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日の丸半導体「エルピーダメモリ」ガラパゴスから脱却ならず破綻!経産省、取引中小へ金融支援

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80年代は世界半導体シェア8割が韓国勢の追撃で3位に後退
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半導体DRAM(Dynamic Random Access Memory:半導体メモリの一種)世界3位のエルピーダメモリは自主再建を断念し2月27日、会社更生法を申請し経営破綻しました。負担総額は4,480億円にのぼり国内製造業では過去最大の規模となりました。
パソコンなどに使われるDRAM市場は過去、エルピーダメモリが世界で約8割のシェアを占めていましたが、韓国サムスンやハイニックス半導体の追撃で現在は2社で約6割強のシェアを握っています。パソコン需要の低迷や韓国勢との価格競争、さらに歴史的な円高、タイの洪水被害など幾十もの要因が重なりエルピーダの業績は悪化、破綻に追い込まれました。

国のお墨付き企業:産活法適用第1号で公的資金300億円を調達
エルピーダメモリは平成9年、日立とNECが統合し設立され、平成13年に三菱電機のDRAM部門も統合され日本で1社だけの半導体メーカーとなりました。平成20年のリーマン・ショック時には、体力が弱ったところに国策として翌21年に改正された産業活力再生特別措置法の適用第1号としてエルピーダメモリに公的資金300億円を融資。まさしく国が後押しする最強の日の丸半導体企業となりました。

エルピーダメモリ:スーパーコンピューター用メモリ並みの高精度
エルピーダメモリのメモリは、元々NTTの電話交換器やスーパーコンピューターなどに組み込まれるよう開発されているため、高性能、高耐久性と優れた記憶装置。このため精度維持のために設備投資にもコストがかかり追い上げる韓国半導体メーカーとの競争力に劣るようになりました。半導体でも日本のガラパゴス化が露呈されました。
一方、サムスンやハイニックスなど韓国勢は、当初からパソコン用にメモリを開発しているためスーパーコンピューターに求めるレベルの精度は必要なくコストを安く抑え世界で市場を伸ばしてきました。さらに円高、ウォン安にによって競争力が向上し世界市場でシェアを握ることとなりました。

経産省:直接取引の中小へセーフティネット全額保証適用
半導体はすそ野の広い産業のため、関連企業への影響が懸念されます。経済産業省によるとエルピーダの取引先は、中小企業を含め数百社に及んでおり、下支えとなった中小製造業などへの支援策を2月28日に発表。資金繰りに影響が出た中小企業には日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などが融資を実行。エルピーダメモリと直接取引のあった中小企業には、金融機関からの融資を全額保証するセーフティネット保証が適用となります。
半導体に限らず、携帯電話や家電製品、自動車など国内市場をターゲットにして研究、開発し市場に投入しても世界では競争力に劣る時代ともなりました。世界市場へ向け、どの製品にどの技術を使い価格を反映して国益をもたらすのか、企業だけでなく官民一体で追及しなければエルピーダメモリ同様の結果を招きかねないでしょう。


[2012.3.2]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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