朝日新聞デジタル：原田雅彦さん（６）長野五輪越える歴史を - 北海道

土曜「聞く・語る」【ひと模様】

原田雅彦さん（６）長野五輪越える歴史を

トレーニングする選手たちを背に、五輪シーズンに向けた意気込みを語る原田雅彦さん＝札幌市東区、白井伸洋撮影

●ジャンプ金メダリスト・原田雅彦さん

■若手選手に託す夢

　私が現役を引退し、指導者になって１０年以上になりますが、今も「続いている」という感じです。選手として出た最後のトリノ五輪の後も、次のバンクーバー、そしてソチ五輪も、指導者として、またテレビの解説者として現地にいるので、まだまだ「ジャンプ人生」の中にいます。

■個性出して

　《来年は平昌（ピョンチャン）五輪。そのシーズンに向けて、ゴールデンウィーク明けから本格的な練習が始まった》

　雪印メグミルクは私が監督で、一緒に五輪に出場してきた岡部孝信さんがコーチ。そしてトレーナーたちと一緒に五輪を目指しています。このチームは７０年以上の歴史があって、ずっと五輪に選手を出していますから、そういう選手を育てるのが我々の使命です。

　でも、指導者って難しいと、つくづく思いますね。以前は自分なりにやっていたことを、今度は人に伝える。大変難しいです。

　皆さん同じことを言うかもしれませんが、最近、若者に個性がないというか……。言われたことはきちんとやるんですが、仲間と横並びになって、自分でこうしようということが、あまり感じられない。自分が何かを達成しようとするなら、自分のいいものを最大限出してほしいです。

　我々が環境を整えるのはいいんですが、それをやり過ぎているのかなあ……。ビジネスでも何でもそうでしょうけど、「自分はこうだ」ともっとアピールすればジャンプも伸びるのにと思います。

　私は、セオリーとは違って、高く飛び上がるジャンプを続けました。ライバルたちは「原田さんは、なんであれで飛べるんだ？」と不思議だったと思います。それでビッグゲームで優勝するから、あんなジャンプに負けたくないと、みんな懸命になる。それがジャンプ界全体を引っ張り上げた面もあるそうです。私自身は、自分の武器を追求できて本当に良かった。

■勉強の日々

　《指導者として試行錯誤を繰り返しながら、若手に託す夢がある》

　我々は、選手を五輪の舞台に立たせるのが仕事です。選手にいつも言うんです。表彰台を独占した１９７２年の札幌五輪から２６年後の長野五輪で、我々は一つの歴史をつくった。その長野からもう２０年が経つわけだから、「長野を越える歴史をつくってくれ」と。それが今の私の目標、自分を越える選手を育てるということです。

　最近はスキー連盟の仕事もするようになり、勉強の日々です。日本オリンピック委員会の強化にもかかわっています。五輪で選手がどんな力を発揮できるか、少しずつですけど、やっているところです。日本全体の力になれるよう、私も頑張っていくつもりです。

　（聞き手・構成　秋野禎木）

　◆原田雅彦さんはこれで終わります。次回６月１０日からは、料亭「さわ田」元女将（おかみ）の澤田啓子さんが登場します。

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