スミレ Viola mandshurica (スミレ科 スミレ属)
 スミレは北海道から九州までの地域に広く分布し、人里に生育するスミレとしてなじみ深い。芝生や路傍、堤防などに生育しており、アスファルトの割れ目にも生育することがあるなど、生育範囲は広い。春に濃紫色の花を開く。この花は花粉を媒介して種子を形成するが、それ以降の季節ではつぼみは形成するが花を開くことなく、閉じたままで種子を形成する閉鎖花を形成する。このようなスミレの繁殖戦略は、春には他花との花粉媒介を行うことによって多様な遺伝子を持った種子を形成し、それ以降は花粉を媒介せず、効率的な種子形成を行っているわけであり、融通性の高い方法であると考えられる。
 スミレの和名については諸説あるが、「墨入れ」がなまったものであるという説は、おもしろい。墨入れは大工さんなどが木工の際に使用する道具であり、糸に墨を吸わせてピンと張り、板などに糸を打ち付けて鋸などで加工する際の直線を描く道具である。この墨壷と糸巻きを組み合わせたような形が、花を横から見た姿にそっくりであるというわけなのだが、墨入れを見かけない昨今では、説明に苦労する。
スミレスミレ
スミレの花スミレの花
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