注1 鉄の扉
ここでいう「鉄の扉」とは、日本での集合住宅の普及に際し、多くの団地やマンションで採用されたスチール製の玄関扉のことである。鉄扉の導入は、家族の孤立化、プライバシーという概念を象徴するモノと捉えられている。この鉄扉が家族を社会(外部)から隔離・孤立させた一つの原因であり、家庭内で起こりうるDVや児童虐待などが外部に漏れなくなった、と指摘されることもある。
注2 共用部/専有部
2以上の住戸又は住室を有する建築物で、かつ、建築物の出入口から住戸の玄関に至る住民共同の階段、廊下等を有するものを通常「共同住宅」と呼ぶが、そのうちの住民共用の用途(廊下・階段など)を有する部分を共用部といい、各住戸を専有部という。
注3 山本理顕(1945年−)
建築家。山本理顕設計工場代表。横浜国立大学大学院建築都市スクール"Y-GSA"教授。代表作に『GAZEBO』(1986)、『熊本県営保田窪第一団地』(1991)、『岡山の住宅』(1992)、『埼玉県立大学』(1999)、『公立はこだて未来大学』(2002)、『東雲キャナルコートCODAN』(2003)、『横須賀美術館』(2007) など。著書に、『住宅論』(住まいの図書館出版局/1993)、『現代の建築家 山本理顕』(鹿島出版会/1997)など。
山本理顕設計工場 ウェブサイト
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注4 東雲キャナルコートCODAN1街区/山本理顕
都市再生機構による賃貸型集合住宅(5街区は東京建物株式会社による賃貸住宅事業)。基本計画は都市再生機構と日本設計が担当、街区ごとに様々な建築家が基本設計を行う。山本理顕設計工場(1街区)、伊東豊雄建築設計事務所(2街区)、隈研吾建築都市設計事務所、アール・アイ・エー(3街区)、山設計工房(4街区)、スタジオ建築計画、山本・堀アーキテクツ(6街区)、設計組織ADH+WORKSTATION(アパートメンツ東雲キャナルコート/5街区)。山本氏が手がけた1街区の専有部玄関扉は鉄の扉ではなく、透明なガラス扉が採用され、外とのつながりが意識されている。
注5 西沢立衛(1966年−)
建築家。西沢立衛建築設計事務所代表。横浜国立大学大学院建築都市スクール"Y-GSA"教授。
妹島和代氏とのユニット・SANAAとしても設計活動を行っている。代表作に『ウィークエンドハウス』(1998)、『鎌倉の住宅』(2001)、『ベネッセアートサイト直島オフィス』(2004)、『船橋アパートメント』(2004)、『森山邸』(2005) など。
西沢立衛ウェブサイト
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SANAAウェブサイト
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注6 森山邸/西沢立衛
西沢立衛氏が設計した専用住宅+賃貸住宅。ひとつの敷地内に、各住戸が界壁ではなく庭によって分け隔てられて建っている。各住戸が断絶するのでなく、庭を介してつながり合うような関係が保たれた設計がなされている。
参考図面(新建築社)
注7 渡辺真理+木下庸子「集合住宅をユニットから考える」
設計組織ADHの渡辺真理+木下庸子による共著。新建築社、2006年発行。
注8 家族専用住宅
一般的に住宅は、マンション・アパートなどの「共同住宅」と戸建住宅などの「専用住宅」とに二分される。専用住宅は、居住だけを目的にしている住宅であり、店舗などを併設した住宅は「併用住宅」と呼ばれる。ここで言う「家族専用住宅」とは、単身世帯の住宅ではない、家族が住むことを目的とした専用住宅を示している。
注9 上野千鶴子(1948年−)
社会学者。東京大学大学院社会学研究室教授。専門はジェンダー及び女性学であるが、記号論、文化人類学、消費社会学、文学論など、幅広く活躍している。著書に『女という快楽』(勁草書房/1986)、「近代家族の成立と終焉」(岩波書店/1994)、『ナショナリズムとジェンダー』 (青土社/1998)、『家族を容れるハコ 家族を超えるハコ』(平凡社/2002)、『老いる準備−介護することされること』(学陽書房/ 2005)など。