サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会に出場するブラジル代表のカカ選手(28)とカメルーン代表のエトー選手(29)。世界が注目するスーパースターとなった2人は、若い頃に日本の山あいの町で地元住民と親交を温めた。住民たちは2人の成長を喜び、W杯での活躍を願っている。
■17年前に来日「最上町の息子」
「5年前のまま。新しいのに取り換えたいんだけどね」
山形県最上町で建築設計業を営む押切政志さん(60)は目を細めた。我が子をいとおしむかのようだ。
宮城県との県境の町の国道沿いに、ブラジルのMFカカ選手の特大パネルが掲げられている。所属するスペインリーグのレアル・マドリードではなく、かつて在籍したイタリアリーグのACミランのユニホーム姿だ。
ブラジル代表の司令塔と東北の自然豊かな町という組み合わせの縁は17年前の秋。町主催の国際交流行事でブラジルの名門・サンパウロFCのジュニアチームが来町した。約20人の子どもたちの中に当時11歳のカカ選手がいた。押切さんは一行の世話役だった。
子どもたちは2週間の滞在中、ホームステイをしながら芋掘りなどを体験した。地元のサッカー少年団との試合では「当時からセンスが抜群だった」(押切さん)というカカ選手が最優秀選手となり、賞金5千円をもらった。
カカ選手の父ボスコさんが建築技師だったこともあり、押切さんと妻の久子さん(58)は、カカ選手の一家と、その後も連絡を取り合うなど交流が続いた。2002年のW杯日韓大会では、来日中のカカ選手に、我が子の成長を願う意味を込めてこいのぼりを手渡した。数日後、ブラジルが優勝を決めた横浜国際総合競技場のスタンド最前列に、こいのぼりは掲げられていた。
07年。トヨタ・クラブW杯で来日したカカ選手は、財布から四つ折りの5千円札を取り出して、こう言ったという。
オシギリ、これはサッカーで初めてもらった賞金。ぼくの大切な宝物――。
「律義な子。鼻は高いけど偉ぶるところが全然ない」。今では年収20億円以上とも言われるスーパースターとなったカカ選手は、子どものいない押切さん夫妻にとってはめったに会えない息子のような存在。今大会のブラジル戦の日は、町の仲間と集まって声援を送る。
■いじられキャラ、今は「別人みたい」
カメルーン坂、カメルーンハウス、カメルーン弁当、「チャンピオンめざしてカメルーンがんばれ」の横断幕。02年日韓大会のカメルーン代表キャンプ地として一躍全国区になった大分県の旧中津江村(現・日田市)は、今もカメルーン一色だ。
8年前、“遅刻騒動”の末に村にやってきたカメルーン代表チームに花束を渡した津江みちさん(34)は、宿泊先兼練習場だった村のスポーツセンターで撮った写真を大切に保管している。「スタッフがエトー選手を連れてきたので、宿泊所の洗面所で『写真いいですか』って」
当時、若手のエトー選手はチーム内では“いじられキャラ”だった。故障していてチームメートとは別メニューの練習をしており、自室に引きこもっている時間も長かった。写真撮影は気分転換になったのか、「『おれと一緒にカメルーンに行くか?』って。無邪気な感じでした」。
その後、スペインリーグの強豪バルセロナやイタリアのインテル・ミラノで活躍し、アフリカ年間最優秀選手賞にも何度も輝いた。津江さんは、07年に大分であった日本代表との親善試合で来日中のカメルーン代表の宿舎で、エトー選手と再会した。「チームの中心選手として振る舞っていた。02年とは雰囲気が別人でした」
今大会、カメルーンは1次リーグで日本と同組。津江さんは「両チームとも決勝トーナメントに進めれば。エトー選手にも大活躍してほしいですね」と期待している。
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7月11日現在