酸性雨の仕業? 世界遺産の中国・楽山大仏、劣化進む
2006年12月15日18時21分
世界最大級の古代仏像として知られ、世界遺産にも登録された中国四川省の楽山大仏が、著しい劣化に襲われている。顔には上下に黒い線が染みつき、鼻は黒く染まり、体でも岩がはげ落ちる現象が少なくない。長年の風化に加え、経済発展に伴って深刻化している酸性雨が拍車をかけているようだ。地元の管理部門は劣化状況の実態調査を始め、保護対策を強める意向だ。
酸性雨の影響を受けているとされる楽山大仏。顔に走る無数の筋は涙のようだ=四川省楽山市で
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横幅が10メートルある巨大な弥勒仏のやさしい顔の表面は幾筋もの黒い線が染みつき、「黒い涙」が流れているようだ。
四川省中部の山に囲まれた楽山市は、とくに冬は深い霧に包まれることの多い盆地だ。複数の地元の研究者の話では、高さ71メートルの全身のあちこちに亀裂が走り、くぼみや穴が多く見られ、30年前と比べて体が小さくなった。
地元の成都理工大学と日本の山形大学理学部の柳澤文孝助教授(環境化学)らの研究チームは98年から、省都・成都付近の大気汚染や酸性雨の調査を続けてきた。
調査を担当した成都理工大の元教授、賈疏源さんや柳澤助教授によると、大仏を形づくる砂岩には炭酸カルシウムの量が多いうえ鉄分も含まれる。酸性雨にあたると化学反応を起こしてカルシウムが溶け、強度が落ちて剥落(はくらく)しやすくなる。剥落個所に粉塵(ふんじん)などの汚れが付着。さらに鉄分も溶け出し、汚れが付着して黒ずんだらしい。
四川省は、石炭を利用する発電所や工場が多いことなどから全国でも酸性雨が多い地域とされる。ここ数年、中国では酸性雨は改善したと言われるが、柳澤助教授は「建設ラッシュによって舞い上がる粉塵の中に含まれたカルシウムを通じて中和され、見かけ上は良くなっているが、大気汚染はひどくなっている」とみる。
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