朝日新聞デジタル：熊野磨崖仏（大分県豊後高田市） - 山口

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旅しよ！

熊野磨崖仏（大分県豊後高田市）

〈illustration：栗須恵子〉

熊野磨崖仏の不動明王（左）と大日如来＝大分県豊後高田市

　　【女屋泰之】国東半島に位置する大分県豊後高田市の山中には、岩壁に直接彫り込まれた国内最大級の「磨崖仏（まがいぶつ）」２体がそびえる。「熊野磨崖仏」だ。仏像なのに、神ともゆかりが深い。一帯は「神仏習合」の地としても有名なのだ。

　　参道入り口の胎蔵寺から坂道を登り終わると、木々が茂るうっそうとした中に、断崖の岩に彫り込まれた不動明王が現れた。高さ約８メートル。眼球が飛び出し、牙をむき出しにして唇をかんでいる。隣には、高さ約６・８メートルの大日如来がそそり立つ。

　　ともに、国の史跡・重要文化財に指定されている。

　　市や付近の住民らで磨崖仏の手入れなどを手がける「熊野磨崖仏管理委員会」の畑尾昭光さん（６５）によると、不動明王は一般的に憤怒の表情が多い。ここの不動明王は、ほおの肉付きが良く丸みを帯びた表情。「憤怒というより、ほほ笑むような優しい表情に見る人もいるようです」と畑尾さん。

　　全国にある八幡宮の総本山、宇佐神宮（同県宇佐市）の八幡神の化身が７１８年、つくったと伝えられている。熊野磨崖仏と呼ばれるのは、近くにあるのが熊野神社だからか。

　　仏像なのに神社の化身が作ったと伝えられるなど神と関係するのは、国東半島が神と仏の共存する神仏習合の地だからだ。

　　国東半島では寺院と古来の信仰が結びつき、山岳仏教文化が栄えた。一帯にある寺院群の総称から「六郷満山文化」とも呼ばれる。木造の本堂がひっそり立つ熊野神社の裏手にも、小さな石仏が安置され、不思議な雰囲気だった。

　　再来年の２０１８年は、六郷満山の開創（かいそう）１３００年。地元では記念の商品開発が相次ぐなど、お祝いムードが高まる。不動明王が朗らかな表情に見えたのは、長い長い風雪の末なのかもしれないと思った。

　　　　　　　　　　◇　　　　　◇

　　東九州道の大分農業文化公園インターチェンジで降りて、豊後高田市方面に２０分ほど。電車の場合、最寄り駅は隣接する杵築市のＪＲ日豊線中山香駅。駅から目的地への路線バスはないため、タクシーで県道６５５号を経由して１０分ほど。

　　◆楽しむ

　　熊野磨崖仏から車で５分ほどの同県杵築市には、旅館「山香温泉　風の郷」がある。肌触りのなめらかな泉質が自慢の湯。丸おけの風呂は、加水なしの源泉掛け流しの湯だ。２７度前後のぬるめの湯でゆっくりつかれる。午前８時半～午後１０時（最終受付は午後９時）は、日帰り入浴もできる。入浴料金は中学生以上５００円、小学生２５０円。また敷地内にはパークゴルフ場もある。

　　◆出会う

　　真木大堂には、阿弥陀如来座像や不動明王立像など木造の仏像９体が安置されている。平安時代末期の作と推定され、いずれも国重要文化財に指定されている。見どころは大威徳明王（だいいとくみょうおう）像。顔と腕と足を六つずつ備え、神の使いの水牛にまたがっている。手には矛、長剣などの武器をとり、人々の害を追い払うとされる。約２・５メートルの高さは大威徳明王像としては国内最大級として知られる。

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