「お姉ちゃんの3乗〜おねえちゃんきゅーぶ〜」(Marron)
「秋桜の空に」で甘やかしねーちゃんジャンルを確立したMarron&竹井10日氏の姉ゲー再び。
より具体的な概要は、こちらが参考になります。
<総評>
ダダ甘!
ダダ甘と言う言葉がどれだけ一般的なのか分かりませんが…
このゲームを一通りクリアすれば「ダダ甘」しか適当な言葉が見つからないんです。
メーカー公称のジャンルは「甘やかされ系ADV」となっていますが、これ、人目を惹くためでも無ければ、奇をてらったわけでもなく、
本当に甘やかされ系ADVなので、これが的確なジャンル分けなのであります。
どういう風に甘やかされるのかというと、
・背中だってお姉ちゃんの身体ですりすりして流してあげるのにっ!?
・ど、どうしてもって言うなら、添い寝する時、寝たふりしてあげるから……
・お姉ちゃん、みくちゃんのためなら噛まなくてもすむように口移しでご飯食べさせてあげるのよ?
と、これが比較的軽めの甘やかし例。(主人公は大学生。念のため。)
こうして徹頭徹尾四六時中手取り足取り入れ替わり立ち替わりお姉ちゃんが甘やかしてくれるコメディタッチの姉ゲーになっています。
この時点で引くような人なら、残念ながらここでお帰り下さい。
その代わり、姉属性を自認して止まない人なら、これを体験してみない手はありません。
と言っても甘やかされ放題ばかりが売りではなく、竹井10日氏の脳から溢れ出て止める術のない珍文珍テキストの応酬も外せません。
この類のゲーム中のギャグは、雰囲気にそぐわず寒い思いをすることが多々ありますが、これにおいてはドタバタの勢いに乗って良い方に倒れています。
文章でこれだけ笑わせられることは今までなかったほど。
絵のタッチは…やや好き嫌いが出るかな?
立ち絵は表情や仕草の演出が豊かで良かったんですけれども。
超美麗CG…は求めるところではないと思いますので。このゲームは、あくまで精神的萌え重視です。
あと、注意しておくべき点は、Hシーンはあくまでおまけ位の位置づけであること。そういう目的なら他を当たりましょう。
但し、どれも特殊な趣向のものが用意されていることは付言しておきます。
<キャラクター評>
順序は、一般的な紹介順です。
・春崎 七夏(しゅんざき ななつ・通称ななねえ)
分裂前のお姉ちゃん(従姉)。
基本的にダダ甘。弟の幸せが自分の幸せであり、弟を守り育てることが自分の生き甲斐になっているダダ甘姉ちゃん。
むしろ尻に敷くタイプと言った方が適切。
保護者としての姉らしい厳しい一面もあるが、異常な甘さ故の厳しさなので、方向性を誤っている。
・自分がいないと、弟は一日でも生きていけないと思っている
・弟に悪い虫が付かないよう、弟宛のラブレターは全て検閲(通過することはない)
・弟が寂しくならないよう、弟の部屋にななねえグッズを装備させている
今度生まれてくる時は、こんな弟思いのお姉ちゃんのもとに生まれたい…
・春崎 小鴨(しゅんざき こがも・通称かもねえ)
分裂した3人のお姉ちゃんの1番目(子供風)。
世話焼き大好きお姉ちゃん。口癖は「〜カモ!」
幼く見えるお姉ちゃんは無理に背伸びして姉貴ぶるのが姉キャラのステレオタイプですが、かもねえに関しては実はそういうキャラでもなく、
たまたま見かけがちっちゃいだけの、中身はしっかり者お姉ちゃんです。
主人公がかもねえのことをあまり子供扱いしないところが、好印象につながっています。
(姉を姉扱いしないようなテキストを書く似非姉萌えライターは多いです。)
かもねえの真の姉ぶりは、モロにネタバレにかかわることなので、これはさすがに秘密。言ったらおもしろくなくなりますし。
終盤は、涙腺弱い人だと来ちゃうかも。林檎…
ちなみに、最初のクリアがかもねえでした。
・春崎 立夏(しゅんざき りっか・通称なつねえ)
分裂した3人のお姉ちゃんの2番目(同い年風)。
いつも素直じゃなく、ツンツンしているタイプ。主人公の言動に、常に鋭いツッコミを欠かさない。ONEで言う所のななぴーですね。分かる人なら。
かといって心からキツイお姉さんではないので、弟が凹んだと見るやいなや、おどおどして甘い姉ちゃんに戻ってしまう。
すぐ肘鉄が入るし、ボケにも乗ってこない真面目なお姉ちゃんですが、“透明人間”のイベントが途中出てきますので、そこまで我慢。
シナリオ終盤はかなりぐっと来ます。
個人的には分裂お姉ちゃん3人の中で最後にクリアするのがお勧めです。理由は伏せます。
・春崎いりあ(しゅんざき いりあ・通称りあねえ)
分裂した3人のお姉ちゃんの3番目(年上風)。
見た目の妖艶さに反して、どちらかというと甘えん坊。もちろん甘やかし方のほうも半端じゃありませんが。
おっとり系かと思わせつつ、きちんとこなすことはこなす、やはりしっかり者お姉ちゃん。
弟にはかなりべったりなのに、他の男の人となると奥手。このギャップが人によってはたまらないかも。
・鎌倉 夢子(かまくら ゆめこ・通称ドリ子)
幼馴染みのお姉さん。もっとも、お姉さんらしく振る舞うことはほとんどないので、同級生の感覚に近い。
主人公と姉一味のドタバタに巻き込まれて泣きを見る役回り。
登場人物の中では常識人に属する。
いや、常識人であってくれないと、シナリオ進行が暴走するんじゃないかな?脱線しっぱなしじゃないかな?帰ってこられないんじゃないかな?
大きな萌えイベントは少ないものの、全編を通して“???”とともに要となるキャラ。
・???
名前は公式には一応伏せられているキャラなので???のままで。
隠しキャラではありません。
シナリオ1週目の途中から登場しますし、常にトラブルメーカーなので、居ないとドタバタが成立しません。
彼女が出てこなければ、ゲーム中の笑いは半減する程に。
キャラ的には、いたずらっ娘とでも定義すればよいのか。遠慮を知らない自由奔放娘です。
主人公より1日だけ年上。都合の良い時だけお姉さんを強調するらしいが、本編ではそういうシーンはほとんど無しです。
あとは、下ネタ女王。
「ハニーってのは蜂蜜って意味なのよね……はちミツなら良いけど、ハミちつだと、ちょっといやらしいわよね?」
体育館でのお泊まり2泊目朝のイベントが通用するキャラというのも珍しいです。必ず通るイベントなので詳細は略。
・妖精のデビルさん(本名デビル=デモニラ=デワーリル、通称デビ子、デモりん、デビット)
お姉ちゃんが分裂した原因の追究に来た手乗りサイズの妖精さん。見かけと名前からデビ子とも。
本当はお茶目な気の良い妖精さんなのに、主人公とその周囲のドタバタぶりに翻弄されまくり。
この慌て方がかわいいわけですが。
年齢10万12歳なので、最年長とは言えますけど…お姉ちゃんではないです。
かわいいマスコットキャラクター的存在。小悪魔というより小動物的。
<さいごに>
正直に言えば、手に取るまで姉ゲーかどうか半信半疑だったのですが(Marronというメーカーさえよく知らなかったので)、
こんなに極端な甘やかし姉ゲーがあっていいのだろうかといまだに信じられない思いです。姉時代来たり。
こうして姉ゲー姉ゲーばかり言っていますが、余程の人(妹原理主義派とか)じゃない限り、一般的にも楽しめるゲームかと思います。
コメディタッチのギャルゲーが好きならば一層。
パッケージ裏のうたい文句、
「甘やかしてあげたい…あなたの心…… 冬の街を舞台に、不思議で、せつなくて、心温まるちょっとおかしな物語」
は、間違っていないと思いますよ、思うんじゃないかな、思いこむこともできるよ?
とは言いながらも、やはり姉属性を持ち合わせていることが必須条件ですかね。
「おねきゅー」にはボイス無しのゲームですが、必要じゃないと思っています。
ここ数年でボイス有りが当たり前になってきましたが、有ることがメリットばかりじゃないと思いますし、
「音声は演出の都合上意図的に入れておりません」
と公式ホームページのBBSで公言されていました。(ドラマCDなどが出たら悩みどころですが(笑))
以下、ややネタバレ風味なので、白字で。
物足りなかった点は、「ななねえシナリオが短すぎ!」ということ。
ななねえは、3人のお姉ちゃんクリア後にシナリオに入れますが、3人のシナリオを総括するようなものを期待していただけに、非常に残念。
ななねえにもっと甘やかして欲しかった…。
ちなみに、個人的にお勧めのクリア順序は「かもねえ→りあねえ→なつねえ」です。
再三注意しますが、これは「甘やかされ系ADV」です。結局ここにたどり着きます。
姉萌え、しかも甘党なら、一度は通っておいて損はない良作だと思います。
竹井10日氏の次回作に期待しています。
使えないよ、まな板…
アンミラに
巨峰パイは無い…