1次リーグ・ドイツ対サウジアラビア戦
(2002年6月1日・札幌)


事前準備

 チケット入手(わが家3人分)

1次販売の際、親子3人の名前で、限度一杯の18試合を申し込んだ(すべてカテゴリー1の席)。東京近辺の横浜か埼玉、少し遠くても鹿島か静岡なら何とかなる、もっと遠くだと札幌以外は勘弁して欲しい、などと考えていたら、6/1(土)の札幌の試合が当たった。1枚17000円。この時点ではどのチームの試合になるか分からなかったが、札幌なら食べ物も美味しいし、ホテルもたくさんある。飛行機もがんがん飛んでいるので、たぶん予約は取りやすいだろう。なかなかいい場所が当たったと思った。何より、土曜日の試合というのが、小学生のいるわが家には助かる。

その後、2001年12月1日のプサンでのファイナルドローで、この試合に出場するチームは、ドイツとサウジアラビアと決まった。海外のチームでは最もドイツのサッカーを好む私にとっては、大ラッキーだ。「今回のワールドカップ、チケットが当たっただけでなく、最も見たい(日本は別として)チームの試合になるとは、何てツイているのだろう」と思った。しかしツイているのは、これだけではなかった。

 チケット入手(札幌の友人2人分)

1次販売、2次販売とも空振りした札幌の友人のトモオ君(東京出身・北大経由で札幌の会社に就職・奥さんは道産子・本人はもう95%くらい北海道人)は、「地元民割当枠があるはずなのに、札幌の住民で当たったという話を聞いたことがない、もう残るはキャンペーンの賞品を狙うしかない(東京弁訳・原語は北海道弁)」と嘆いていた。そこで、近くのディスカウントストアでカップヌードルを買って、応募券の部分を送ってあげた。そしたら、見事に、6/1の札幌の試合を引き当てた。それも一番値段の高いカテゴリー1の席。チケットの名義は、「日清食品」となっていた。

このキャンペーンでの賞品は、1500組3000名分。15万口の応募があったとすると、当選確率は1/100。そんなに甘いことはないだろう。150万口の応募とすると、1/1000。12枚1口での応募なので、1500万口ということはありえないだろうが、数百万口の応募があった可能性はある。この倍率をかいくぐって当選するとは、まことにお見事。わが家の強運だけではなく、しょーもないダンナ様を盛り立てている奥さんのゆかりちゃんの日々の善行の積み重ねによる功徳の高さが、神様を微笑ませたのであろう。

なお、うちからトモオ君に送った応募券は120枚(10口分)。これに、自宅で毎日必死に食べ続けてためた3口分を足して、合計13口で申し込んだとのこと。

 ホテル&飛行機の予約

ホテルは、チケットの当選通知が来た日に、ネット経由で新札幌にあるシェラトンホテルを予約した。大通り近辺のホテルにしなかったのは、みんなと違う方向への帰り道の方が、試合後に楽だろうと考えたため。飛行機は、2か月前の解禁日にネットで予約した。

当日の市内の様子

 ホテルを出るとき

予約したホテルは、サウジアラビア・チームが宿舎としていた。ロビーの一角にはサウジアラビア人向けのサービスカウンターが設置され、ホテル内は選手や関係者や取材陣(みんなサウジアラビアの人)がうろうろしていた。ドイツ人宿泊客(6名のグループ)が、「このホテルでは大きな声では話ができない(笑)」などと言っていた。

試合当日、朝10時半ころホテルを出る際に、車寄せのあたりでサウジアラビア関係者に呼び止められた。カバンの中から3枚のチケットを取り出して、「見に行くか?」と聞く。1枚60ドルのカテゴリー3の席で、記載された名前まではよく読めなかった。「売ってるのか?」と聞くと、「違う」という。どうも、プレゼントしてくれるらしい。しかし私たちには、チケットがある。ここで余分なチケットをもらっても、ちゃんと見に行く人を見つけてその人に渡すことができるかどうか、東京人の私には自信がない。貴重なチケットを余らせてしまったら、それは国際的大犯罪だ。そのため「私たちはチケットを持っている」と言って、丁重にお断りした。きっと、次に通りがかった人が喜んでもらうことだろうと、その時は思った。

しかし札幌ドームで客の入りを見て、「しまった、もらっておけば良かった。あの人たち、数枚ではなく、数百枚か1,000枚以上のチケットを余らせていたようだ。たくさんもらって、大通公園で暇そうな奴にばらまいてしまえば良かった」と少々後悔した。

 大通公園・イベント会場

大通公園では、ワールドカップ開催に合わせてイベントが開催されていた。開催各国を紹介するブースや、海外からの客に日本の文化を伝えるための抹茶のサービスや折り紙教室、さらにはスポンサー出展としてコカコーラのゲーム(サッカーボールのスローインでの的当てゲーム)や朝日新聞のボールキック・スピード測定、日清食品の試食会(ミニ・カップヌードル)などがあった。しかし外国人の姿は、あまり多くなかった。

 会場への交通

札幌中心部から札幌ドームへの交通機関は、地下鉄東豊線がメインとなる。福住駅からは歩いていける距離。臨時の交通機関としては、数系統のシャトルバスが運行されていた。大通公園からもシャトルバスが出ており、チケットの色(メインスタンド・正面スタンド・A国ゴール側・B国ゴール側の4種)別に乗り場が設定されていた。また、大通公園か札幌駅からの定額タクシーも運行されたが、客は少なかったとのこと。下の看板では、赤がメインスタンド、黄色がドイツ側、緑がサウジ側(不思議と正面スタンドの青がない、メインスタンドよりも客数が少ないので運行されなかったのだろうか?)。

会場への入場

 福住駅まで

大通公園から地下鉄に乗った。地下鉄でも、チケットの色により乗る位置を指定された。どうも、黄色(ドイツ)だけを隔離する作戦のようだ。

 札幌ドームまで

17時ころに福住駅に到着(駅が人であふれるピークタイムの1時間前)。周辺のクルマディーラーはほとんどがクルマを隠してがらんどう状態。警官がうようよしている中を雑踏状態のまま進み、チケットの色別に指示された動線を進む。歩行動線でも、黄色(ドイツ)のみ隔離されていた。チケット確認のゲートを2つ通過、かなり札幌ドームに近づいたなと思ったあたりに行列があり、ここで1時間と少し待たされた。ゲートオープンは17時半とのことだが、この行列が動き始めたのは18時過ぎ。翌日の新聞には「17時半に開場した」とあったので、他の色を先に入れて、赤(メインスタンド)と緑(サウジ側)は後回しになったのかもしれない。

 ゲートの中

ゲートではチケットの確認と持ち物検査(金属探知器も使用)。チケットの本人確認はなかった。はじめから、「セキュリティチェックだけ精一杯で、チケットの本人確認などできるわけがない」と思っていたが、その通りだった。ということは、今回のワールドカップのチケットは転売はまったく自由ということ。これまでずっとJAWOCは「チケットに記載された本人でないと入場できない」と言い続けてきたが、それは転売防止のための大ウソであった。しかし長い間そう言い続けてきたので、転売防止の効果は充分にあったことだろう。

ゲートの中、建物に入る動線の脇に、協賛スポンサーの出展ブースが3つ。コカ・コーラは大声大会、NTTドコモはボールキックの的当てゲーム、ヒュンダイはクルマの展示のみだったように見えた。

ドームの中

 眺め

最新鋭の施設らしく、素晴らしい観戦環境だった。400mトラックがないので、スタンドからグラウンドが近い。また照明は充分な光量で色味もナチュラルであり、ゲームに集中できる。座席は比較的傾斜が急なため、前席の人の頭があまり邪魔にならなかった。

 席割り

ドイツ・サポーターとサウジアラビア・サポーターをそれぞれ両ゴールの後方に配し、メインスタンドとバックスタンドは中立と思われる日本人という席割り。まわりに危なそうな奴がいないので安心してゲームを見ていられるが、まわりに熱狂的なやつがいないので、今ひとつ盛り上がりに欠ける。ドイツ・サウジアラビアとも意外に自国サポーターが少なく、そのあたりには広大な空席が広がっている。札幌ドーム全体から見れば観客のほとんどは日本人という状況。極東地域での開催では仕方がないことかもしれないが、せっかくの国際的イベントの観客席がこれでは、まことに拍子抜けである。

 客の入り

翌日の新聞によると、入場者数は33,000人くらい(この数字はドーム内電光掲示板でも発表された)、これにプレスや関係者を入れても35,000人前後だったとのこと。札幌ドームの客席数は、固定客席数:42,831席・最大収容人数:53,845人となっており、プロ野球よりもサッカーの方が観客席数は少ないだろうから42,831席が今回の定員だったとすると、7,800席もの空席があったことになる。空席率は何と18.2%だ。両国サポーター席の両脇に緩衝地帯として設けられた空席地帯があったが、それは4カ所でそれぞれ500席程度のもの。この2000席を引いても空席は5,800席、空席率は13.5%となる。

日本ではチケットが入手難だというのに、ふたを開けてみればこれだ。ひどい話だ。どこの誰がアホだからこうなったのか詳しくは知らないが、最終的には主催者の責任だ。
注:試合開始直前のドイツ側サポーター席−−−写真右側の空席地帯は緩衝地帯、写真左側の空席は本当の空席、その左にはもっとたくさんの空席がある(写真には写っていない)

 トイレ

トイレは充分な数が設置されており、いついっても長蛇の列ということがなかった。札幌ドームが満員になるのは年に数回のプロ野球の巨人戦だけらしいが、その時もトイレには困らないとのこと。素晴らしい設計だ。

 売店

トイレが立派なのに、売店は完全にキャパ不足。飲食売店(ビール&飲物&軽食)・物販売店(公式グッズ)ともとうてい並ぶ気がしないくらいの長蛇の列だった。ただし、手早く出せるソフトドリンクだけ、手持ちの売り子や簡易冷蔵庫が売店の横にスタンバイしており、これを見つけることができればほとんど並ばずに買うことができた。このような臨時増強売店は、アメリカのテーマパークでは混雑時にはよく見かけるが、日本で珍しい。コカ・コーラの飲食販売ノウハウだろう。

客席を巡回しての飲物販売は、今回はまったくなかった。混乱防止、または客の観戦の邪魔をしないためと思われるが、とても便利なサービスなので少々残念。また、外部からの飲物の持ち込みも制限されており、缶やビン、ペットボトルはNG。ドーム内の客席部に入る前に、紙コップに移せばOKという方式(ビッグエッグも同様、恐らく札幌ドームのプロ野球も同様と思われる)。

 試合

前半に4ゴール、後半にも4ゴールという大サービスの内容で、サウジアラビアにとっては気の毒だが、ドイツファンの私としては8回も大声を出せて大満足の試合だった。幅広く構えて攻め上がっていくドイツスタイルのサッカーは、TV観戦ではその全容を把握しにくいが、スタンドで自分の目で見ているとそのフォーメーションの美しさが良く分かる。この日のドイツの攻めは、左サイドからの上がりやセンターでのポストプレーが多かったが、右サイドの大きなスペースをゆったりと上がり、たまにボールが来ると猛烈な勢いでサイドライン沿いを駆け上がっていくという22番フリングス選手の動きが、いかにもドイツのサッカーを見ているようで印象的だった、

帰路

 新札幌までの帰路の様子

20時半キックオフ、15分のハーフタイムをはさんで、試合終了は22時半の少し前。福住の駅が狭く、また動線も太くはなかったので、動かなくなる可能性があると考えて、シャトルバス乗り場を目指した。翌日の新聞によると、帰路の福住駅利用は13000人に抑えるのが警備・誘導計画の目標であったとのこと。

びっしりの人混みのまま順路を進むが、進んだり止まったりを繰り返しながら、30分少々でバス乗り場に到着。ここで10分くらい並んで、南郷18丁目駅行きのバスに乗れた。道路は順調で、15分程度で南郷18丁目駅に到着。ここから新札幌への地下鉄は、帰路のメイン動線ではないので予想通り空いていて、混乱なく乗れた。どうなることかと思っていたが、予想外に簡単に帰ることができて驚いた。

 帰路のシャトルバス乗り場

札幌ドームのシャトルバス乗り場は広大で、通常の地方博覧会をはるかに上回る規模。つくばの科学万博のシャトルバス乗り場は広かったが、それと同じかそれ以上に広い。交通規制で一般車が入って来れない隣接道路には空車のバスがずらりと並び、たくさんの交通誘導員が手際よくバスやタクシーの出入りをコントロールしていた。これだけ作れば不足することはないだろうという余裕の設計と、これだけ人がいれば不足することはないだろうというぜいたくな人員配置に、いかにも北海道らしさを感じる。

 札幌ドームの顧客満足度

新しい施設だけあって、札幌ドームはとても良くできている。作り過ぎとも思えるトイレの数や、もったいないくらい広いシャトルバス乗り場(フル稼働するのは年に数回)などは、実に素晴らしい来場者サービスだ。特に帰路のアクセスの整備は、「終わりよければすべてよし」という諺があるように、1日の印象を決定付ける重要なポイント。札幌ドームは、シャトルバスで帰る人にとっては、とても後味の爽やかな、楽しい気分をそのまま持ち帰ることができる素晴らしい施設となっている。作った人、そして運営している人たちがみんないい仕事をしないと、なかなかこうはならない。

ただし、地下鉄の福住駅に徒歩で向かった人、そして絶望的と思われるタクシー乗り場の行列に並んだ人がどう感じたかは、私には分からない。将来、札幌ドームの満員・一斉退場型のイベントに来る機会があったら、福住駅への徒歩も試してみたいと思う。

参考資料 −−− チケット


2002日韓ワールドカップサッカー・観戦レポート メニューページ

トップページ