ヤブツバキ Camellia japonica L. (ツバキ科 ツバキ属
 ヤブツバキの花は11月頃から4月ころまで咲く。たくさんの萼苞片に包まれたつぼみが開くと直径5〜7cmの深紅の花が開く。花弁は5枚であり、基部が合着しているので、花弁は散らず、そのままの形で落ちる。おしべは多数で基部は合着しており、中心部に柱頭がが3〜4つに分かれためしべがある。花の中心部からは大量の蜜が分泌される。ヤブツバキの花が咲く季節は花を訪れる昆虫が少なく、花粉の媒介は主にメジロなどの小鳥が行っている。この季節、森を訪れると顔がヤブツバキの花粉で真っ黄色になっている小鳥を見ることができる。
 低温の冬に花を咲かせる植物は少ないが、花を咲かせるとその貴重さゆえにたくさんの昆虫などが来訪する。ヤツデなどはその好例であるが、陽だまりが期待できない深い森林の中で花を咲かせるヤブツバキにとっては、低温で活動が鈍る昆虫相手では十分な効果が期待できないかもしれない。恒温動物である鳥をターゲットにすると、低温時でも十分な花粉媒介が期待できる。加えて飛翔距離が長いので、遠隔地の個体からも花粉をえることができよう。大きな花をさかせるためには相当なエネルギーを消費するはずであるが、それに見合った効果があるのであろう。


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