『広島競輪開設70周年記念(GIII)レポート』 最終日編

配信日:12月18日

 広島競輪場で開催された開設70周年記念「ひろしまピースカップ(GIII)」は、12月18日に最終日が行われた。決勝は単騎でまくった原田研太朗を追走したS級S班の松浦悠士が直線で追い込んで優勝。9月の岐阜以来、今年5度目、通算18回目のGIIIを制して、地元記念連覇で年末のグランプリに挑む。また「レインボーカップA級ファイナル」では、佐々木龍が直線強襲の1着。佐々木、鈴木薫、吉田篤史の上位3選手がS級への特進も決まった。

決勝戦 レース経過

 号砲で迷わず寺崎浩平が出て、松浦悠士が追う。寺崎-石塚輪太郎、松浦-山田敦也、坂井洋-田中晴基、原田研太朗、犬伏湧也-久米良で隊列はまとまる。
 青板3コーナーから犬伏がゆっくり上昇を開始。赤板1コーナーで前団を切った犬伏-久米には原田、松浦がすかさず切り替えて続く。一方、坂井は6番手、寺崎は8番手に置かれて打鐘。動きがないまま犬伏がペースを上げて駆けていく。原田が前との車間を切って後続の反撃を警戒。そして、詰めて最終2コーナーからまくって出る。3コーナーで前団を飲み込んだ原田には松浦がピタリ。追って坂井も猛然と踏み出して前の2人に迫っていく。直線に入り、粘る原田を松浦が交わしにかかるが、その外を坂井が強襲。2人並んでのゴールとなったが、ハンドルを投げ勝った松浦が地元記念連覇を果たした。

松浦悠士選手
松浦悠士選手

 役者が違った。終わってみれば、そんな松浦悠士(写真)の地元シリーズだった。
 「初日は勝ちたい気持ちが強すぎて、わけのわからないレースをしてしまった。初日のお客さんには迷惑を掛けてしまった」
 こう振り返ったように暗雲が垂れ込める初日特選だったが、2日目からは3連勝で地元記念連覇を遂げた。
 「最初は坂井(洋)君が追い上げてきたのかと思ったら、(原田)研太朗だった。やればできるじゃんって感じでした(笑)」
 レースは、押さえて出た犬伏湧也が主導権を握る。犬伏、久米良とは別の原田が3番手にスイッチ。松浦は4番手に収まって打鐘を通過した。徳島勢が分かれて、松浦も別線を選択。タッグを組めば心強い前の3人だが、決勝ばかりはそういうわけにもいかず油断することなく前団を見極めた。
 「(原田が)だいぶ車間を切っていたし、あれなら仕掛けるだろうと。それなら仕掛けを待ってからでもと。(原田が)ピッタリと付いていたら、自分で仕掛けようと思っていた」
 坂井を6番手、近畿コンビを後方に置いて、犬伏が敢然と風を切って駆ける。原田は車間を詰める勢いで、最終2コーナーでまくりを打つ。犬伏を楽にのみ込んだ原田に続いた松浦は、今度は後続との間合いを取り反撃に備えた。
 「今日は車輪を換えたんですけど、どうかなって感じだった。反応はすごく良かったんだけど、ゴール前はあれっていう感じだった。無我夢中だったし、(坂井との勝負に)押し切っている気もしたし、いかれている気もした」
 原田をロックした松浦は、直線半ばからまくりで迫る坂井との勝負。最後のハンドル投げにまで持ち込まれたが、4分の1輪は着差以上の余裕があったように映るゴールだった。
 「(レース全体では)余裕はあったんですけど、伸びなかった」
 年末のグランプリ9人のメンバーが確定した11月の競輪祭後は、松浦だけが大一番を前にレースに参加した。連覇のプレッシャーがかかる地元記念、その重責を背負って、期待にも応えた。
 「(初日の)あの感じでグランプリにいってたらと思うと、ゾッとするところもあります。グランプリでもしっかりと自分の位置を取ってやらなければいけないと思っている。地元だし、グランプリもあるし、ワガママを言って自分でやらせてもらった。地元を走るといつもより応援してくれる人たちがいる。そういう気持ちで(次の)グランプリにいけるのは大きい。この応援を力に変えたい」
 この4走をアドバンテージにして、グランプリを制し念願の賞金王に。地元での声援に後押しされて、松浦が決戦の地、平塚に向かう。

 最終3コーナーからまくり追い込んだ坂井洋は、好スピードで松浦を追い詰める。が、最後は松浦に体を寄せられて2着。
 「得意展開だったのに、弱い。(山田敦也が松浦に)離れたのに気づくのが遅かった。あそこで立ち上げるのが遅れた。あのスピードでコーナーで斜行されたら浮いちゃう。斜行されて力が抜けちゃうのは自分の弱点です」

 同県の後輩、犬伏がいながらも単騎を貫いた原田研太朗は、俊敏に3番手を確保。まくりで逃げた犬伏をのみ込んだ。
 「寺崎君と犬伏君のやり合いを見て、臨機応変に動こうと思ってた。(車間を)詰めてたらもっと後ろを引き出すかなと思って切っていた。後輩には申し訳なかったけど、自分は単騎だし(まくって)行きました。自分は余裕はなかった。でも、(松浦は)冷静でしたね」





9RレインボーカップA級ファイナル

佐々木龍選手
佐々木龍選手

 赤板1センターで埼京コンビが押さえて出て、前受けの仲野結音は3番手に収まる。6番手から飯田憲司がインを進出して、仲野は打鐘で踏み込んで主導権を奪う。山田雄大が3番手で粘り、単騎の緒方将樹は、最終ホーム目がけて仕掛ける。バックで緒方が出切り、追いかけた早坂秀悟は続けず、吉田篤史が切り替える。後方からまくり上げた飯田憲司は、あおりを受けて不発。飯田マークの佐々木龍(写真)が、2センターからコースを探しながら勝負権のある位置まで押し上げる。直線で伸びる中のコースを選んだ佐々木は、内の吉田、外の鈴木薫をまとめてとらえて突き抜けた。
 「山田君が遅めに押えに来てたし、仲野君も突っ張る雰囲気があった。結果、仲野君が中団からすかさず叩いてくれて、展開は向いたと思う。自分は飯田さんの追走を一番に考えていました。(飯田が浮いて)瞬時に行けるコースを探して、どこを踏むかでした。前も踏み合ってたってのもあるけど、自分も伸びた感触はあった。賞金のことは意識し過ぎずに、目の前のレースに集中して臨めたのが良かった。年内にS級に戻るってことは目標にしていて、12月になっちゃったけど達成できたのは良かった」

 埼京連係で山田に託した鈴木薫は、吉田に続いた山田がインを突くと直線で外を伸びた。
 「(山田は最終ホームで)3番手を併走している感じだったけど、競り負ける感じはなかった。安心して付いていきました。バックでは(山田は)うまく中団が取れてた。自分はギリギリ届いたと思ったけど、正直、わからなかった。(ゴール前は)自分もサドルから浮くぐらい必死で踏んでた。あわよくば優勝したかったので、悔しいですね」

 逃げた仲野を最終バックで緒方がとらえると、吉田篤史は切り替えて追い込む。ゴールでは佐々木、鈴木と横一線の勝負も3着。
 「(打鐘手前で)飯田さんが内に来たけど、内を締めるって感じではなかった。(仲野は)出切るのは問題なく出切れるなと思ったら、緒方君が早めのまくりで来ていた。止められたら良かったけど、切り替えさせてもらった。緒方君がタレてくるのを待たずに踏んだけど、脚がいっぱいでした。せっかく(仲野が)行ってくれて、藤木(裕)さんも固めてくれたのに悔しいです」





次回のグレードレースは、伊東競輪場開設72周年記念「椿賞争奪戦」が12月22日~25日の日程で開催されます。
今シリーズは地元勢が充実しており、深谷知広、渡邉雄太、大石剣士とそろっています。吉田拓矢、宿口陽一のSS班関東コンビはいますが、深谷選手が主役を演じるか。今年のGIII開催もいよいよラスト。掉尾を飾るのは果たして誰か?
また、最終日第9レースに於いて、レインボーカップ・チャレンジファイナルが一発勝負で争われます。こちらも見逃せません。

12月8日時点の出場予定選手データを分析した、伊東競輪「椿賞争奪戦」GIIIの主力メンバー及び狙い目選手を紹介する「プロスポーツ号外版」は以下をクリックしてください。

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