今福龍太『原写真論』



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 今福龍太『原写真論』
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  Book Design:佐藤篤司

  発行:赤々舎

  Size: H185mm × W148mm
  Page:344 pages
  Binding:Softcover

  Published in June 2021
  ISBN
978-4-86541-135-5



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About Book


写真が生まれる場所に潜んでいた〈原写真〉という衝動を、
イメージ発生の現場に追い求めた鮮烈で厳格な批評の集成。


本書は、文化人類学者・批評家である今福龍太氏が、これまでさまざまな媒体で発表してきた写真論、批評的エッセイから、自身の批評の一つの到達地点を簡潔に示すという意図によって厳選しまとめられた、2000年以降に発表された批評テクストの集成である。

"写真そのものではなく、その前に、その背後に、あるいはその彼方にあって明滅する「世界」と「眼」とのむすびつきの「原史」" に一貫して関心を抱きつづけてきた氏の筆は、写真が生まれる場所に潜んでいた〈原写真〉という衝動を推度し、山村雅昭、大原治雄、ブロツキー、ペドロ・メイヤー、東松照明、レヴィ=ストロース、ミゲル・リオ・ブランコ、多木浩二、セバスチャン・サルガドなどへの省察を通し、写真が生まれた場所を問いかける。
〈原写真〉という、写真の感情、意思、欲望、衝迫、痛み、そして希望─。
写真が日常を覆い尽くし、私たちの注視の眼からこぼれ落ち、思考の対象としては見過ごされてゆく、「撮るまえに撮られてしまっている」時代に抗する一冊である。




《目次》

 Prologue  顔が顔であった時代に 


I

 「瞬間の歴史」を証す人 大原治雄とブラジル
 「ここではない場所」への想像力 ブロツキーあるいは都市への不可能な帰郷 
 親密さと聖なるもの ペドロ・メイヤーの〈ディジタルな真実〉
 サルガドの「大地」(テーラ)とともに 

II

 映像による占領 戦後日本における写真と暴力
 長崎から、時の群島へ
 ユートピアの震える風カメラを持ったディオゲネス 


III

 時の地峡をわたって レヴィ=ストロースと写真
 眼と眼のはざまに砂漠が アブ・グレイブを目撃しないこと
 墓標を残すな! 
 家々は海深く消え去りぬ 多木浩二の〈反│建築写真〉


  E p i l o g u e  大地の平和、映像の平和

 
 あとがき

 初出一覧
 図版資料出典

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" 〈原写真〉とは定義しがたい謎のような運動体である。それは「世界」じたいが内部に持つ、イメージの豊かな生産力のようなもの。
外界からの刺戟によって写像イメージを生みだす、なんらかの情動やメカニズムがたしかに世界にはあったのである。近代の写真術の発明とは、その内在的な力の必然的な帰結に過ぎないのではないか。私はどこかで、写真そのものではなく、その前に、その背後に、あるいはその彼方にあって明滅する〈原写真〉としか呼びようのない「世界」と「眼」とのむすびつきの「原史(ウアゲシヒテ)」(ベンヤミン)に、ひたすら関心を抱きつづけてきたのだと思う。(「あとがき」より)" 


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"あなたが、写真が生まれる場のことを「暗い部屋」ではなく「明るい部屋」と呼んだとき、私のなかのなにかが変わった。買ったばかりのその本の活字を、ブリュッセルからパリまでの急行列車のなかでひたすら追いつづけた。暗闇の謎から生まれるはずの解釈の言葉は、車窓を飛び去ってゆく田園風景のように後ろへ逃げていった。私から、それとも、私が考える「写真」なるものから? ことばをもって考えるということの普遍性が立ち去った車窓に、とるにたらないと思われていた個別性の光がフランドルの夕暮れの斜光とともに差し込んだ。眩いほどのヤコブの梯子。明るい天穹から降りてくる天使たち。あなたの本にはさまれた、一人の黒人奴隷の写真から発する視線に私は射られた。パリのベレー帽の少年が抱える子犬の虚ろで漆黒の眼を見て涙が流れた。明るい未知の部屋のなかで、私は新しい旅を信じはじめた。"





Artist Information 


今福龍太 (Ryuta Imafuku)


文化人類学者・批評家。一九八〇年代初頭からラテンアメリカ各地で人類学的なフィールドワークに従事。早くから写真、映画、音楽、メディア、スポーツ、文学等の領域でも旺盛な批評活動を展開。二〇〇二年から奄美・沖縄・台湾の群島を結ぶ遊動型の野外学舎〈奄美自由大学〉を主宰。ブラジルのサンパウロ・カトリック大学でも随時集中セミナーを持つ。著書に『ミニマ・グラシア』『薄墨色の文法』『ジェロニモたちの方舟』『レヴィ゠ストロース 夜と音楽』『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』(讀賣文学賞)『ハーフ・ブリード』『ブラジル映画史講義』『宮沢賢治 デクノボーの叡知』(宮沢賢治賞・角川財団学芸賞)『サッカー批評原論』ほか多数。二五年にわたる対話を集成した『小さな夜をこえて』もある。主著『クレオール主義』『群島─世界論』を含む新旧著作のコレクション《パルティータ》全五巻(水声社)が二〇一八年に完結。