*** CONTENTS ***
00.Prologue 01.Encounter 02.Preparations 03.Fighting 04.Meet Again 05.Interception
06.Try My Best 07.Decisive Stage 08.Connection-1st 08.Connection-2nd 09.Mission Again 10.Quest for Dreams
11.Fulfill My Wish 12.Firsthand Inquiry 13.March Onward 14.After the Gale 15.Final Approach 16.Epilogue



*** Fastech360に夢を託して ***
 2005年06月25日深夜、東北新幹線の鉄路に新たな高速試験電車の脈動が響き渡りました。名は"Fastech360S"。正式には"E954形S9編成"という呼称を持っています。このE954形は2010年12月に東北新幹線八戸〜新青森間が開業するのに先立ち、JR東日本が同線区内を走る列車の更なる高速化と環境水準の向上を実現させるために開発した試験車両。高速試験専用に造られたその車両はエクステリア・インテリア共に斬新なデザインが採用され、他の新幹線車両を凌ぐ圧倒的な存在感を醸し出しています。『イーストグリーン』と『パールホワイト』を身に纏った外観はひと際目をひく様相で、異彩を放つその姿には常に数多くの視線が注がれていることでしょう。非常ブレーキ作動時により早く停まることが出来るように設けられた空気抵抗増加装置が猫の耳に似ていることから、『ネコミミ新幹線』という愛称もあるE954形。その開発の経緯はおよそ今から10年前の2000年に遡ります。このPrologueでは、簡単ではありますが、本題に入る前にその経緯とこれまでの来歴を少しだけ振り返ってみるとしましょう。
T.目指すは世界一の新幹線
 JR東日本は2000年11月に2001年から2005年までのグループ中期経営構想『ニューフロンティア21』を策定しました。この構想は「顧客価値の創造・顧客満足の追求」・「技術創造による業務革新」・「社会との調和・環境との共生」・「働きがいの創出・活力の創造」・「株主価値の向上」を経営の基盤とし、今後予想される「グループを取り巻く今後の経営環境の変化」に柔軟に対応していくために、JR東日本グループの目指す具体的な取組みを定めたものです。さらに、その構想の中で『世界一の鉄道システムの構築』という目標を掲げ、それに基づいて2002年04月に『新幹線高速化推進プロジェクト』を社内に発足させました。
 『新幹線高速化プロジェクト』は、新幹線ネットワークの拡大に伴うサービスの向上・航空機との競争力強化・世界最高水準の高速化技術を目指して、「走行速度の向上」・「安全性及び信頼性の確保」・「快適性の向上」・「環境への適合」をテーマに営業最高速度360km/hを技術目標とした新幹線高速化の技術開発を行うためのプロジェクトです。
2004年初めまでの約2年間は技術的課題の整理や要素技術開発を始め、現有車両を使用した高速走行試験などを行っていました。新幹線高速走行時の基礎データ収集のために実施した現有車両をでの高速走行試験では、高速化改造したE2系1000番台及びE3系でそれぞれ360km/hと340km/hという速度も記録したそうです。そうして、2004年02月。約2年間の基礎データ収集の後に新型車両の礎となる高速試験電車E954形及びE955形の製作発表が為されると、プロジェクトはいよいよ待望の実車試験へと入って行きます。
U.Fastech360に夢を託して
 最初に落成したのは新幹線専用高速試験電車であるE954形S9編成です。06月24日の報道公開を経て翌25日には仙台〜北上間で深夜時間帯に走行試験が開始されると、その後約半年間は深夜時間帯に基本性能試験を実施。そのため最初の半年間と言うのは遭遇頻度がかなり低かったことでしょう。2006年02月21日からは仙台〜盛岡間で営業時間帯にも走り始めるようになり、それによってS9編成が沿線で目撃される回数も徐々に増えて行ったことと思います。走行試験のダイヤがパターン化したことも目撃回数が増えた理由の1つかもしれません。さらに、2007年04月には走行試験区間が仙台〜八戸間へと拡大され、09月末現在ではS9編成を使用しての長期耐久試験が全盛期を迎つつある状況となっています。
 また、E954形S9編成の落成からおよそ9ヶ月遅れて2006年03月には新在直通用高速試験電車E955形S10編成も落成。同年04月からは仙台〜北上間での走行試験も開始されました。
こうして2006年春には高速試験電車2編成が晴れて出揃う運びとなり、現在に至っています。走行試験を重ねたS9編成とS10編成は2007年07月頃から併結走行試験を行うようにもなりました。ただ、この併結走行試験はまだ深夜時間帯のみの実施で営業時間帯には実現していません。そのため、いつの日か日中に実施してくれる日を待ち望んで止まないのが現状です。また、落成から2007年09月末現在に至るまでのS10編成は、全て深夜時間帯に走行試験を行っているため、明りの下でS10編成を見ることは今も尚非常に困難であると言えるでしょう。2007年09月現在のS9編成の走行試験区間はまだ仙台以北に留まっていますが、今後は南は大宮まで延伸して行くのではないかと考えています。また、S10編成の方はこれから日中にも走行してくれるようになるとありがたいですね。
 JR発足後に製作された高速試験電車と言えば952形・953形955形500系900番台が挙げられますが、私はそれらの現役時代を見たことがありません。
そんな私にとって、彼らE954形・E955形の現役時代を追うことは切なる願いでした。試験専用に造られた車両というのは、そのプロジェクトが終わると御役目御免となるため、車両の寿命よりも遥かに短い期間しか活躍出来ないのが儚いところです。だからこそ、現役時代の彼らの勇姿を捕らえることにはとても大きな意味があるだろう…そう私は考えています。そこで、S9編成及びS10編成が現役を引退するその時まで出来る限り多く彼らの勇姿を記録したい…という想いから、このようなE954形・E955形連載遠征旅行記を立ち上げました。新幹線の未来を担う翠玉の疾風に夢と希望を託して、いざ翠風吹き抜ける東北路へ。
*** Prologue 終 ***
2007.09.29 THE SUPER EXPRESS since 1964 管理人 YOS


※参考文献
  ・ 
 
JR East Annual Report 2001 『 社長インタビュー 』
(http://www.jreast.co.jp/investor/ar/2001/pdf/p06_j.pdf)
  ・ 
 
JR East Press Releases - February 10, 2004 『 新幹線高速試験電車の製作について 』
(http://www.jreast.co.jp/press/2003_2/20040202.pdf)
  ・ 
 
JR East Press Releases - March 09, 2005 『 新幹線高速試験電車 FASTECH 360 まもなくデビュー 』
(http://www.jreast.co.jp/press/2004_2/20050306.pdf)


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