IIS NEWS

IIS NEWS 1998.4. 1, No. 51


IIS TODAY

 *  新所長 坂内正夫・前所長 鈴木基之

Photo1鈴木基之教授は、平成7年4月本所の第18代所長に就任され、3年間にわたる重責を全うされて本年3月に退任されました。鈴木基之教授には本所の将来計画をはじめ第三者評価(国際・産業界・学術)の3つの諮問パネル、本所の駒場Uキャンパス新営、国際・産学共同研究センター設立及び諸外国の大学との学術交流協定締結の実現等幾多の重要課題に積極的にかつ精力的に取り組まれましたことに心より深く感謝いたしますますとともに、今後のますますのご活躍を期待いたしております。 4月からは新所長の坂内教授を中心に教職員一同力を合わせて本所の使命達成に向けて一層の努力を続けてまいりますので皆様のご支援をよろしくお願い申しあげます。
(事務部長 井手ノ上正巳)

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 *  退任にあたって 鈴木基之

Photo1 平成7年4月に原島文雄教授から所長職を引き継いでから、長く、また一面ではあっという間の3年が過ぎ、新所長坂内正夫教授に次をお願いすることとなり、安堵感に満たされております。この3年の間、教官諸兄、事務の方々、技術官の方々など所内の方々と共に、所の運営に関して実に色々な事柄を進めさせて頂きました。所外からも、誠に多くの皆様に親身になって本所をお引き立て頂くこととなり、心から感謝申し上げたいと存じます。
 この3年間は振り返ってみますと、社会全体として、意識するとしないとに拘わらず激動と言っても良い程の変化がありました。我が国は戦後50年を過ぎ、成長第一の時代から、新しい価値観を求め、持続的な新体制はいかにあるべきかの模索を始め、次の世紀にむけて、世界と共に産みの苦しみに入った時期と言って良いのかもしれません。地球環境変動への対応と持続的社会の創造、災害に強い高密度の都市の構築、文化を発展・創造する人間活動の展開、新しい時代にむけての国全体の仕組みの改革、大学の存在理由・役割の明確化、科学技術研究に対しては科学技術基本法、産学連携など社会的要求への我々の対応など、目前のテーマとして我々を取り巻く課題が如何に多く、また深化しているかに気付かされます。
本所は、戦後の我が国の復興と成長を大学の中から支えるべく、昭和24年に産学協力を目的の一つとして設立された大学の付置研究所です。先人の卓抜した先見性と、深い考察の上に当時は他に例を見ない組織、運営などの諸方式が作られ、基本的にはその仕組みに基づいて本所も50年を経過しようとしております。その間に重ねられた多くの歴史は、幸いなことに広く社会的に認めて頂いているものが多いと自負しております。
 しかしながら、次の50年を迎えるに際して、この仕組みのわずかな修正で将来の我が国、世界のニーズに応えていくというのでは、安易にすぎるでしょう。我々は、いわば今後の社会を見通し、そこに向かう新しい研究体制を構築する努力を、根本に立ち戻って決意したものであります。この決意の上に、本所は三年間をかけて外部の方々に本所の活動をご覧頂き、忌憚のないご意見・ご忠告を頂くこととし、国際パネル(95)、産業界パネル(96)、学術パネル(97)の方々に貴重なお時間を頂いた訳です。この三つの評価報告書は、それ自身大変価値のある財産であると同時に、本所が早急に取り組もうとしている具体的な改革案の作成の上でも貴重な出発点となるでしょう。また、物理的には新しいキャンパス計画の第一弾として、駒場における建築も開始致しました。本年6月には一部の建物が完成する予定ですが、これも当面の整備計画の1/6の面積に過ぎません。今後速やかに計画が進行し、研究所としての不必要な労力を消費することなく研究活動が遂行できることも社会にとって求められていることでありましょう。
今後の本所の展開への思いを述べさせて頂きましたが、一方において、この3年間、素晴らしい人々に支えて頂いた幸せを感じております。生研はそれぞれの分野において研究者として、また人材として、何と優秀な、かつ個性的な人々の集まりであるのか、国際などという言葉がもう不要な位に世界に向かって発信を続けている方々も多く、将来の夢に熱い思いをかけて緻密に準備を重ねている方々があり、社会との交流から自分の成すべき事を適確につかみ出しておられる方々などなど、それらの個性の集まりとしての集団が生研のようなユニークな仕組みの中であるから出来ることは何かを考え、生研を真に生かしておられることの素晴らしさを痛感することの多かったのは所長としてこれに勝る幸せはありませんでした。
 これからも、新所長の坂内教授を中心として本所は世界の中核の一つとして一層の展開を図っていくことになるでしょう。皆様の熱烈なご支援をお願い申し上げます。


 *  所長就任にあたって 坂内正夫

Photo1 この度、生産技術研究所の所長として、構成員の方々とともに、本所に課せられた社会的責務を担っていくことになりました。東京大学第二工学部から引き継がれ、設立50年を迎えようとする本所の良き伝統を継承させ、更に発展させる舵とり役としての重い責任を強く感じ緊張しております。所内、所外の皆様のお力添えを願い、この大役を積極的に、且つ明るく果たしていきたいと念じております。何卒よろしくお願い申し上げます。
 生産技術研究所の良き伝統――それは約100の研究室が各個の研究を重視・尊重し、同時に分野にとらわれない横断的な所内連携によるグループ研究を柔軟且つ機動的に実施してきたこと、これらの研究を進めるための体制や社会・産業界との協力、海外の研究機関との交流などにおいて、特にオープンで自由且つミッションオリエンティドな風土を醸成してきたことだと考えています。幸いにして、この伝統を背景にした各種の先駆的な試みや、基礎研究から応用研究までの広い領域での多くの研究成果は、鈴木前所長、原島前々所長の時代に計画・実施された国際/産業界/学術パネルによる三度の第三者評価(1995、1996、1997)でも高く評価されるなど、内外の支持を頂いていると考えております。
 しかし、今急激なグローバル化の進展の下に、我国の社会、経済、行政、個人に至る全てが新しい秩序の構築に向けての産みの苦しみを突き付けられ、大学に課せられた社会発展への寄与の責任と期待は、何倍も大きなものになっております。生産技術研究所は、このよき伝統の増幅を武器に、その責任を果たす先頭に立って行きたいと考えております。
 それに向けての具体的な抱負を幾つか述べさせて頂きます。
 第一は、駒場II新キャンパスの計画です。既に第一期の建設も始まり、所内外の関係各位に大きな負担と努力を頂いております。新キャンパスは、先端科学技術研究センターと協力・切磋琢磨して社会の発展に寄与し、東京大学の「開かれた大学」としての現念を具現するための舞台である、という原点を常に念頭に、その実現に向けて努力を続けていきたいと念じております。
 第二は、研究の新しい方向付けです。今後の科学・技術は、社会との関係の中での意義がますます強くなります。これに対応していくため、生研での工学研究は、社会・産業界とのインタラクションを一層強化していき、その中で大学の独自性を主張し、「基礎研究」の意義を実証していく必要があります。このために、研究者の興味と自由な発想によるボトムアップな方向性と、より広い視点でのいわばトップダウンな方向性の融合を真剣に議論し、実践していく体制を、生研の良き伝統を背景に強化・実現したいと考えてます。また、生研らしい社会との交流、産学連携の体制やマインド、更には工学部など学内他部局との連携の強化をはかっていきたいと考えます。 第三は、構成員の活気の倍化です。「大学は人」です。生研活動の源泉である教職員、大学院生、研究生など構成員個々人が、「多彩に」、「生研らしく」、「明るく、前向き」に活気溢れて活動できるよう、その環境作りに努力していきたいと考えています。
 この他にも短い紙面には入り切らない程、あれも、これもと思うことは多いのですが、いずれも所内外の方々と議論しつつ前へ進んでいきたいと考えております。お力添えと御協力を重ねてよろしくお願い致します。Photo1Photo1
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新所長のプロフィール・1946年 和歌山県で生まれる・1969年 東京大学工学部電気工学科卒業・1975年 同 大学院工学系研究科電子工学専攻修了 工学博士・1975年 同 工学部電気工学科 専任講師・1976年 横浜国立大学工学部情報工学科 助教授・1978年 東京大学生産技術研究所 助教授・1988年 同 教授・1994年 同 概念情報工学研究センター長

新所長、坂内正夫教授は、電子・情報工学を専門とされ、第3部および概念情報工学研究センターで御活躍されております。マルチメディアデータベース、画像・映像情報処理、データ工学における基礎的研究から、地理情報システム、デジタル放送システム、ITS(高度交通システム)といった応用的研究まで幅広い分野をカバーしておられ、基礎と応用の一体化を目指して研究をされています。現在、マルチメディア分野で文部省科学研究費創成的基礎研究プロジェクトの代表を務め、人間社会の基盤としての情報システムの創成を目指しておられます。

学会活動では、米国電気電子学会(IEEE)や情報処理学会、電子情報通信学会、画像電子学会、地理情報システム学会などを中心に活躍され、各種研究会委員長、理事、論文編集長などを務めておられます。マルチメディアをテーマに、生研シンポジウムなど国際会議・国際シンポジウムをすでに4回企画・開催されました。

趣味は「歩くこと」で、1週間10万歩を目標に、6年間で3000万歩を歩かれたとのことです。最近では御多忙で時間が取れず、体重の増加を気にされているようです。

また教授は、マルチメディアの研究をされる傍ら、ゴルフやお酒、カラオケなどを"メディア"とした活動のマルチさをもっておられます。所長の重責を負われるにあたって、その活動の「マルチ」さを活かした積極的な活動をされるようエールを送ります。

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REPORTS

 * 外国人研究者・留学生との懇談会

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 毎年恒例となっている外国人研究者・留学生との関係教職員との懇談会が1月9日(金)に「はあといん乃木坂」で開かれた。今回は、研究者・留学生及びその家族ら97名(13カ国/地域)、教職員52名の参加者を得た。
 今回の企画を担当した第4部の七尾主任のwelcome speechに始まり、鈴木所長、川口留学生センター長の挨拶の後、渡辺国際交流室長が乾杯の発声を行った。この後は、参加者全員による数カ国語の会話を楽しみ、また料理への舌鼓を打つ場となった。更に、昨年と同様に、留学生らによるお国自慢のアトラクションが催された。今回は、中国出身の大学院生を中心とする6人のグループが伝統舞踊「誰不問俺家郷好」を披露した。中国音階の楽曲にあわせた華やかな踊りに、参加者全員が異国情緒を堪能した。
 会の最後に恒例となった集合写真撮影が行われ、和やかな雰囲気のうちに8時過ぎに散会となった。
( 第4部 光田好孝)

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 *  第11回生研学術講演会ーアジアにおける技術交流ー

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さる1月30日、第11回生研学術講演会が開催されました。テーマは「アジアにおける技術交流」で、昨今益々重要性を増しつつあるアジアにおける研究技術交流の現状と将来について、議論を深めようというものです。鈴木所長による開会の挨拶の後、本所第4部・山本良一教授、同第5部・村井俊治教授、台湾工業技術院東京事務所長・黄瑞耀氏、国連大学高等研究所副所長・Fu-chen LO氏による講演と質疑応答が行われました。昨今の最大関心事である環境問題の分析やこれを解決する上での研究技術交流の重要性、あるいはアジアにおける大学教育問題と日本の貢献といった、最近の時代状況に即応した内容が、講演者の先端的な研究内容や深い実体験とともにわかりやすく紹介されました。会場では最近のアジア経済危機という緊迫した状況を受けて各界から多数の参加者を得、活発な質疑応答が行われました。各講演は、アジアの発展をささえる工業技術開発・研究重要性を強調し、また人的交流を中心とした日本とアジア各国のさらなる交流の必要性を感じさせるものでした。
(広報委員会 研究交流部会)

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 *  技術職員連絡会が開催される。

1月20日に技術職員連絡会が第1会議室で開催されました。技術職員連絡会は、所長(技術部長)が技術職員と直接意見や情報の交換をする場として、ほぼ定期的に開催されるものです。今回は、4月から導入される「技術専門官」、「技術専門職員」に関する情報提供と意見の交換が主な議題となりました。技術専門官は「きわめて高度な技術支援業務」、技術専門職員は「高度な技術支援業務」を行う職員、と位置づけられておりますが、その候補者の選考基準に、一般的な技術支援業務と必ずしもうまく対応しない項目が含まれていることなどが主な論点となりました。しかし、技術専門官などの導入により技術職員の役割に対する社会的な認知度が改善でき、また待遇改善につながる可能性があることなどから、今回は技術専門官などを導入することを第1とし、候補者の選考基準や、現行組織と専門官・専門職員との整合化については、4月以降さらに検討を進めることとなりました。
(第5部 柴崎 亮介)

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NEWCAMPUS

 *  第U期工事の準備作業が本格化 所長・鈴木基之

ようやく生研の第U期新営工事の予算が確定し、年度末を控え、慌ただしく具体化の諸作業に取掛かることになりました。また第U期工事と並行して、電話交換機、受電設備などの基幹設備を収納する設備センターも建設されることになります。すでに第U期関係の研究室には設備関係の仕様についてヒヤリングを行っていますが、これが実現していく過程で随時早急な対応をお願いすることもあることと思います。よろしくご協力のほどお願い申し上げます。
また先回の生研ニュースでお伝えいたしましたような、これまでのキャンパス計画の歩みと今後の新キャンパス整備の進行計画を、「東京大学生産技術研究所駒場Uキャンパス新営計画 −<開かれた大学>を目指して−」というパンフレットにまとめてみました。皆様に一目で計画の経緯と全容をご理解いただける出来栄えと感じております。所内のみならず所外の方々にもご活用いただきたくご案内申し上げます。

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PROMENADE

 *  あなたのマシンは大丈夫ですか?

昨年は生研UTnetに接続されたマシンに対してネットワークを経由した攻撃や不正利用が相次ぎました。その背景には、システム管理の知識がなくともWWW等でシステム侵入の手引書や攻撃のためのツールが容易に入手できる現状があります。侵入の証拠の消し方まで丁寧に解説しているものもあります。こういった手軽さとともに罪の意識も軽くなっているのでしょうか。電子計算機室では、こうした攻撃や不正利用を未然に防ぐべく最大限の努力をはらっています。
 侵入者がまず用いるのがパスワードの解読による侵入です。これを防ぐために、ご存知のように計算機室では定期的に利用者のパスワードの解読を試みていますが、そのために利用している解読ツールは侵入者から解読されそうなパスワードをあらかじめ潰しておくために開発されたものです。高性能なため広く利用されていますが、逆に多くのシステム侵入者にも愛用されているようです。このツールを用いて昨年の6月には87ものパスワードが解読できましたが、皆様のご協力により1月末には解読数が0となりました。現在、継続して解読プログラムを実行中です。パスワード変更のお願いメールがお手元に届いた場合はご協力をお願いします。
 不正侵入の痕跡が発見されると侵入経路を塞ぎ、侵入者の行為を追跡することになります。一般に興味をもたれるのは犯人探しに関わる部分のようですが、この作業は実に地味で実りの少ないものです。内部からの侵入の可能性がある場合も電話回線で手掛かりが途絶えてしまいます。暗い部屋で目まぐるしく画面を流れる文字を読みとりつつカタカタとキーボードをたたき笑みを浮かべているような人物が犯人であれば特定もずいぶんと楽かもしれませんが、今どき唐草模様の風呂敷包みを背負った泥棒がいるはずもありません。また、犯行を電子的情報によって立証する難しさもあります。とにかく、現状では侵入の手段を与えないよう努めることが最善の策のようです。
 生研UTnetに接続されたマシンからは、パスワード解読による侵入にとどまらず、様々な攻撃の痕跡が発見されています。この様な状況に対応するために、計算機室では所内の計算機利用者に向けたセキュリティの手引書を準備中です。これを機に日頃利用しているマシンの戸締りを確認してみてください。
(電子計算機室 久保山哲二)

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 *  国家権力(国民)と大学と技術移転

 科学の知識や、技術の知恵が人類共通の資産であることは、最終平衡形としては、いまだに間違いないと思います。しかし、時定数がきわめて大きかった古代から近世までと異なり、現代では、短時間にその知恵から発生する技術が開発されることが容易になり、特定の集団にその利得が集中することも可能になってます。したがって国家権力(国民)もしくは産業界が、もし大学における萌芽的研究に将来の果実の芽を期待するなら、その果実の再配分が同じ速度で行われねば公平とは言えないでしょう。
 わが国は資本主義国です。つまり、経済活動の根幹は利益を生み出す私企業が担っております。大学から得た芽を果実に育てたとして、国に対して法人税という形、雇用している人間の所得税という形、で還元していると主張する事が多いのですが、その速度ではあまりに遅く、また果実の量としても不明確な形態です。知識と知恵の流通の駆動力をどう設定するかがこれからの課題だとと思います。工学という分野そのものを考え直す枠組みもいると思います。知恵の出しようには、いくつか考え方がありますが、現在の法律の枠組みではできること、できないことは非常にはっきりしております。国家公務員法では、国家公務員が私企業の経営に携わることを禁じております。では、営利企業にこれを任せればよいではないか。兼業も許されているのであるから、助言などを通じて間接的に影響力を行使できるではないか、とよくいわれます。しかし、大学の積極的貢献とそのリワードとしての大学への研究投資の加速を確実に達成するには経営に関わる意志決定にたずさわざるをえないでしょう。
 国立大学における萌芽的研究を行うメディアは教官およびその周辺の公務員であります。科学の真理探究を行い、知の果実を広く国民に知らしめればその任務を果たしたことになる、という古典的な範囲では、今の法律は妥当な規定でした。つまりこの"透明で深遠"な知が特定集団の利益のために誘導されたとすれば大きな不公平を残すからです。
 しかし、その知が経済的な利得を生み出す可能性があり、国家権力が国民のためにその利得を求めたとすれば、これは少々考え直さないといけません。サッチャーが、日本は基礎研究にただ乗りして利益のみをむさぼっていると宣言した瞬間に、"崇高"な知の敷衍が、国家権力によって、国の財として意識されたのです。当然大学も大学の財として考えることになります。これを、今後どう取り扱うことが日本の国民の将来にとって重要であると思います。技術の本質は特定人間の知識と経験であります。そのことを前提にすれば、技術移転というのは、人間の移動と接触によってのみなされると思います。そうであれば、これらの接触があらゆる場面で可能になることをなんとしてでも行うことが大事です。
 私の頭にある形式は必ずしも現在の法体系の中では可能ではないと思われます。しかし、みなさんのご意見をうかがいながら新しい枠組みを考えていきたく思います。折しも産学連携法案が今国会に上程されております。将来は(株)生研技術移転、こんなものができて、ここの果実は東京大学、生研、そして研究者に還元できる、そんな仕組みを、工夫したいと思っています。
 生研とはありがたいところで、今回も所長ほか沢山の応援をいただきました。新しいキャンパスに、駒場研究所を早く完成したいものです。
(第4部 前田 正史)

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PERSONNEL

 *   定年退官される方々

PERSONNEL
事務部 富澤敏一

PERSONNEL
千葉実験所 鈴木 昂

PERSONNEL
事務部 粂田 雅行

PERSONNEL
千葉実験所 飯沼 正雄

PERSONNEL
第1部 石田幸美


 *   退官のご挨拶

第2部 教授 大野 進一

PERSONNEL 生研は,技術官も多く,試作工場や映像技術室などの研究支援施設も有る.本部が都心で,千葉に広い実験所が有るというのも便利である.大学の研究所として恵まれた状況にあると言える.更に研究所の将来計画を絶えず真剣に議論している.このような生研で修士時代から37年を過せたのは本当に幸せであったと感謝している.
 ただ少し気懸かりを言えば,物には適正な規模があり,組織は簡素が良いと言うことである.次第に附属組織が増え,運営も複雑になって来た.生研の一体性を保つことに意を用いつつ,一層の成果を上げ続けられるよう期待している.


 *   転任のご挨拶

第3部 教授 原島 文雄

PERSONNEL----  六本木での36年 ------
私が六本木の生研にきたのは、22歳の時、大学院修士課程に進学したときでです。 ちょうどその年、生研は千葉から六本木に移転してきました。以来、大学院学生とし て5年、助教授として13年、教授として18年、途中、所長として3年、人生の主 要な部分を六本木で過ごました。まことに気ままな人生を楽しみました。生研の駒場 への移転を直前にして、さらに定年を2年残して六本木を去るのに思い残すことはあ りません。生研のますますの発展をお祈り申し上げます。4月より、日野市にありま す東京都立科学技術大学の学長として赴任いたしますが、日野の街を六本木に匹敵す る街にしたてあげようと思っております。


第1部 客員助教授 加藤 純一

PERSONNEL高次協調モデリング部門で客員助教授として2年間お世話になりました。具体的には,第1部の黒田先生の研究室に寄宿させていただく形で,週1度程度通いながらピコ秒パルスを用いた位相共役光学の研究などを修士の芦原君とともに行って参りました。短い期間ではありましたが,久しぶりに大学研究室の雰囲気を楽しませていただくとともに,異なる分野の研究の一端に触れることができ私個人にとって有意義で楽しい2年間でした。肝心の「高次協調モデリング」については,ついに最後までその真髄の理解もしくは方向付けができず残念でしたが,この点は後続の先生方に委ねたいと思います。もう1年程度と考えていたのですが,理化学研究所での本務もありこの3月を最後に失礼させていただきます。いろいろお世話になりました黒田・志村研究室のメンバーの皆様,第1部の先生方および事務室の皆様,本当にありがとうございました。



AWARDS

 *  受賞

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INFORMATION

最新の情報は、生研ホームページ・イベント情報で御覧になれます。

 *  平成10年度生研公開のお知らせ

平成10年度の研究室公開は、6月4日(木)5日(金)の2日間、例年通り開催されます。また、同時に行われる講演会及び公開内容は以下のプログラムを予定しております。
6月4日(木)11:00〜 11:50 「X線を使って物質の磁性を探る」 七尾  進教授13:00〜 13:50 「住まい方の文化」        藤井  明教授14:10〜 15:00 「音が見える」          高木堅志郎教授6月5日(金)11:00〜 11:50 「伝熱における制約を打破する試み」西尾 茂文教授13:00〜 13:50 「半導体集積回路(VLSI)の挑戦」櫻井 貴康教授      研 究 題 目              研究担当者●第1部(応用物理・応用力学・応用数学)建築物の耐震性能                   中埜 良昭フォトリフラクティブ効果の研究            黒田 和男                           志村   努ソフトマテリアルの物理                田中  肇光・電子・イオンで見る分子と表面のダイナミクス    岡野 達雄                           福谷 克之柔よく剛を制す─柔軟構造の解析と設計─        吉川 暢宏CED破壊力学の展開                 渡邊 勝彦地震時の地盤と構造物の損傷の累積           小長井一男●第2部(機械工学・精密工学・海洋工学)マイクロ加工と測定                  増沢 隆久燃焼器設計における乱流LESの適用          小林 敏雄乱流のラージ・エディ・シミュレーション        小林 敏雄                           谷口 伸行熱間素形材加工の変形・温度・内部組織解析技術     柳本  潤メガフロートと海洋のリモートセンシング        前田 久明                          林  昌奎砥粒加工における技術革新               谷    泰弘車両のダイナミクスと制御               須田 義大ボート競技と競泳の用具の研究             木下  健計算固体力学の研究                    都井  裕スマート構造の開発と応用                藤田 隆史多次元ビジュアルセンシング              小林 敏雄                           谷口 伸行半溶融加工技術の開発と応用              木内  学                           柳本  潤産学協同による生産技術開発              中川 威雄ナノメータオーダでの計測と制御              川勝 英樹海への新しい視点                   浦   環動力エネルギー機器の内部流れ             吉識  晴夫熱工学(熱輸送デバイス、ヒートシンク、冷凍保存)   西尾  茂文                           白樫  了●第3部(電気工学・電子工学・情報通信)100ノードパソコンクラスタによるデータウェアハウスとデジタルライブラリ                喜連川 優高性能、低消費電力VLSI              櫻井 貴康視覚情報工学                     池内 克史符号と暗号                      今井 秀樹マルチメディアコミュニケーション           Pア  薫サブ0.1μmVLSI MOSデバイスと単一電子デバイス平本 俊郎量子半導体エレクトロニクス              平川 一彦ナノ構造オプトエレクトロニクス            荒川 泰彦半導体量子マイクロ構造の物性とデバイス応用     榊  裕之ナノプロービング技術                高橋 琢二電磁界インパルス(EMP)の研究          石井  勝インテリジェント・メカトロニクスの展開       橋本 秀紀次世代マルチメディアシステムと概念情報処理       坂内 正夫マイクロマシンの製作・制御・応用             藤田  博之                          年吉  洋視覚的インタフェースとインタラクティブ・システム  舘村 純一●第4部(化学・金属・材料)多機能性 Ru(U)−Sn(U)バイメタリック触媒の合成と 篠田 純雄応用  固体アイオニクス材料 ―ソフト化学的アプローチ―  工藤 徹一焼結材料                      林  宏爾遷移金属―硫黄クラスターの合成と利用        溝部 裕司光機能生体系の解析と応用              渡辺  正超分子組織体の形成と機能              荒木 孝二応用セラミック物性                 岸本  昭高機能性セラミックスの設計             安井  至                          亀井 雅之地球環境から見た製造業 -LCAから人類生存問題へ- 安井  至新しい水処理技術                  鈴木 基之                          迫田 章義バイオアッセイによる化学物質の毒性評価       鈴木 基之                          迫田 章義材料中水素の可視化                 森    実機能性酸化物の作製と物性              小田 克郎希ガス希釈環境下におけるダイヤモンド膜の成長    光田 好孝複合材料界面:評価手法と持性制御の方法       香川  豊ゼロエミッションのためのソフトと技術        鈴木 基之                          迫田 章義複素環化学 −合成・物性・応用−                   白石  振作                                                  工藤  一秋抗ウイルス活性を持つ生理活性多糖の合成            瓜生  敏之イオン・電子デュアル収束ビームによる微小粒子の    二瓶  好正三次元元素分布解析X線光電子回折による表面・界面構造解析             二瓶  好正放射光を用いて磁性体を探る                        七尾    進原子尺度における薄膜構造制御と人工格子材料      山本  良一質量分析装置を用いた高温における物理化学          前田  正史サブミクロンSIMS装置を用いた微粒子三次元分析  二瓶  好正 ●第5部(土木・建築,都市・環境)リアルタイム地震防災システムの構築に向け      山崎 文雄イスラムの城塞集落(モロッコ、イエメン)      藤井  明                          曲渕 英邦能楽の空間                     藤森 照信鋼構造骨組の地震応答シミュレーション        大井 謙一空間構造の形態と力学性状              半谷 裕彦                          川口 健一宇宙から見た地球環境モニタリング          村井 俊治                          柴崎 亮介                          徳永 光晴地盤の変形と破壊の予測               古関 潤一都市、東南アジア、そしてグローバルな水の環境と水収支 虫明 功臣                          沖  大幹道路交通のインテリジェント化             桑原 雅夫音場の解析と計測                  橘  秀樹高品質吹付けコンクリートに関する研究        魚本 健人橋梁部材の変形と破壊                舘石 和男計測技術開発センターCFDによる居住環境モデリング           村上 周三―人体スケールから地球環境スケールまで―      加藤 信介国際災害軽減工学研究センター自然災害の軽減のために―実践がら学び実践へ返す―  須藤  研                         A.S.Herath                          目黒 公郎概念情報工学研究センター概念情報工学                    喜連川 優                          坂内 正夫                          Pア  薫                          生駒 俊明                                                   佐藤  洋一材料界面マイクロ工学研究センター材料界面マイクロ工学                工藤 徹一                          増沢 隆久                          香川  豊                          酒井 啓司国際・産学共同研究センター国際・産学共同研究センターにおける研究       国際・産学                          共同研究センター千葉実験所千葉実験所における研究活動の紹介          千葉実験所共同研究阪神・淡路大震災―あなたはもう忘れていませんか?― KOBEnet東京耐震工学に関する研究                耐震構造学研究グループ                          (ERS)     乱流の数値シミュレーション             乱流の数値シミュレーショ                                                   ン研究グループ(NST)                          電子計算機室メソスコピック&ナノ・エレクトロニクス       メソスコピック&ナノ・エ                                                   レクトロニクス研究グルー                                                   プ加工の先進技術                     プロダクションテクノロジ                                                   ー研究会集積化マイクロメカトロニックシステム        LIMMS/CNRS France                                     極微の機械を目指すマイクロメカトロニクス      マイクロメカトロニクス研                                                   究グループ●共通生研の新情報インフラストラクチャ          電子計算機室本所の学術・産学研究交流              広報委員会                          国際交流室                         (財)生産技術研究奨励会工作機械設備および製作品の写真展示           試作工場中高生のための東大・生研公開                      SNGグループ          問い合わせ先:TEL  3402−6231              http://www.iis u-tokyo.ac.jp/announce/ 地下鉄千代田線・乃木坂駅5番出口より徒歩2分地下鉄日比谷線・六本木駅4番または2番出口より徒歩7分申し込みは不要、聴講は無料です。皆様の来所を心よりお待ちしております。                                (研究交流部会・部会長 谷  泰弘)  

 *  Scientists for the Next Generation(S.N.G.次世代の科学者を)参加のご案内

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SNGでは昨年の「中学生のための東大生研公開」をはじめとして、中学・高校生が科学技術への興味をより一層深めることができるように女性研究者および技術者、大学院生が中心となって活動を行っています。興味をお持ちの方は、大島(内線2232、電子メール:sng@iis.u-tokyo.ac.jp)までご連絡ください。
(第2部 大島まり)

 *  平成10年度 常務委員(4月1日改選)(任期1年)

議 長   坂内  正夫  所  長委 員   吉澤    徴  第1部        小長井一男    〃        増沢  隆久  第2部        都井    裕    〃        榊    裕之  第3部        池内  克史    〃        篠田  純雄  第4部        前田  正史    〃        半谷  裕彦  第5部        須藤    研    〃

 *  第18回 イブニングセミナー「エレクトロニクスの最先端と夢」

現代社会の様々な側面を支える基礎としてのエレクトロニクス技術は、今後どのように展開し、将来の私たちの生活にいかにして関わってくるのでしょうか。このような疑問を抱いたら恒例のイブニングセミナーにお気軽にお越しください。講演の内容は最先端技術に関するものですが、わかりやすく解説いたしますので、予備知識は必要ありません。講演は各回とも本所第1会議室において、午後6時から7時30分まで行われます。なお、講演の内容は都合により変更になることがあります。ご了承ください。
5月15日	知的交通システム技術の最新動向		講師 佐藤洋一5月22日	情報セキュリティ技術			教授 今井秀樹5月29日	ロボットの世界				助教授 橋本秀紀6月12日	ミクロの世界の機械たち			教授 藤田博之						講師 年吉 洋6月19日	大規模パソコンクラスタとデータマイニング教授 喜連川 優6月26日	ナノテクノロジーと先端光デバイス	教授 荒川泰彦7月3日	2010年のLSIを考える			教授 櫻井貴康7月10日	シリコンデバイスはどこまで小さくなるのか助教授 平本俊郎7月17日	行動観察ロボット			教授 池内克史


PLAZA

 * 学術振興会ロンドン研究連絡事務所便り(JSPS Symposium : Research for the Next Generation)

第2部 木下 健

Photo 突然の依頼を受けて、1997年5月から2年の予定で、学術振興会ロンドン事務所長を務めるため長期出張をしています。しょっちゅう戻って来て、大学院生の指導をしたり、座長を務める委員会に出席したりしていますが、生研の皆様には大変ご迷惑をおかけしています。ロンドン事務所の仕事は、私の理解する所では、学振の活動を周知せしめる事、英国での高等教育・研究の実状調査、それとこれからご説明するシンポジウムの企画と実施です。これらの仕事のため既に約15の大学、研究所を訪問しました。
 さて、この第3番目の仕事はテーマ選びから始まりました。英国の大学の印象はどこも大変活発でダイナミックなことです。これは主にサッチャー政権時代の大学予算の大幅カットとその後引き続きの緊縮文教予算のため、大学の自主努力が身に付いたためと、ここ5年間で学生数が全体で3倍にも膨れたためのようです。国は金は出せないが、様々な大学独自の工夫を認めています。象牙の塔と言われた時代とは様変わりです。しかし自主努力も限界に達して、昨年大議論を巻き起こした授業料の有料化がすでに決定し(今までは英国民は大学の授業料は無料だった!)、国際競争に耐えうる大学のインフラ整備等が現政権の重要課題に挙げられています。一方日本でも大学改革は先延ばし出来ない緊急課題として議論されているところです。この問題では日英両国の現状は別のフェーズにあるものの、共通の問題という訳です。そこで大学改革の基礎ともいえる、次世代を担う研究のあり方を我々のシンポジウムで議論してみようと考えました。
 開催地は前駐日英国大使のSir John Boyd が校長をしているCambridgeのChurchill Collegeにお願いし、開催日を4月15日、16日としました。第1セッションでは次世代に貢献出来る、視野の広い研究の重要性や、基礎研究・戦略研究の定義等を確認するとともに、日英両国の実状、そしてこのシンポジウムで議論されるべき内容を確認します。発表者は、昨年来の高等教育改革の議論のもとになったDearing Reportをまとめた高等教育調査検討委員会のLord Ron Dearing、同委員会の委員でImperial College の校長のSir Ron Oxburgh、そして吉川弘之学術会議会長(学術振興会会長)です。第2セッションでは研究の人間活動への貢献として、技術史・社会科学・人文科学を含む問題をImperial Collegeの科学史センター長のDr Edgerton、British Academyの人文研究委員会委員長のProf Laverとともに考えます。また特に政策立案過程において長期的科学的視点を反映させる事の重要性を前科学技術閣外大臣のIan Taylorとともに考えます。Texas Instruments Japanの生駒俊明先生には産業界との適切な距離についてお話し頂きます。
 第3セッションは研究支援体制についてですが、優先研究分野検討委員会の健康生命科学分科会長のProf Fergusonに優先研究分野の決定法について、Manchester大学科学技術政策研究所長のProf Georghiouに科学技術政策の現状とあり方についてお話し頂きます。名古屋大学の野依良治先生と、昨年度のノーベル化学賞のSir Harry Krotoにはご自身の経験から支援体制のあり方についてお話し頂きます。第4セッションは全体の締め括りとして、次世代の研究の倫理のあり方について、英連邦大学協会のProf Gibbonsと東京大学の蓮実重彦総長にお話し頂きます。
 以上のように生研の皆様にも興味を持って頂ける内容だと思いますので、本当はCambridgeまで来て、議論にご参加頂きたいのですが、せめて会議後出版するプロシーディングスを読んで頂ければと思います。

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FRONTIER

 * VLSIデバイスと単一電子デバイス

 第3部 平本研究室

Photo 近年の半導体大規模集積回路(VLSI)技術の進歩は目覚ましく,今日の高度情報化社 会はまさにVLSI技術によってもたらされたといっても過言ではありません.よく知ら れているように,VLSIの集積度は過去約30年にわたって約3年で4倍の割合で急速に増 大し,それに伴い半導体デバイスのサイズも3年で約0.7倍に微細化されてきました.
現在すでにデバイスサイズは量産レベルで0.25μmまで微細化されており,このまま 進むと10年以内に0.1μm,約20年後には0.03μmのデバイスが実現する見通しです.
一体,半導体デバイスの微細化はどこまで進むのでしょうか?
 平本研究室では,この疑問に答えるため,将来のVLSIデバイスの研究を行っていま す.特に,最近の携帯機器の普及により重要度が増している超低消費電力デバイスの 実現を目標とし,以下の2つのアプローチで研究を進めています.
 第一のアプローチは,現在のVLSIの延長線上に将来のVLSIデバイスを捉えることで す.高速性を損なわずに超低消費電力を実現するため,微細化を進めつつ,極低電圧 でも動作するVLSI MOSデバイスを設計し,実際に試作しています.デバイスを微細化した場合の問題点としては,量子効果や特性ばらつきなどが挙げられます.量子効果の応用は化合物半導体などで盛んに研究されていますが,シリコンでは量子効果は一般にデバイス特性を劣化させる効果として働きます.一方,デバイスサイズが0.1μm以下に微細化されると,デバイス中の不純物原子数も100個程度と大幅に減少し,その数は統計的にばらつきます.それがそのままデバイス特性のばらつきの原因となります.従って微細デバイスでは,これらの効果を最小限にとどめる設計手法が必須です.
 第二のアプローチは,全く新しい概念を持つ究極の半導体デバイスを研究すること です.電子1個で動作する単一電子デバイス----これが私たちの考える究極のデバイ スです.一般にデバイスの消費エネルギーは電子数に比例するので,単一電子デバイ スは低消費電力デバイスの極限でもあります.これを将来のVLSIデバイスに応用する べく,シリコンMOS構造を用いて単一電子デバイスの試作・評価を行っています.デ バイスサイズが極めて小さくなると,個々の電子に働くクーロン反発力を利用して, 電子を一つ一つ制御することが可能となります.図は,その現象をMOSデバイスで観 測したものです.通常,この現象は極低温でしか観測されませんが,約6nmという微 小サイズにより室温でも観測できることを確認しています.
 将来的には,上記2つのアプローチが融合して,少数の電子を正確に操ることので きる超低消費電力MOSデバイスがVLSIの主流になると予想して研究を進めています.
(図の説明)単一電子デバイスとして動作する極微細MOSデバイスにおける微分コンダクタンスの 電圧依存性.ダイヤモンドの形をした部分がクーロン力により電子数がゲート電圧に より制御されている領域を表す.これは4.2Kでの特性であるが,室温でもこの効果が確認できる.
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 *  編集後記

私が通勤に利用する小田急線では複複線化の工事をしている。毎日電車の窓から眺めていて、こんな狭いところに線路ができるのだろうかと疑問に思うのだが、日々の進歩は遅くとも1年も経つと目に見えてできあがってくるのがわかるから驚いてしまう。自身の研究もそうありたいものだと思う。ニュースの編集部会員になって2年たった。編集にちゃんと貢献してきたのかと問われると正直言って自信はない。この間の目に見える変化といえば、A4版化と増刷くらいだろうか。質量の増加が進歩と呼べるかどうかは疑問であるが(人の体重の場合は大抵嫌われているようだが)、読みやすくなったといっていただけると幸いである。
さて新年度第一号は所長交代の記事がトップをかざっています。鈴木先生ご苦労様、坂内先生ご活躍を期待しております。(福谷克之)