――空とは逆に、小さな幸せに対して歌ってもいるよね。自分が幸せと感じる瞬間はどんなこと?
いっぱいありますけど、幸せって思えることが幸せだと思います。例えば、ご飯食べてる時、ゆっくりとした時間がある時、家族に会えた時、良い曲が出来た時。そういう瞬間、瞬間、常に幸せだなと思います。
――それこそ『おかえり』という曲には幸せを感じるなぁ。そういう日常の身近な幸せって、あまり気づかないじゃないですか。
気づかなかったですね。久しぶりに地元に帰ると、何にも変わらない場所と人が待っていてくれて、“おかえり”って言ってくれる。そのひと言がすごい染みて。あったかいなって思った。それこそ本当に気づけない時は、気づけないけど、すごい幸せなことかもって思って書いたんです。
――『グンナイベイビー』は、親から愛されて育ってきた感じがすごく伝わる。親も空と同じで身近な大きい存在でもあるよね。しかも親の愛は変わらない。
まさにそうですね。すごく尊敬してるし、大好きだし。空と同じぐらい親って大きい存在だと思います。当たり前なんですけど、大人になってみて、子供に対する親の無条件の愛って、やっぱりすごく大きし、変わらないんだなって。子供が可愛いからこそ心配になるんだけど、私が歌を歌いたいって言った時、パッと自分の手の中から放り出してくれた、それがすごく強いなって改めて思った。
――そうした身近なことを描きながらも、逆にファーストより今回の方が、世界観が広がったような感じがするんだけど。
自分の意識が、すごく身近なことに対して歌うのが大事なんだっていう方向に切り替わったんだと思います。たくさんの人を意識すればするほど伝わらない。ぼやけるし、リアルじゃなくなる。例えば、それは『三日月』で気づかされました。『三日月』は、本当に自分の中から、ただ素直に生まれた曲なんです。自分が大阪を離れるのが寂しいって気持ちから生まれただけだったのが、あれだけたくさんの人に届いた。それで何よりも自分が書きたいこと、自分が思ったことを素直に書く方が大事なんだなって思いました。だから、身近なことや今を大事にしたいって変わったんだと思います。デビュー前は、デビューっていうスタートに向かって、がむしゃらに前だけを見て走っているような、何も知らない強さがあったなって思うんです。デビューして、ゴールがない中で、一歩ずつ歩き始めて、先も大事なんだけど、今あっての先だから、今っていう、瞬間、瞬間を切り取って書きたいなって。そう思い始めたのは、このセカンドからですね。もちろん未来に向かって歩いて行くんだけど、歩いてく過程、歩いてる今の方が大事なんじゃないかと思い始めて。以前は、未来、未来って言い過ぎて、目の前にあるものに気づけてなかった。そんな未来には何の意味もない。だから、今をしっかり頑張ろうって。
――デビューから今に至るまで、自分の中で変わらないものは?
歌うのがやっぱり好きで、ファーストで歌ってた『message』って曲に込められた気持ちはまったく変わらず、むしろプラスされてってるっていう。今を大事にしたいって思うようになったり、ライブを重ねることで自分の表現方法を改善してきたり、音楽制作の面で周りの方から勉強させてもらったり。当然、音楽以外にも、生きていく上でいろいろ変わってきたと思うんですよ。でも、変わってるけど、変わってない。変わるというか、自分の中にプラスされる。そのプラスされた部分って自分の中では大きくて、それがそのまま今回のアルバムに反映されてると思います。歌が好きだから歌いたい、書くのが好きだから書きたい、そしてそれをちゃんと伝えたい。そういう根っこはまったく変わってないですね。その根っこの部分があるからこそ、今を大事にしたいって思えるのかもしれないです。
――特にハタチの今現在って、大切だよね。
そうですよね。でも、もう少しだけでいいから、ハタチに見られたいと思うんですけどね(笑)。
幸せの本質は身近なものにこそある。あまりに身近だからこそ、その幸せに気づかないことも多い。デビューからがむしゃらに突っ走って来た彼女は、『Sing to the Sky』で、身近な幸せの瞬間を切り取り、永遠の幸せを歌い綴る。過去でもなく、未来でもなく、現在の自分への確信の力。「変わってるけど、変わってない」美しさが、ここにはある。
Text●保母大三郎 Photo●アライテツヤ Styling●岡本純子 Hair&Make●竹下あゆみ 衣装協力●SLICK PR:03(3403)5240
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