朝日新聞デジタル：県立相模原（５） - 神奈川

県立相模原（５）

水越は岩手県で人気のアナウンサー

アナウンサー時代は現場を飛び回ったという田原

■きっかけ広げてアナウンサーの道

　取材相手に見送られてタクシーに乗り込むと、運転手の男性が話しかけてきた。「今の人、水越さんでしょ。体調崩して番組を休んだ時、寂しかったんだ」。運転手が「今では岩手の人」と自慢したのは、ＩＢＣ岩手放送アナウンサーの水越かおる（５６、１９８０年卒）だ。

　目立つことが苦手という水越がアナウンサーを目指すきっかけとなったのは、中学１年の担任の一言だった。「君は将来、アナウンサーがいいんじゃないか」。理由は「丸ぽちゃだから」と訳が分からなかったが、それ以来、「思い込みが激しい性格。ずっと『アナになるんだ』」と思い続けた。

　進学した県立相模原高校は勉強が出来る人ばかり。入学早々、授業についていけなくなった。そこで打ち込んだのが、放送委員会と男子バレーボール部のマネジャーだった。

　放送委員会では、昼休みの放送のほか、関東全体をエリアとするラジオ局からの依頼で自校の高校野球部を取材し、放送されたことも。「しゃべるのはアナウンサーだけど、番組には様々な人が関わる。みんなで何かを作り上げる楽しさを知った」

　バレーボール部のマネジャーは「教室に勧誘に来た先輩がかっこよかった」という理由。競技の経験もなく、当初は何も仕事を任せてもらえなかったが、「何かやらせてください」と上級生部員に直訴した。球出しも出来るようになった。

　「教室には私の居場所がない。だから作ろうと思った」と振り返る。アナウンサー歴は３５年目。目立つのが嫌いだった少女は今、縁もゆかりもなかった土地にしっかりと根付いた。

　テレビ朝日のアナウンス部統括担当部長、田原浩史（５３、８４年卒）は「愛校心がないまま県相を卒業したんです」と苦笑い。本当は学区の違う伝統校に進学したかったのだという。

　言葉に興味があった。高校の国語教師になろうと、大学時代に県相で教育実習に臨んだ。担当クラスの女子生徒の言葉が人生を変えた。「先生、声がいいからアナウンサーになれば」。アナウンサーは全く頭になかったが、「『あっ、そういう仕事があったね』と」。学問として言葉を捉えるのでなく、実践する仕事に興味がわいた。

　テレ朝の入社試験。ライバルたちは、ゴルフ部の部長やハリウッド映画のエンドロールに名前が出たバイリンガルなど華々しい経歴を持つ。日本史を勉強している学生はいきなり関ケ原の合戦場の実況中継を始め、驚いた。「この人たちに勝るような自己ＰＲは言えません。でも、やりたいことはある。人の中に飛び込んで取材がしたい」。日本語教師を目指して他大学の先生を訪ねて回った経験を話した。入社後、ニュース番組では現場からマイクを握った。

　県相２年の時に出会った友人と勉強で競い合わなかったら、第１志望の大学に入れなかったと思う。プロ野球の取材で神宮球場に行った時、教育実習時の生徒がアルバイトをしていた。妻はその友人。「振り返ってみると、県相にずいぶんお世話になっていますね、私」

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　県立相模原高校は今回で終了します。須田世紀（県立福島工業高校卒）が担当し、敬称略で紹介しました。次回は９月に掲載予定です。

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