに似ていますが,頭状花のつけ方や色に注目して違いを見つけましょう.

■セイタカハハコグサ
 さきのハハコグサの先祖にあたる植物で,とてもよく似ています.

 他にチチコグサモドキという,チチコグサに似た植物がありますが,こちらは葉がヘラ形です.


外国からやってきたチチコグサのなかま
生育 花時のロゼット葉 葉の形 葉先 葉の綿毛 花の色 原産地
ウラジロチチコグサ 多年生 ある 長いへら形 円味 裏に特に多い 淡かっ色 南アメリカ
タチチチコグサ 越年生 ない 長いへら形 少しとがる 裏に多い 淡かっ色 熱帯アメリカ
ウスベニチチコグサ 越年生 ない 長いへら形 少しとがる 裏に特に多い 紅色 熱帯アメリカ
セイタカハハコグサ 越年生 ない 線形 少しとがる 両面に多い 黄色 ヨーロッパ
チチコグサモドキ 越年生 ない へら形 円味 裏に多い 淡かっ色 北アメリカ

※日本に古くからはいっていた,ハハコグサとチチコグサなどの在来種に対し,上の表のなかまは,大正,昭和の時代,とくに第二次世界大戦後に日本にはいってきた帰化種です.見分け方は大人でも迷うほどややこしいですが,フレッシュな目を持った若いみなさんの挑戦を期待します.実物をとってきてルーペで拡大したりして,自分なりに違いを発見しよう.

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