遅まきながら今年最初の更新。
ちぇすとー!とまいりましょう。
空手バカ一代
1973年10月3日〜1974年9月25日 全47話
NET(テレビ朝日)系放映・製作 東京ムービー
異色の実録格闘漫画
原作は週刊少年マガジンにて鳴り物入りで連載された
梶原一騎・つのだじろうのタッグによる実録劇画。
「この超人は存在する。」という仰々しい煽りから入り、
「力道山を倒した相手をたった一撃で葬った」という
伝説を追いかけていくという、なんか川口浩探検隊のようなテイストでスタート。
そこで見つけたボロ屋の中に、瞑想する伝説の格闘家・大山倍達。
そこから回想、過去を遡るように本編がスタート、という内容。特攻隊の生き残りで
死にそこなったものの、生きる望みも夢もなく、腕に覚えのある空手で暴力団の用心棒を
勤める日々。そんなおり出会った1冊の書物。吉川英治著「宮本武蔵」に触れ、
超人追求の夢にかられる大山倍達。山篭り、全日本空手選手権優勝、それに伴う確執、
牛との対決、熊との対決、事件、事件、また事件。
愛弟子の有明省吾の出会いと死別、渡米、異種格闘戦の嵐、地下プロレスとの死闘…
まさに息をもつかせぬ波乱万丈の展開。
壮絶なる格闘家の半生をセミドキュメンタリータッチで書き上げた原作を、
当時スポ根ものの復活にかけた東京ムービーがアニメ化したのがこの作品です。
アニメと原作の相違点
原作との最大の違いは何と言っても主役の名前の変更。
実在の人物を取り上げたアニメがない訳ではないのですが
(「キックの鬼」の沢村忠とか。)アニメでやる以上原作の尺が合わない場合、
オリジナルを入れる必然性が生じやすいため、実在の人物を使用すると
なにかと不都合が起きる上に、商標とか権利問題とかいろんな面で
実在の人物名をそのままキャラクター名にするのは好ましくないとされ、
結局「飛鳥 拳」というアニメ用のネーミングをつける事に落ちついた次第。
梶原氏は空手バカ一代以前に「虹を呼ぶ拳(画・つのだじろう)」を書いており、
それがまんまエンディングの歌詞「虹呼ぶ拳が空手道」
というふうに流用されているところからも、アニメ版には
過去の梶原作品の流用が散見できます。
実録漫画という事もあって、実在の人物名は変更が多く見られます。
アメリカでの異種格闘戦でタッグを組む遠藤幸吉氏も、ココでは「五十嵐」という名前に変更。
力道山やグレート東郷はそのままでしたが。
原作では鬼の木村こと木村政彦も登場したのですが、アニメでは全面カット。
木村サイドからクレームがついたのかも知れません。原作ではみじめな展開でしたし。
実録モノは表現が非常に繊細にならざるを得ないのです。
そういう実在の人物にまつわるポイントを除けば
基本的にはアニメは原作に忠実に進行して行きます。もっとも、原作の冒頭の
関係者の証言からボロ家のマス大山(米での呼び名)に辿りつく、という下りは
アニメ的でないと判断されたのか、冒頭は終戦直後の焼け野原から始まります。
最初の敵は進駐軍の酔っぱらい。倒したものの報復でジープに轢き殺されかける、と
いうところで第一話終了。(えらい引きですわ。)
ストーリーは格闘&超人追及の場面を中心にすえて構成。
借金で質屋に通うとか、妻とのなれそめとか、保証人になって財産をくすねられるという
辛気臭いエピソードはバッサリカット。
故にアニメ版の飛鳥拳は世界各国を連戦連戦また連戦。
プロレス、ボクシングを制したのち、キックボクシング、カポエラ、カマキリ拳法と
格闘ファンも舌巻くようなマニアックな相手と異種格闘戦を展開。
この辺のエピソードはオリジナル色が強いですが、
影丸譲也版の原作にはカポエラが出てたので
それをヒントにしたのかもしれません。
地下プロレス編は原作にオリジナルを足した展開ですが、
地下プロレスの帝王ロゴスキーも
最終的にはドーベルマン1匹に敵わないというトホホな
有様にされてしまい、原作ファンから不評を買ってしまっています。
最終的には太極拳の陳老人にやぶれ、初の敗北。
飛鳥空手はこれを機にさらにパワーアップ。
その後、日本に帰った飛鳥は「飛鳥空手道場」なる一門を構えて新たな弟子も獲得。
新たな夢、飛鳥空手の継承者を育てる為、真の武道家を育てる為。
そんな飛鳥の元に別派の太極拳の使い手が現れて、
飛鳥に奇襲をかけるも返り討ち。飛鳥空手は進化しつつも、
未だ見ぬ超人追求の夢をもとめ、決意を誓うのでした。
ナレーション「飛鳥拳は何時の日かきっと、世界一強い男、神の手を持つ真の
武道家に到達するに違いない。
燃えよ!進め!空手バカの男・飛鳥拳!」
鳴り響くテーマソング。荘厳なるラスト。
イマイチ腑に落ちない最終回
と、これが第46話のラスト。
普通ならこれで最終回です。事実、いつも出る「つづく」のテロップも付かない。
ここで終っておけばいいのに。
が、最終回はこの次でした。つくづく思う。いらんわ。この最終回。
最終回「ふたたび世界へ」
飛鳥拳は修業に励んでいた。が、様子がおかしい。
何時もなら楽々届く樹の枝に、飛び蹴りが届かないのだ。
「私の体は、もう20代の体力を保てない…」飛鳥は老いを痛感し始めていた。
それを影から見ていたのは、拳法使いの吹雪。育ての親である拳法家の弥八に飛鳥の老いを
報告。「チャンスだ!今の飛鳥ならお前の方が強い!飛鳥を倒して
東京で一旗あげれるぞ!」弥八&吹雪の極悪コンビは飛鳥の道場に道場破りに入る。
吹雪の強烈な蹴りに道場の門下生はやられ放題。道場の危機を知り、飛鳥は東京へ。
ついに吹雪と飛鳥の直接対決。が、吹雪の若さにまかせた攻めに飛鳥は防戦一方。
動くたびに飛鳥の息は切れ、肩をゆらし、汗が吹き出る(急に老いたなぁ〜。)。
もはや満足に組手を交わすことすら出来ぬほど、飛鳥の体力は消耗し切っていた。
弥八「吹雪!ゆけ!トドメの必殺技を!」
吹雪は5メートルジャンプして猛烈な飛びげりを飛鳥の顔面に。
が、間一髪交わした飛鳥。吹雪の足は床に突き刺さる。動けぬ吹雪に飛鳥の手刀!
血を吹いて倒れる吹雪。「おのれっ!ならばっ!」弥八が続いて飛びかかるが
飛鳥「やめろ!あなたまで傷つくつもりか!吹雪は素晴らしい蹴りをもっている!
修練を積めば立派な格闘家になれる!あなたにはそれを育てる義務がある!」
ガクッ、とうなだれる弥八と吹雪。大喜びの門下生に、飛鳥は言う。
「見てのとおりだ…私はもう20代の飛鳥ではない。
だからこそ、新たな第1歩を踏み出すのだ。私は一生空手家でありたい。
そのためにも、私は又、旅に立つ。許してほしい、みんな…。」
ナレーター「それからまもなく、飛鳥は超人追求の夢を求めて、見果てぬ世界へ旅立った。」
あの…飛鳥空手の継承者育成の夢は?道場の運営はどうするの?
そんな疑問を一切切り捨てて、作画の悪いジャンボ機で旅立つ飛鳥。
ああ、先の話で終っておけばよかったのに。
空手バカ一代 スタッフ
原作/梶原一騎・つのだじろう(週刊少年マガジン連載)
企画/東京ムービー
演出/岡部英二・出崎 統
脚本/硲 健(小田健也)・吉田喜昭・七条 門・松本昭典・吉原幸栄
他
作画監督/木村圭市郎・宇田川和彦・中嶋正義・大坂竹志・多賀一弘 他
文芸担当/小田健也
製作協力/Aプロダクション・東京アニメーションフィルム・東京現像所
実写協力/財団法人 極真会館
音楽/小谷 充
OP/空手バカ一代(作詞・梶原一騎 作曲・平尾昌晃/唄・大安 蓮)
ED/空手道・おとこ道(作詞・梶原一騎 作曲・小谷 充 /唄・山崎照朝)
空手バカ一代放映リスト
放送No | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 絵コンテ | 作画監督 |
1 | 1973.10.3 | 焼けあとに空手は唸った | 硲 健 | 黒田昌郎 | 木村圭市郎 |
2 | 1973.10.10 | 悲しい用心棒 | 硲 健 | 豊田浩二 | 木村圭市郎 |
3 | 1973.10.17 | 正義と力の空手道 | 吉田喜昭 | 山本 浩 | 飯野皓 |
4 | 1973.10.24 | 天狗と少年 | 松本昭典 | 山本 浩 | 木村圭市郎 |
5 | 1973.10.31 | 新しい出発 | 七条 門 | 井草良太 | 飯野皓 |
6 | 1973.11.7 | 爆発した野生 | 吉原幸栄 | 大村博秋 | 木村圭市郎 |
7 | 1973.11.14 | むなしい勝利 | 吉原幸栄 | 吉川惣司 | 木村圭市郎 |
8 | 1973.11.21 | 道場破りの果てに | 井村 淳 | 大村博秋 | 木村圭市郎 |
9 | 1973.11.28 | 猛牛への挑戦 | 松本昭典 | 石黒 昇 | 飯野皓 |
10 | 1973.12.5 | 耐えて耐えて耐えぬいて | 吉田喜昭 | 佐々木正広 | 木村圭市郎 |
11 | 1973.12.12 | 非常階段の決闘 | 吉原幸栄 | 佐々木正広 | 木村圭市郎 飯野皓 |
12 | 1973.12.19 | 白刃の恐怖をくぐる | 七条 門 | 壬生理 | 木村圭市郎 |
13 | 1973.12.26 | 大熊との死闘 | 小森静男 | 山本 浩 | 木村圭市郎 |
14 | 1974.1.9 | 血の脱獄 | 吉田喜昭 | 壬生理 | 木村圭市郎 |
15 | 1974.1.16 | 有明省吾は死んだ | 吉田喜昭 | 石黒 昇 | 飯野皓 |
16 | 1974.1.23 | 凶器となった正拳 | 松本昭典 | 大村博秋 | 木村圭市郎 |
17 | 1974.1.30 | 空手を捨てた空手家 | 松本昭典 | 石黒 昇 | 木村圭市郎 |
18 | 1974.2.13 | 地獄からの使者 | 七条 門 | 山本寛己 | 木村圭市郎 |
19 | 1974.2.20 | はばたけ!世界一の強者へ | 小森静男 | 古賀美津夫 | 飯野皓 |
20 | 1974.2.27 | 赤毛の殺し屋 | 吉原幸栄 | 壬生理 | 木村圭市郎 |
21 | 1974.3.6 | ジャップを殺せ! | 吉原幸栄 | 大村博秋 | 飯野皓 |
22 | 1974.3.13 | 命がけの脱出 | 吉田喜昭 | 佐々木正広 | 木村圭市郎 |
23 | 1974.3.20 | 神の手!ゴッド・ハンド | 七条 門 | 大村博秋 | 木村圭市郎 |
24 | 1974.4.3 | 魔の死刑執行人 | 七条 門 | 石黒 昇 | 飯野皓 |
25 | 1974.4.10 | 終りなき冒険への旅立ち | 七条 門 | 壬生理 | 椛島義夫 |
26 | 1974.4.17 | 強敵!用心棒レスラー | 吉原幸栄 | 木村圭一郎 | 木村圭市郎 |
27 | 1974.4.24 | 怪物!グレート東郷 | 小森静男 吉原幸栄 | 大村博秋 | 多賀一弘 |
28 | 1974.5.1 | 空手対ギャングの拳銃 | 七条 門 | 壬生理 | 宇田川一彦 |
29 | 1974.5.8 | カラテチョップ!力道山 | 吉田喜昭 | 壬生理 | 進藤満尾 大坂竹志 |
30 | 1974.5.15 | 必殺!さそりパンチ | 松本昭典 | 佐々木正広 | 佐々木義宏 |
31 | 1974.5.22 | 恐怖の赤さそり | 小森静男 | 新田義方 | 飯野皓 |
32 | 1974.5.29 | ボクシングとの死闘 | 吉原幸栄 | 井草良太 | 多賀一弘 |
33 | 1974.6.5 | 恐るべき!タイ式ボクシング | 吉原幸栄 | 木村圭一郎 | 木村圭市郎 |
34 | 1974.6.12 | 千本足の魔人 | 吉原幸栄 | 石黒 昇 | 飯野皓 |
35 | 1974.6.19 | 復讐の刃 | 吉原幸栄 | 大村博秋 | 宇田川一彦 |
36 | 1974.6.26 | 月光にきらめくカマキリ拳法 | 小森静男 | 崎 枕 | 飯野皓 大坂竹志 |
37 | 1974.7.3 | 脅威の技!マオリの斧 | 松本昭典 | 井草良太 | 多賀一弘 大坂竹志 |
38 | 1974.7.24 | 人間風車・カポエラ | 吉田喜昭 | 高屋敷英夫 | 宇田川一彦 |
39 | 1974.7.31 | ニセ空手を許すな! | 硲 健 | 大村博秋 | 中嶋正義 |
40 | 1974.8.7 | サファーデと一騎打ち | 吉原幸栄 | 崎 枕 | 大坂竹志 |
41 | 1974.8.14 | 地獄プロレスからの招待状 | 七条 門 吉原幸栄 | 佐々木正広 | 多賀一弘 |
42 | 1974.8.21 | 不死身の帝王・ロゴスキー | 小森静男 | 高屋敷英夫 | 宇田川一彦 |
43 | 1974.8.28 | 友情の報酬 | 硲 健 | 佐々木正広 | 中嶋正義 |
44 | 1974.9.4 | 初めての敗北 | 吉原幸栄 | 崎 枕 | 大坂竹志 |
45 | 1974.9.11 | ケンカ空手の弟子 | 硲 健 | 高屋敷英夫 | 多賀一弘 |
46 | 1974.9.18 | 嵐を呼ぶ太極拳 | 七条 門 | 岡部英二 | 中嶋正義 |
47 | 1974.9.25 | ふたたび世界へ | 松本昭典 | 岡部英二 | 宇田川一彦 |
と、なんとか終了。暫く更新出来てなかったから
終ったと思われてたりして。
また新刊の作業に入るのでちょっと停滞するかも。
長い目で見てくだされば幸いです。では次回。