朝日新聞デジタル：鳥取県警初の警察犬指導手　松塚春輝さん - 鳥取

島鳥ひとひと

鳥取県警初の警察犬指導手　松塚春輝さん

直轄警察犬「ドリー号」と触れ合う松塚春輝さん

◆事件解決へ　直轄犬と歩む

　行方不明のお年寄りを捜したり、逃げた犯人の足取りを追ったり。人間をはるかに上回る能力で捜査などを助ける警察犬の「指導手」に、この春就いた。鳥取県警では初めてで、日々を訓練に費やし、有事には一緒に現場に向かう。

　鳥取県内の警察犬は従来、一般家庭で飼われて訓練を受け、県警からの要請で出動する「嘱託犬」だけだった。しかし夜間の出動や凶悪犯への対応で制約があるため、導入されたのが「直轄警察犬」だ。犬と訓練担当者を自前で持っておけば、自由度が増す。

　「成果を上げるためどう訓練すればいいか、試行錯誤が楽しみ」。活動を始めてまもなく３カ月だが、既に「天職」と感じている。

◇◇

　米子署で刑事課にいた頃、警察犬が万引き犯の逃走経路を遺留物から割り出したのに驚かされた。それまでは動物全般が好きという程度だったが、「現場でともに活動してみたい」と関心を寄せるように。県警が２０１７年度に始めた指導手の募集に応募し、複数の希望者の中から候補に選ばれた。

　警視庁に出向して訓練の基礎を学び、１９年度からは鳥取市内の民間訓練所で技術を磨いてきた。直轄警察犬第１号になった「ドリー・オブ・Ｍ２・フィールド」（通称ドリー号）は、その時から一緒に訓練した相棒。ジャーマンシェパードの雌（３歳）で性格は人なつこく、甘えん坊という。

　ドリー号の自宅にあたる犬舎は、鳥取市郊外の警察学校敷地内にある。訓練はほぼ毎日。仮想犯人の歩いた経路を追い、遺留物を発見する訓練などに約２時間かけている。

　重視するのはドリー号の反応。痕跡を追うことができているのか、迷っているのかの見極めだ。体調を崩す時もあるし、暑い日や食事の直後は集中力が下がる。集中できていないのに活動を続けても疲れさせるだけ。「私自身、どこで判断するかは苦労するところ」と語る。

◇◇

　鳥取県西部は犬舎から遠いこともあり、県内に９匹いる嘱託警察犬の制度も当面存続する。だが大型犬を飼う人の減少と高齢化などで嘱託犬は減る傾向にあり、県警は直轄犬の出番が高まるとみて将来は２匹態勢を目指している。

　直轄犬としての活動は４月から計１０回（６月２１日時点）。ほとんどは行方不明者の捜索だが、今のところ発見などの結果には結びついていない。ただ、「ドリーと息が合っていると感じた時、自分の訓練方法は間違っていないんだと安堵（あんど）できる」と話す表情に焦りは見えなかった。

　まつづか・はるき　鳥取県米子市出身。大学を出て２００８年に県警入り。警視庁出向、民間訓練所での訓練を経て２２年４月、直轄警察犬の初代指導手に。現在の所属は刑事部鑑識課機動鑑識第一係で巡査部長。

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