■第1ターン結果
●触手名人「ザ・蝶結び」
迷宮化した鎌倉女学院。
中高一貫のこの学院に、今、汚らわしいオークが徘徊している。
ぬちゃりぬちゃりと廊下をねりあるくオークの群れ。
女子トイレの中に入り込み、その内部を触手で汚しながらマーキングするオーク。
ケルベロス達が踏み込んだ学院の中は、むわっとするオークの体臭で満ち満ちており、思わず、口と鼻を覆うものが続出する。
「これは臭い」
「この匂いを嗅いでいると、変な気分になってくるぞ」
「豚ってこんなに臭いの?」
「豚は本当は清潔好きなんだ、オークと一緒にしないでもらいたい」
口々にそう言い合うケルベロスは、学院を襲う汚らわしきオークの掃討に動き出した。
オークの体臭で怪我された構内に、オークの血臭が入り交じる。
と、そこに複雑にからませた触手を、見事に操りつつ、この階層の主である、歴戦のオークが姿をあらわした。
そのオークに勇敢に立ち向かったのは、守矢・鈴(夢寐・e00619)のライドキャリバーである、グラナートだった。
ブルルルルゥと低く振動音を唸らせて、主人とそしてケルベロス達を守ろうとする姿に、鈴は満足気にメガネをくいっとした。
そのグラナートの勇姿に、だが、そのオークはグフフと笑いつつ、触手をうねうねと動かしてみせた。
「サーヴァント風情が片腹痛いブヒー。メギドラス様配下、最強の触手職人とはわいを止められるかでブヒー」
いうが早いか、そのオーク。触手名人「ザ・蝶結び」は、自らの触手を空中で交差させると、折り曲げ、くぐらせ、ひねり、まわし、複雑怪奇に重ねあわせたのだ。
「良く見るブヒー。これがわいの奥義ブヒー。そして、ここをこう結ぶと見事な蝶結びになるブヒー。先からは汁も出るブヒー」
確かに触手の先端からは、透明な体液がしみだした後、汚らしい白濁液が滲み出てきている。
周囲に、目の前のオークが出した体液の匂いがむわっと広がった。
そして、奥義を魅せつけた、触手名人「ザ・蝶結び」は恍惚とした表情でドヤ顔を見せる。
「ブルルルルゥ」
まるで、それだけか? と問うように、グラナードのエンジンが再び唸った。
「そうブヒー、素晴らしいでブヒー。ブヒヒ?」
通じているのかいないのか、触手名人「ザ・蝶結び」はそう返したが、グラナードはそれ以上応える事は無かった。
何故なら、スロットルを全開にしてオークへと突撃し、デオッドヒートドライブで蝶結び状態の触手ごと轢き潰したのだから。
「グルウゥゥゥ」
また、汚らわしいものを斬ってしまったとでもいうように、グラナートは、轢き潰した触手の粘液を地面にこすりつけると、主人である鈴の元へと戻ってくる。
戻ってきたグラナードを、鈴は優しく褒めるのだった。
「この調子で宜しくね」
鈴にそう褒められて、グラナートは少し嬉しそうにホイールを回転させるのだった。
●女子高生スメルハンター
オークの体液と血臭に満たされた鎌倉女学院校舎。
ケルベロス達は、女学生を襲撃しようとするオーク達への義憤を胸に、触手オーク達を切り刻み、迷宮化した学園の校舎を奥へ奥へと侵攻していく。
八房・九葉(浮雲・e00681)も、汚らわしいオーク達を、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、鎧袖一触に蹴散らして、前へ前へと進んでいく。
「この調子なら、女の子達が襲われることは無いよね?」
ほっとしつつも九葉は油断はしていない。
オーク相手に油断すれば、簡単に、くっころ展開が繰り広げられてしまうのだから。
と、そこへ、校舎を徘徊しつつ女学生を探していた捜索部隊の隊長と思わしきオークがケルベロスの元に駆け寄ってきた。
ケルベロス達の半数は女性であり、その半数は女子高生近辺の妙齢の女性であり、その匂いにつられて駆け寄ってきたのだろう。
「ジョシコウセイノミナサァァァン!!」
そう叫びながら三段跳びで先頭をきって駆けつけてくるオーク。
其の名も、女子高生スメルハンター。
オークの中では若手に分類されるが、若い女性、特に女子高生の香りを嗅ぎ分けることに関してはオークの中でも随一の猛者であるとして、探索部隊の隊長を任された有力なオークである。
その彼の触手の先には、更衣室に残されていたジャージや、部室にあったタオル、授業で使ったと思われるリコーダーなどなど、ジョシコウセイスメルに溢れた逸品が巻きつけられ、一本一本の触手がまるで別の生き物のように、くんかくんかとジョシコウセイスメルを、嗅ぎ分けていた。
思わず、適齢期のケルベロス女子達のの背筋に怖気が走る。
九葉は、幼いながらも、その思いを察知して、女の子を守ろうとシャーマンズカードを片手に前に出た。
九葉も男の子。ここで、後ろからの援護などととは言っていられなかったのだ。
「それ以上、近づいちゃだめだよ!」
キミに女の子達の匂いを嗅がれると、なんか減るきがするから。
九葉は、勇敢にそう言い切ると、その勇敢さが乗り移ったようにシャーマンズカードから禁縄禁縛呪が生み出され、女子高生スメルハンターの襟首を鷲掴みにして、そして、握りつぶしてしまった。
女子高生スメルハンターの折れた首から、汚らしい体液が噴出した。
それは、明らかに致命傷となる傷であったろう。
だが、女子高生スメルハンターは諦めない。
首を折られ涎を垂らしながらも、最後の力をすべて注ぎ込み触手の一本を長く伸ばすと、女子高生なケルベロスの一人のスカートの中へと触手を突っ込んだ。
「グホゥ」
ゴボゴボと吐血する女子高生スメルハンター。だが、その表情はやり遂げた者の至福の表情であった。
「マツゴノスメルハヨイスメル。サラバダ」
九葉はあまりの下劣さに普段は変えない表情をわずかに曇らせると、縛霊手でもって、息絶えた女子高生スメルハンターの頭を叩き潰したのだった。
●竜牙兵指揮官「太刀風のドルガレフ」
鎌倉の商店街、小町通りは、歪み、ねじくれ、迷路を思わせる異形の通路となっていた。
地面にあったはずの商店が引き裂かれて壁や天井となり、避難の際に残されていったと思しき商品が、そこかしこに散らばっている。
まるで迷宮のような小町通りの各所で、ドラゴンズネストから進出して来た竜牙兵の集団と、ケルベロス達が激突する。
竜牙兵の単体の実力は、僅かながらケルベロス達を上回っているようだった。
だが、ケルベロス達の士気は旺盛だ。
竜牙兵との戦いには、慣れているのが大きかったかも知れない。
「第一王子に握手しにいくんだ。ここ通るぜ、骨野郎」
そう言う祁答院・ルスト(一つの魔法使い・e09814)の解錠の魔法(物理)が確実に竜牙兵の足止めをし、続くケルベロスたちの攻撃が彼らを容赦なく蹴散らしていく。
だが、部下の多くを失ってなお、竜牙兵の指揮官もまた、戦意を失う様子はなかった。
「太刀風のドルガレフ、退きはせぬ!」
骨剣を手に、ドルガレフはケルベロス達へと切り掛かる。
上段からの振り下ろしの一撃を、ルストは腕にはめたバトルガントレットで咄嗟に弾く。固く甲高い音が、通路に響き渡った。
瞬間、ドルガレフの動きに生まれた一瞬の隙を見切ると、ルストはただ一本の指をドルガレフに突き付けた。気脈を断つそのひと突きが、既にボロボロになっていた骨の身体にとどめを刺す。
「メギドラス様……!」
最後までドラゴンへの忠誠を叫ぼうとしながら、ドルガレフは砂のように崩れて消えていった。
●光鱗イザーク
「あれは……」
殺気を感じ、アンノ・クラウンフェイス(ちっぽけな謎・e00468)達は上を向いた。
おそらくは戦況を監視する役割を負っていたのだろう、人影が天井の亀裂から現れる。
「ドルガレフめ、折角メギドラス様が復活したというのに、やられてしまうとは!」
体の一部が混沌化した地球人にも似た姿は、ドラゴンに仕える種族の一つ。
「ドラグナーかな?」
アンノが口にするのと同時、男は監視していたのであろう場所から跳んだ。
空中で変身したドラグナーが巨大なドラゴンとなり、ブレスを放ちながら地表に降り立つ。地面を構成していた建物の屋根が余波を受けて一瞬で崩れ落ちた。
即座にそこから飛び退いたケルベロス達は、屋根の後に残った鉄骨を踏んでドラグナーへと走る。
怖気づく者はいない。
先の戦いで、ドラゴンに変身して逃亡した者達を相手にしたケルベロス達の中には、かえって士気を高める者もいる程だ。
「もうすぐドラゴン相手にするんだ。ドラゴン相手の前哨戦といこうか。王子様に近付くには、邪魔の連中を片付けなきゃねー」
「小賢しい! メギドラス様の手を煩わせるまでもない、このイザークが相手だ!」
デウスエクス「ドラゴン」のような異様な進化は見られず、西洋に伝わる竜の姿に近い。
そのイザークへ向け、ケルベロス達は一気に迫った。
メギドラス配下の中でも有数の強者なのだろう、周囲のデウスエクス達よりも、歴然として強い力を持つ。
だが、勢いで勝るケルベロス達は、竜身に変じたドラグナーを一気に追い詰めていく。
竜の翼をグラビティがぼろぼろにし、翼をもがれたドラグナーは、なおもブレスを吹きつけようとするが、それをケルベロス達は許さない。
「これで、終わりにしようかなっと!」
アンノの詠唱と共に、ドラゴンの幻影が現れる。
幻影のドラゴンの放つ炎が、ドラグナーを包み込み、その鱗を焼き焦がしていく。
「メギドラス……様……」
吐きだそうとしていたブレスが暴発し、ドラグナーの頭半分を消し飛ばす。
頭を喪った体は土煙を立てながら横倒しに倒れ伏し、その姿は消滅していく。
小町通りの戦いを制したことを、ケルベロス達は確信するのであった。
→有力敵一覧
→(4)小町通り(32勝3敗/戦力1600→0/制圧完了!)
→(5)鎌倉女学院迷宮(64勝0敗/戦力1500→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。