表計算ソフト(基礎編&応用編)


この章の目標


基礎編


活用編


 練習問題



この章の目標


 本章では表計ソフトの使い方を紹介します。表計算という名前 からも分かるように、このソフトは縦横に並んだ数 字の計 算をすることが得意です。会計処理等の金銭のやり取りに関する事務処理をはじめ様々な計算に適しているので、ビジネスソフトとしては欠かせない大きな柱の 一つです。計算が得意という意味では、コンピューター(つまり電子計算機)の一番おおもとになる機能を継承していると言えます。我々日本語教師にとっての 計算の必要性というと、テストの点数、宿題の点数又は提出記録、出欠席の記録、点数の集計、成績計算などが一番身近なものでしょう。また、その数値を基に して、学生の順番を並べ変えたり、過去の学生の成績と比較して、授業やカリキュラム自体の評価をしたりすることも考えられます。さらに、プレースメン卜テ ストのように定期的に行なわれるテストの結果も記録して比較することができます。この場合、問題ごとの回答記録をとっておけば設問自体の善し悪しの分析 (項目分析)にも使えます。最後に、オートフィルタという機能を使って単語リストをデータベースのように処理する方法を紹介します。



1 学生の記録と成績表
 で は、授業と成績管理を例にとって表計算ソフトの基本を紹介します。従来、我々はテストの結果や出欠席をノートにその都度記入することで記録をとり、学期 末に計算をして成績を出すという手順で授業記録と成績管理を行なってきました。同じ作業を表計算ソフトを使ってやると、効率がよくなり、今までやりたくて もできなかったことが可能になります。下に、いくつか代表的なものをあげておきます。


 それでは、例を使って紹介していきましょう。図3.1はまだ何も数値が入っていない表計算シートです。縦横に線がはいっていて、升目がありま す。左側に数字が1から順番に並んでいて、上にはアルファベットがAから並んでいます。画面の端ではGぐらいまでしか見えていませんが、実はずっと続いて いて、Zまでいくとその次はAA、AB、ACという具合に続きます。もちろん、表計算シートは下にも続いています。つまり、表計算シートは1枚の大きな紙 のようなもので、コンピュータの画面はその一部を見るための
窓なのです。ですから、その窓をスクロールして、はみ出している部分を見ます。縦横の線が交差して作りだすそれぞれの升目を「セル」(cell)と言いま す。このセルの中には、数字だけでなく、学生の名前などの文字情報や計算式が入ります。そして、上に並んだアルファベットと左側の数字の組み合わせでそれ ぞれのセルを特定します、例えばA1というセルはー番左上のセルを指し、その右隣はB1、下はA2となります。

図3.1



 では、語学教育の成績管理の特徴について考えてみましょう。顕著なのは、語学の授業は他の教科の授業より記録することがらが格段に多いことです。これは 一学期の中で中間試験、期末試験といった大きなテストに加え、語彙や漢字の小テストやクイズなどが頻繁に行われること、宿題や作文のような提出物が多いこ と、出欠席記録を毎回つける、さらに単なる出欠席記録ではなく、授業ごとの学生のパフォーマンスを評定し記録することもある、などの理由が考えられます。 あるクラスの成績管理をするための表計算シートを作ろうとする場合、まず一番左側の列(A列)に学生の名前を入れて、右に向かって記録事項を一つずつ入れ ていき、その後に、集計のための列を設けて、どの項目が全体の何%といった換算結果や最終的な成績をいれる列を作ることにしたとします。各列ごとの記録事 項にも何か名前 を付けておかないと分からなくなってしまいますから、それを一番上の行(1行目)に作ります。記録事項が多いわけですから、このシートは画面の右側にはみ 出した横長のものになることがわかります。こうして、学生の名前と記録事項をタイプすると図3.2のようなものができます。

図3.2 名前と記録事項が入った表計算シート


 このようにして準備したシートに数字を入れていくわけです が、このやり方だといくつか問題があリます。教師が一番見たいテストの平均点や出欠席の合計など の中間集計結果や、それらをさらに集計して最終的な計算結果を入れる列がシートの右端にいってしまい、いちいちスクロールしなくてはならず不便です。これ を解決するために、まず、集計結果を入れる列を名前のすぐ隣に作って、その後に個々のテストの点数や出欠席の記録を入れる列を作リます(図3.3参照)。

図3.3 集計結果を始めに設けた表計算シート


 ところが、これではいざ点数を入れようとして、右に画面スクロールすると左側の名前が逆にはみ出して見えなくなってしまい、どの学生の点数を入力するの か分からなくなってしまいます。そこで、ウィンドウ分割機能を使い、図3.4のようにします。この状態はウィンドウの窓を四つに区切ってあります。そし て、それぞれの部分を別々にスクロールすることができます。ですから、右下の一番大きい都分にデータを記入していく時どこにスクロールしても、左側の名前 の部分は動きません。そして、上の項目の名前の部分は一緒にスクロールします。また、「ウインドウ枠の固定」という機能を使っても同様の効果が得られま す(図3.4.1)。ただし、ウインドウ枠の固定では分割された部分を別々にスクロールすることはできません。

図3.4 画面分割機能を使った表計算シート


図3.4.1 ウィンドウ枠固定機能を使った表計算シート



 また、学生に通し番号をつけたい時(例えば、「1 2 3 4 ...」)や曜日(例えば、「月火水木金土日」)といった連続したデータを入力したい時は、始めのセルに最初の番号(例、1)を入れます、そこからマウス をドラッグして範囲を指定します。メニューの「編集ーフィルー連続データの作成」を選びます(これはバージョンによって名称が変わっているかもしれませ ん)。すると、いちいち数字や曜日を入力しなくても、連続データを簡単に入力できます。

 

 これで、点数の記入が自由にできるようになリましたから、いよいよ計算部 分を作ってみましょう。まず、始めに大切なことは、自分の成績基準をはっきり知っておくことです。一学期を通して、どのようなテストを何度するか、それは 何点満点のテストで、最終的な成績に対する比重は何%にするのかといったことを、 各項目にわたりすべて決めておく必要があります。これがしっかリできていないと、計算部分をせっかく作ってもあまり意味がありません。ここで使う例では簡 略化して下のような配分にしました。



回数

全体に体する比重
単語テスト
10点満点 3

15%
宿題
10点満点 2

15%
作文
10点満点 2

10%
出席



10%
中間試験
100点満点 1

20%
期末試験
100点満点 1

30%



合計
100%
成績基準:A=100~90%, B=89.9~80%, C=79.9~70%, D=69.9~60%, F=59.9%~



 図3.3と3.4をよく見てください。B列は単語テストの平均点、C列は宿題、D列は作文の評価点といった具合になっ ています。B列は単語テストの平均点ですから、B2(ケネディさんの点数)にはK2、L2、M2に入っている値の平均が計算されて入れられなければなりま せん。これを=(K2+L2+M2)/3や、もっと簡単に=AVERAGE(K2:M2)と表現します。そして、この数式をB2のセルにタイプします。数 式の始めの等号(=)は「このセルの中身は数式ですよ」という意味です。=(K2+L2+M2)/3は「K2とL2とM2を足して、それを3で割りなさい という意味ですが、これだとセルの数が増えるに従って、数式もどんどん長くなってしまいます。そこで、二つ目の表現はAVERAGEという関数を使って、 「K2からM2までの間にある数値の平均値を計算しなさい」となり、セルの数が増えても数式は長くなりません。同様にして、ほかの項目の数式を作ります。 では、出席はどうでしょうか。図3.4では出席は1、欠席はOと記録してあります。ですから、例えばR2からAR2(授業の最終日)までのセルの値を合計 すれば、出席回数が計算できま す。これを=SUM(R2:AR2)と表します。これは「R2からAR2までの値を合計しなさい」という意味です(出席に関してはこの他にも記録方法があ りますから、いろいろ考えてみてください)。
 さて、それでは上の計算値(B列からG列)を基にして、合計(H列)を計算してみましょう。合計が単純に各項目を足すだけなら=B2+C2+02+E2 +F2+G2という数式をH2に入れてやればいいのですが、単語テストのように10点満点のテストの平均点を成績の15%に換算しなければならない項目が あります。この場合の数式はB2/10*15、または、単純にB2*1.5となります(/は割り算を、*は掛け算を表します)。宿題も同様の換算が必要で す。そして、中間試験はF2*0.2という数式を使って100点を20%に、期末試験はG2*0.3という数式を使って100点を30%にそれぞれ換算し ます。出席は、例えば全出席数が50だった場合、E2/50で出席率が計算され、それに10を掛ければ成績の10%に換算できますから、数式は E2/50*10、または、E2*0.2となります。作文の評価点は換算の必要がありません。ですから、合計を計算するための数式は=(B2*1.5)+ (C2*1.5)+D2+(E2*0.2)+(F2*0.2)+(G2*0.3)となります。
 最後に、A列からF列までの合計点に応じて自動的に計算できるようにしてみましょう。これはH2の値によって、I2に違った文字を入れたいわけですか ら、今までの計算とは少し違います。これはIFという関数を使って次のようにします。


=IF(H2>=90,"A","B")

こうすると、「H2の値が90以上だったら、文字のAを入れなさい、そうでない時は、文字のBを入れなさい。」という条 件を作ることができます。ところが、これだと90未満の場合はすべて成績がBになってしまいます。そこで、少し複雑になりますが、IFの中にもう一つIF 関数を埋め込むことができます。

=IF(H2>=90,"A", IF(H2>=80,"B","C"))

こうすると、90未満80以上ではB、それより小さければCになります。これをもう二段階続けるとFまでの条件を自動的に計算することができる式ができあ がります。最終的にI2に入れる関数は次のようになります。

=IF(H2>=90,"A", IF(H2>=80,"B", IF(H2>+70,“C”, IF(H2>=60,“D”,“F”))))

 一見分かりづらいようですが、同じことの繰り返しです。最後の括弧の数だけ間違えいようにすれば、そんなに難しくありません。これで計算部分は全部でき たわけですが、ここまではケネディさん一人の計算しかできていませんから、今作った数式を残りの学生のセルにコピーします。この時、数式のなかの行は自動 的に調整されますので、そのままコピーするだけで正しい数式が各学生の行に作られます。図3.5が完成した成績管理用の表計算シー卜です。実際の成績表は 項目数がもっと多いでしょうが、基本は変わりません。

図3.5 完成した成績表


 さらに、IFを使った条件が複雑な時は、論理関数のANDやORを使います。例えばAND(L1>= 80,L1<90)とすると、「80以上90未満」です。これをCOUNTIFに組み込むと、=COUNTIF($G$4:$G$63,AND (L1>=80,L1<90))となり、セル範囲の中にある「80以上90未満」の数値が入ったセルがG4とG63の間にいくつあるか計算し ます。



2 簡単な項目分析(基礎編)
 次に表計算ソフトの他の使い方の例として、簡単な項目分析を紹介します。図3.6は、あるテストの結果を学生を行に、質問を列にして表したものです(学 生数=8、問題数=0)。セル値1は正答を、セル値0は誤答を表しています。


図3.6 Ch3Example3.xls


 項目分析はまず、学生総得点の高いほうから並べ替えることから始めます。 その結果が図3.7です。


図3.7


 こうすることで、このワークシ卜からそれぞれの問題の性格を分析することができます。例えば、6番と8番の問題は総得点が上位の学生は正しく答え、下位 の学生は正しく答えられていないことが分かり、適切な問題であると言えます。ところが、7番の問題はこの傾向が全く逆です。上位の学生ばかりが間違えてい るということは問題自体が悪い可能性がありますから、問題を見直し検討する必要があります。これが初歩的な項目分析です。表計算ソフトは平均点などのいわ ゆる記述統計だけでなく、t検定や相関などの推測統計も行うことができますから、使い方を覚えるとその活用範囲はとても広く、研究活動に大きな力を発揮し ます。

 学期始めに1学期分のワークシートを作って、予め印刷してお くと通常はペンで記入し、時々それをキーボード入力 するということが出来るようになります。このようなワークシートは1ページではおさまらない、横に細長いものになります。この時A列に学生の名前を入力し たとします。これを印刷すると学生の名前は1ページ目には印刷されますが、2ページ以降は印刷されないので、どこにデータを書いていいのか分からなくなっ てしまいます。そこで、ページ設定の「シート」で列のタイトルのボックスをクリックします。そして、A列のAをクリックします。すると、ボックスの中に 「$A:$A」という表現が現れます。こうするとA列の内容がすべてのページの一番左に繰り返し印刷されるようになります(ちなみに、この場合、ワーク シート自体にはなんの変化もありません)。行のタイトルも同様の機能を持っています。学生の数が多くて1ページにおさまりきらない場合に有効です。印刷す るときに縦横の線を入れるか入れないかを設定するのもページ設定の「シート」の中で行います。(ムービーヘルプ参照)

 

 上の説明で出てきた「$A:$A」ですが、これを「絶対参 照」と呼びます。数式を作ってそれをコピーするとエク セルは通常自動的に数式の中で使われているセルの参照先も変更してくれます。つまり、「完璧な学生」を使って数式を作って、それを各学生の行にコピーした ときに、数式の中で使われている行番号も自動的に変更されているということです。そうでないと、数式とそこに使われているテストの得点がその学生のもので はなくなってしまいます。この時、セルはA1とかC4という書き方で表現されていて、それを相対参照と呼びます。しかし、数式をコピーしたいのですが、そ の中で使われている特定の数値が入っているセルは変更したくない場合があります。その時は、この絶対参照という方法を使います。絶対参照は$A$1とか$ C$4と、「$」を列番号と行番号の表記の前に挿入すればいいだけです。数式の中で絶対参照を使うと、コピーしたときその値は変化しません。相対参照と絶 対参照を混ぜて使うこともできます。

 

1. 数字の小数点以下の桁数を指定する。
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2. 数字の表示桁数を指定する。(例 "263"を "0263"と表示する)
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*Excel 2007ではHomeのNumberリボンの右 側にある小さい四角をクリックする。
3. 枠を固定する。
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4. 毎ページに繰り返し印刷される行や列を指定する。

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Excel 2007ではPage LayoutのPage Setupリボンの右側にある小さい四角をクリックする。
5. 複数のシートを使い、それぞれに名前をつける。

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3 オートフィルターを利用してデータの検索をする(基礎編)

 表計算ソフトは、数値データだけではなく、文字データを処理する力も優れています。ここでは語彙リストを例に使って、 「オートフィルタ」という機能の使い方を紹介します。まず、図3.8のような語彙リストを作ったとします。A列は仮名表示、B列は漢字表記、C列は品詞、 D列は英語訳、E列は出現した章の番号という具合に語彙データが入力されていると考えて下さい。(2行目は意図的に空欄にしてあります。)そして、学期の 途中で使うテストを作りたいので、既習の名詞を探しているとします。オートフィルタ機能を使うとC列が「n.」(つまり名詞)の行だけを見せて、そうでな いものは隠してしまうということかできます。さらに、E列のオートフィルタで数値を規定すれば、特定の章だけ、またはその章までといった形でさらにリスト を限定することが簡単にできます。


図3.8

 


 簡単に設定の仕方を説明しましょう。上の例では、まず、行番号の1をク リックして1行目全体を選択します。そして、図3.9にあるようにオートフィルタを選びます。すると、図3.10のように1行目のセルの中に矢印が現れま す。これがオートフィルタが設定された印です。


図3.9


図3.10


C列にある品詞のところにある矢印をクリックすると図3.11のようなメ ニューが現れて、その中から条件を選びます。ここでは「n.」を遊びます。その結果は図3.12です。

 

図3.11


図3.12



 さらに、出現した課の情報を使ってE列にオートフィルタをかけると、特定 課で出現した名詞だけを即座にリス卜することができます。図3.13は品詞「n.」に章「6」というオートフィルタをかけた結果です。

 

図3.13

 


 オートフィルタはもっと複雑な条件も設定することができます。例えば、形 容詞のリストが欲しいときは図3.14のような条件にすれば、形容詞全体のリストが簡単に作れます(図3.15)。


図3.14



図3.15



 オートフィルタは表計算ソフトのワークシートをデータベースのように扱っ ている例です。大きな語彙リストでも表計算ソフトで読めるようになっていると、この機能は教材作りや試験作りの時に力を発揮します。また、研究のための実 験材料作りや実験データの分析にも有効です。


6. オートフィルタの検索オプション

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4 統計処理(応用編)

 

 日本語教師としての仕事は、統計処理が必要なものもあります。例えば、学 生の成績をつけている時であれば平均値を求めたり、試験結果を分析している場合であれば、ある問題で1番多くの学生が選んだ選択肢を探すなどです。また、 日本語を教えるだけではなく、研究をする時にも必要となるのが統計処理です。SPSSやSASといった統計処理専用ソフトが一般的によく使われますが、高 価なため、個人ではなかなか買えない/使えないこともあります。しかし、エクセルでも、同じ統計処理を行うことができます。ここでは、基本的な統計処理に ついて説明したいと思います。(*本講座はコンピュータの使い方に関するものなので、どのようなデータを分析する際にどのような統計処理が最適かといった ことには詳しく触れません。)

 まず始めに、皆さんが使っているエクセルで統計処理ができるかどうかを チェックするために、マックの場合(Mac用Office2008バージョンではVBAが無くなってしまったため、残念ながらデータ分析ツールが使えなくなってしまったようです。)は、メニューからTool > Data Analysisに行ってみましょう。ToolにData Analysisがない場合は、Tool > Add-Insに行って、Analysis Toolpakを選択します。すると、統計処理ができるようになります。Add-Insの中に Toolpakが無い場合は、マイクロソフトオフィスのディスクをコンピュータに入れToolpakをインストールする必要があります。ウィンドウズの場 合は、まず図3.17のようにエクセルオプションからアドインを選択します。


図3.16



そして、分析ツールパックを選択し、エクセルのメニューからデータを選択すると、データ分析ができます(図3.17参照)


図3.17



 分析ツールが自分の使っ ているエクセルに入っていることが確認できたと思 うので、早速分析の仕方に進みましょう。一番基本的なデータの詳細、つまり記述統計(descriptive statistics:データの平均値や最大&小値、データ数など)を算出する方法からです。下のエクセルデータサンプル1をダウンロードして下さい。そ して、ファイルを開きます。メニューのツールの中から、データ分析を選択(図3.18参照)すると、小さいウィンドウが開き様々な分析方法を選ぶことがで きます。その中から、記述統計(descriptive statistics, 図3.19参照)を選んで下さい。


エクセルデータサンプル1


図3.18


図3.19



すると、分析対象データの範囲、分析結果を書き出すセル、必要な分析の種類などを指定するウィンドウが開きます。分析対象データの範囲と分析結果を書き出 すセルを選択した後、概要統計(summary statistics)にチェックを入れ(図3.20)、OKを押すと、図3.21のように分析結果が出ます。

図3.20


図3.21

 

 また、試験結果やアンケート調査の結果を分析する時に便利な使い方とし て、データの分布(frequency)を調べる方法です。これは、エクセルで「=FREQUENCY」という関数を使ってもできるのですが、分析ツールを使ってするこ ともできます。先ほどの記述分析と同様に、ツールからデータ分析を選択し、今度はヒストグラム(Histogram, 図3.22を参照)を選択します。


図3.22



そして、分析対象データを指定します。次に、分布範囲、つまりテストの点数 が60点以下、70点以下、80点以下、90点以下、100点以下という指定をします。これは、ワークシートのセルに1つずつ、60、70、80、90と いう数字を入れておき、ヒストグラムを選択した後にBin Rangeの指定の際に、それらの数字をハイライトします(図3.23参照)。後は、先ほどと同じように、分析結果を書き出すセルを指定するだけです。図 3.24のように、分布が表示されます。


図3.23


図3.24



 次は、T- testです。下にエクセルデータサンプルがありますから、それをダウンロードして下さい。このデータは以下のような実験のために集められたも のと想像して下さい。


『ある研究者が、物語の読み聞かせが学習者の読解力に影響するかどうかを調 べました。1つのグループは物語の読み聞かせを授業の中に組み込み、もう1つのグループは通常の授業だけでした。pre-testが実験前に、post- testが実験後に実施され、その差(Post-Pre)のデータがあります。)


エクセルデータサンプル2


 次は、ANOVAです。上のサンプルデータの中に、ANOVAというもの がありますから、それを参照して下さい。そのデータは、以下のような状況で集められました。

 

『ある研究者が、これまでの古典的言語教授法(文法訳読法)よりも効果的な 教授法はどのようなもので あるかを調査するため、2つの実験グループ(コミュニカティブ・ランゲージ・ティーチングとTPR)と1つの統制グループで実験を行いました。』


 最後に、Correlationです。このデータは、以下のような状況で 集められました。

 

『学生の作文を2人の先生に評価してもらいました。しかし、2人の 評価がどの程度信頼できるものなのか調べたいです。』

 

これらの統計分析方法も、上で紹介した記述統計や分布の方法と同様に、分析対象データの範囲を指定し、どのような情報が必要なのかを選択することで比較的簡単にできます。詳細は、以下のムービーヘルプをご覧下さい。

 

分析ツール有無確認 ムービーヘルプ
Mac 英語版エクセル2004
SWF形式
Win 英語版エクセル2007
SWF形式

記述統計 ムービーヘルプ
Mac 英語版エクセル2004 SWF形式
分布 ムービーヘルプ
Mac 英語版エクセル2004 SWF形式
Ttest ムー ビーヘルプ
Mac 英語版エクセル2004 SWF形式
ANOVA ムービーヘルプ
Mac 英語版エクセル2004 SWF形式
Correlation ムービーヘルプ
Mac 英語版エクセル2004 SWF形式


 本講座は、エクセルを使った統計分析の仕方を紹介することが目的なので、 実際のデータを使って分析した結果をどう解釈するべきかについては触れていません。下のサイトがかなり詳しく説明しているので、役に立つと思います。

表計算ソフトで統計分析(http: //www1.tcue.ac.jp/home1/abek/htdocs/stat/index.html)



5 単語リスト内の漢字の読み方表示 (Phonetic)(応用編)

 エクセルを使って単語リストを作成した後、漢字の読み方がすぐ右横のセル にあったら学生に分かりやすいというような時に、手作業で読み方を入力すると時間がかかるので、関数を使って一気に書き出す方法です。


 まず、A列に漢字の言葉を入力します。次に、B列に「=Phonetic(セルを指定)」という関数を入力することで、すぐに読み方が表示されます(図3.25)。


図3.25



しかし、この時点で読み方はカタカナ表記になっていると思います。これをひらがなに直すには、A列に入っている漢字の言葉をハイライトし、振り仮名設定を選択します(図3.26参照)。


図3.26


ここで、文字のタイプを「ひらがな」と選択すれば、読み方が全てひらがなで表示されます(図3.27と28参照)。


図3.27



図3.28


 

Phonetic関数 ムービーヘルプ
Mac 英語版エクセル2004 SWF形式

カタカナをひらがなで表示させる ムービーへルプ
Mac 英語版エクセル2004 SWF形式
Win 英語版エクセル2007 SWF形式


 


6 個人成績レポート (Data Merge)(活用編)

 教師の仕事として中間や期末に必ずしなければならないのが、学生の成績付 けです。この章の最初では、エクセルを使った効率的な成績の記録方法を紹介しました。ここでは、それを利用して個人成績レポートを簡単に作成する方法を紹介しま す。現在では、学生がWebCTな どを通していつでも成績をチェックできるようになりつつありますが、中間や期末には、教師が成績をプリントアウトして配るというようなことがまだあるで しょう。エクセルを使って成績記録をしている場合は、総成績のワークシートをプリントアウトし、各学生ごとに切り分けて配布しているという光景がよく見ら れますが、なかなか手間のかかる作業です。しかし、「データマージ(差し込み印刷)」という機能を使えば、簡単に個人レポートが作成できます。この機能を利用するのに必要な物は、成績が入力されたエクセルファイルと、個人成績レポートとなるワードファイルの2つです。


 まず始めに、エクセルを使って成績のサンプルを作成しましょう。もし、こ れまでに教えたコースの成績がある場合は、それを使ってもかまいません。下の例を参考にしてみて下さい。

 

エクセル成績サンプル(GradeSample.xls)

 

 今作成したこのエクセルのファイルに入っているデータをワードに読み込む ことになります。次に、ワードで個人成績レポートのひな形を作成しましょう。エクセルの成績表にある成績カテゴリーと同じものをワードを使って作成しま す。つまり、成績がクイズ、テスト、授業態度、宿題、口頭発表、出欠の6種類で評価される場合は、それら6つの項目をワードに入力しなければなりません。下の例を参照してください。

 

ワード個人成績サンプル(IndividualReportTemplate.doc)

 

 この作成されたワードの個人成績レポートに、最初に作成したエクセルのデー タが読み込まれることになります。それでは、次に、どのようにして読み込むかについてです。まず、個人成績サンプルを開き、メニューのツール>メールマージマネージャー(差し込み印刷)を選択します(図3.29参照)。


図3.29



すると、図3.30のようなパレットが現れます。次に、パレットの一番上にある文書タイプから、「手紙」を選択します(図3.31参照)。


図3.30



図3.31


そして、読み込む成績データを指定するために、図3.32にある「データソースを開く」をクリックし、成績が入っているエクセルファイルを選択して下さい。


図3.32



すると、パレットの真ん中辺りに、エクセルの成績ファイルで入力しておいたカテゴリーがリストとなって現れます(図3.33参照)。あとは、これらの成績項目をワードの個人成績レポートにドラッグドロップしていくだけです。最終的に、図3.34のようなものになります。


図3.33



図3.34


 

 最後に、パレットの一番下にある「Data Merge(データを差し込む)」というメニューで「新しい文書」を選択すると、エクセルの成績データが自動的にワードの個人成績レポートに読み込まれ、図3.35のように全ての学生の成績レポートが簡単に作成できます。


図3.35



 これで、個人成績が簡単にプリントアウトして、配布することができます。 必要に応じて、学生数人をピックアップしてプリントすることもできるので便利です。また、この機能を応用して、手紙の宛名だけを変更したりすることもできるの で、「同じ文面の手紙を大量に送らなければならないけれども、文中の個人の名前だけ変えたい」というような場合に使うこともできます。


データマージの例ムービー
Mac 英語版ワード&エクセル2004 SWF形式

データマージムービーヘルプ
Mac 英語版ワード2004 SWF形式
Win 英語版ワード2007
SWF形式

*エクセルの色々な使い方に関してはエクセル技道場というWWWページがと ても参考になります。

「よねさんのWordとExcelの小部屋」というサイトにExcel 2007の分かりやすい解説が出ていたので、リンクを知らせます。

http://www.eurus.dti.ne.jp/~yoneyama/Excel2007/index.html

 


7 フォーム機能(活用編)
 2章のワードで、フォーム機能の使い方を紹介しました。アンケート調査によってデータを集めたい時には便利な機能ですが、1つ不都合があります。それ は、送り返されてきた回答の集計です。数字データの集計の際には、エクセルを使うのが一番効率的でしょう。ですから、アンケートのワードファイルを見なが ら、回答をエクセルのワークシートに入力していかなければなりません。回答してくれた人が10人ほどであれば、さほど大した作業ではありませんが、50 人、100人と増えた場合、かなりの労力が必要とされます。
 そこで、エクセルでフォームのような機能があれば、手間が省けるのではないでしょうか。ここではその方法を紹介します。基本的な操作方法は、ワードのフォームと同じなので、あまり難しくないはずです。
 まず、エクセルを開き、フォームメニューが見えるようにしましょう。Macの場合は、View > Toolbars > Forms(図3.36参照)を選ぶと図3.37のようなツールバーが現れます。

図3.36


図3.37


 Winの場合は、オフィスボタン>エクセルオプションに行き、一番最初のタブの中にある「開発タブを表示」にチェックを入れます(図3.38参照)。そ して、エクセルワークシートに戻ると、メニューの一番右に「開発」が加わっていると思います。それを選択すると、図3.39のようにフォームを使うことが できます。

図3.38


図3.39


 これで、フォーム機能が使える状態になりました。使い方の説明に入る前に、2つのサンプルを見てみて下さい。1つは、フォーム機能を使ったアンケートです。もう1つは、復習シートを作成してみました。

エクセルフォームアンケートサンプル
エクセルフォーム復習シートサンプル

 では、アンケートを作成してみましょう。サンプルにあるような性別を選ぶために、「オプションボタン」をセルB2に挿入します。すると、ボタンのテキス トを変更できます図3.40参照)から、「女」とタイプしてみて下さい。同様に「男」のボタンもセルC2に作成します。この時、2つのボタンが重ならないように注意をして下さい。

図3.40


そして、この2つのオプションボタンが同じ質問に対する選択肢であることを分かりやすくするために、「グループボックス」で2つのボタンを囲み(図3.41参照)、テキストを「性別」に変更します。

図3.41


ここからが、ワードのフォームとは大きく異なる部分です。回答者が性別のどちらを選んだかを、自動的に抽出する方法です。先ほどグループボックスで囲んだ オプションボタンの「女」の方を右クリックします。そしてメニューの中から「フォーマットコントロール」を選びます(図3.42参照)。

図3.42


フォーマットコントロールというウィンドウが開くので、その中の「コントロール」タブを選ぶと「セルリンク」を指定できる箇所がある(図3.43参照)の で、セルA2を選んで下さい。これにより、回答者が選んだ性別が「女」であれば「1」が、「男」であれば「2」と表示されます。

図3.43


次に、出身地や出身国を選んでもらうために、「コンボボックス」をセルB5からC5にかけて挿入してみます(図3.44)。

図3.44


今の状態では、選択肢が入力されていません。ワードのフォームでは、右クリックをしてから入力をしましたが、エクセルは少し違います。まず、セルD5から 下に向かって、いくつか選択肢を入力します。次に、挿入したコンボボックスを右クリックしてフォーマットコントロールを選びます。コントロールタブをク リックすると、「インプットレンジ」と「セルリンク」を選択できるようになります(図3.45参照)から、インプットレンジでは選択肢が入っているセル全 てを選び、セルリンクではコンボボックスを入れたすぐ左のセルA5を選びます。これで、最初の選択肢を選ぶと「1」、次を選ぶと「2」というように、数字 が表示されるようになったと思います。

図3.45


「日本語教育経験年数」や「日本語学習年数」などを答えてもらう時には、スピンボタンが便利です。このボタンをセルC9に入れてみましょう(図3.46参照)。

図3.46


次に、スピンボタンを右クリックして、フォーマットコントロール>コントロール>セルリンクで、セルA9を選びます。これで、スピンボタンをクリックする と、数字が増えたり減ったりするはずです。今、セルリンクを付けたコラムAは、データ処理用のコラムなので、実際にアンケートを作成した後は、見えないよ うにしてしまいます。ですから、この同じ数字が回答者にも見えるようにするために、セルB9に「=A9」という関数を入れます。これで、セルB9にも同じ 数字が反映されます。しかし、経験年数ですから、「~年」というように数字を表示したいので、セルB9にカーソルを動かし、エクセルの章で紹介したフォー マット>セル>数字>カスタムに行き、「##"年"」と入力します(図3.47)。これで、セルA9とB9が連動して動くようになりました。

図3.47


最後に、「コメント」のような自由回答欄は、複数のセルを統合して1つの大きなセルにしておくといいでしょう。複数セルをハイライトした後に、フォーマットセルに行き、図3.48にある「マージセル」をチェックします。これで1つのセルとなります。

図3.48


 これでアンケート自体は完成ですが、まだ2つ重要なことがあります。1つは、出来上がったアンケートのコラムAとDを回答者には見えないように隠すことで す。コラムAをハイライトして、右クリックします。そして、下から2つ目の「Hide(隠す)」を選択する(図3.49参照)と、見えなくなります。同様 に、コラムDも見えないようにします。

図3.49


 最後の1つは、ワードの時と同じように、エクセルシートにロックをかけることです。まず、回答者に記入してもらいたいコラム、つまりコラムBとC、そして、その結果が反映されるコラムAや選択肢が入っているコラムDをハイラ イトし、フォーマット>セルを選びます。開いたウィンドウの「保護」タブを選び、「ロック」についているチェックを外します(図3.50)。

図3.50


そして、ツール>プロテク(保護)>シートを選択(図3.51参照)すると、フォーム部分以外のテキストやセルなどを編集することはできなくなります。

図3.51


 あとは、このアンケートをメールで回答者に送信し、記入をしてもらうだけです。回答結果は全てコラムAにまとめられるので、その結果をコピーして別のワークブックに貼り付けるだけで済みます。



練習問題

基礎編から

1 自分が担当している(または、担当する予定の)コースの成績基準を本章の例にならって書き出してください。(提出して下さい。)


2 できあがった成績基準に従って、成績表を作ってください。こ の時、一番始めの学生として「完壁な学生」という架空の学生を作ります。そして、この学生はすべての項目に満点を取ったと仮定して得点を入力します。その 得点をもとにして結果を確かめながら計算式を作っていきます(図3.16)。すでに記録済みの成績データが保管してある場合は、それを表計算ソフトに入力 して、計算結果を確かめてみて下さい。(提出して下さい。)


図3.16
(Ch3Example5.xls)


3 並べ替え機能がどこにあるかさがして、どのような並べ替えができるか色々試してみてください。


4 表計算ソフトにはSUMやAVERAGEの他にも様々な関数が用意されています。どのような関数があるか調べて、ど のような時に使えるか考えてください。例えば、COUNT、MAX、MIN、COUNTA、COUNTIFなどといった関数があります。


5 同じコースの違うセクションを教えている同僚とそれぞれの成績表を比べ、どのような比較ができるか考えてみて下さ い。前年度の学生のデータがあれば、今年のものと比べてみてください。


6 次のような条件を成績管理表に組み入れたいと思っている先生がいるのですが、どのような関数を使えばいいのでしょう か。助けてあげて下さい。(提出して下さい。)
イ先生:クイズは全部で12回するんですが、最終計算は一番低い得点は計算から除きたいんです。
ロ先生:欠席は3回まで許しています。でも、その後は1回休むごとに総合得点から1ポイントずつひきます。
ハ先生:遅刻を3回すると、欠席1回とみなします。

ニ先生:テストは全部で12回するんですが、最終計算は低い得点を2つ除い た10回分の平均点を出したいんですが。


7 毎年実施される組み分けテストなどのデータがもらえたら、簡単な項目分析を行ってテストの質を調べてみて下さい。(提出して下さい。)


8 表計算ソフトを使って、次のことができるようになっていることを確かめてください。
a. 列の幅を変えたり、行の高さを変えたりできる。
b. セルの書式が変えられる(例、数字の小数点以下の桁数、数字の揃え方、日付の書式など)。
c. ページ書式が使える(例、グリッドの表示、印刷するときの紙の向きを変える、余白の変更、各ページに繰り返し印刷される行や列を設定する)。
d. 計算式を作る。ソフトが用意している関数が使える。
e. ウィンドウの分割やウィンドウ枠の固定(freeze panes)が使える。
f. データを縦横自由に並べ替えることができる
g. 次の関数が使える。SUM, AVERAGE, COUNT, COUNTA, COUNTIF, MIN, MAX, SMALL, LARGE


9 使っている教科書の語彙リストを作ってオートフィルタ機能を試してみてください。(提出して下さい。)

 

活用編から
1 これまでに教えたクラスの中から中間、もしくは期末試験の結果をエクセル に入力し、平均点や最大値/最小値(つまりdescriptive statistics)を算出して下さい。2つ目は、同じテストの結果の点数分布(つまりfrequency)を算出して下さい。(提出して下さい。)


2 これまでに集めたデータの中で、何か統 計処理ができるものを選んで、エクセルで統計処理をしてみて下さい。どのようなデータなのかの説明も必ず付けて下さい。(提出して下さい。)

 

3 これまでに教えたクラスの中から、1つ成績を 選び、学生の個人レポートを作成してみましょう。(提出して下さい。)

 

4 3のマージデータを応用し て、学生のための推薦状のテンプレートを作成してみましょう。学生によっては、複数の学校に申し込みをすることもあります。そのたびに、推薦状を作ると手 間がかかるので、学校の名前や日付などの情報だけを変更できるようなものを作ってみましょう。(提出して下さい。)



このモジュールの理解を確認(ExcelBasicSklls.docx)