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講義ノート 気象の基礎 その2

気温・気圧・水蒸気の3つが天気を作る

空気は太陽によって暖められた地表が温める
→温度差は上下の気流を生む(暖かい空気は軽い)
→上昇気流は低気圧を生み、下降気流は高気圧となる。地表付近では高気圧から低気圧へ風が吹く

水蒸気は雲をもたらす
→雲の形と大きさは大気中に含まれる水蒸気の量と上昇気流の方向が決めている

気圧


気圧とは単位面積の上にある大気の重さ。
標準大気圧は1013hPaを1気圧としている。
1m2の面積の上にある空気の質量は10340kg
5km上昇すると気圧は約半分になる。
飛行機の高度計は気圧の変化を基にする。

高気圧と低気圧


同じ気圧の地点を結んだ線が等圧線。周囲より気圧の高い部分を等圧線で囲んだところが高気圧、一方、周囲より気圧の低い部分を等圧線で囲んだところが低気圧。
http://www.jma-net.go.jp/matsue/


高気圧の下の地表付近は周囲より気圧が高いため、周囲との気圧の差により風が吹き出している。
それを補充するために空気が上空から降りてくる。
これを下降気流という。
高気圧の中では一般に雲が発生しにくくなっている。


低気圧では逆に周囲との気圧差により中心に向かって空気が集まり上昇気流が発生する。
上昇気流があると、雲ができ、雨が降りやすくなる。
低気圧が発達するほど、中心に流れ込む風は強くなるために、上昇気流も強くなって大規模な雨雲ができる。

風の観測

大気の流れのうち、主に水平方向の動きを風という。
風が吹く原因は大気中に気圧の差ができることだが、実際はかなり複雑

風の三要素
風向:風が吹いてくる方向
風速:単位時間に大気が動く距離。m/s
風力:風が吹いたときの陸上や海上の状態。0-12の13段階に分けられている。

熱対流による風

風のほとんどは熱対流が原因となって気圧差が生じるためにおこる
海陸風 日中に海風が吹き夜間は逆に陸風が吹く
山谷風
季節風
海陸風や季節風などの熱対流による風は、太陽放射などによって、地表面のある地域が周囲よりも高温になると、そこでは上昇気流ができる。そこへ周囲から空気が流れ込む。このとき上層では空気が流れだす。
このように温度差によって生じる循環を熱対流という。

地衡風

地上から1㎞以上の上空では地面との摩擦がない。気圧傾度力とコリオリの力が釣り合っているとき、地衡風が吹く向きは北半球で低圧部を左に見て吹く。

傾度風

地上から1㎞以上の上空で、等圧線が丸い時、遠心力もうける。北半球の上空の風は等圧線と平行に低圧部を左に見て進む

地上付近の風

地上付近の風は、地表との摩擦力も働き、これらの合力によって風向きが決まる

前線

地球は太陽から熱(エネルギー)を受けるとともに,地球からも熱(エネルギー)を出している。 太陽からやってくる可視光線などの電磁波を太陽放射,地球から出ていく赤外線の電磁波を地球放射という。


http://www.keirinkan.com/kori/kori_earth/kori_earth_1_kaitei/contents/ea-1/3-bu/3-2-1.htm

太陽放射のエネルギー

地球に届く太陽放射エネルギーは約1.37kW/m2. 太陽定数という
1m2に受ける太陽放射がどのくらいのエネルギーかというと、水1gの温度を1℃上昇させるのに必要なエネルギーが約4.2J(これは1cal)。1W=1J/s。1.37kWは1370J/s。 1秒当たり1370÷4.2≒326gの水を1℃上昇させるエネルギーに相当する。

太陽高度と太陽放射

球状をしている地球は,太陽高度は低緯度が高く,高緯度ほど低い。このため,単位面積当たりの太陽エネルギーの入射量は低緯度ほど高くなる。太陽高度(h)における単位面積当たりの入射量はsin(h)に比例する。
緯度30度の太陽高度は90-30=60で60度

大気の循環

低緯度ほど太陽エネルギーの入射量は高いが,地球全体では熱収支がつりあっている。単位面積当たりの地球からの吸収量と地球からの放射量を緯度別にみると,低緯度では吸収量が多く,高緯度では放射量が多く熱収支が不足している。
熱が過剰である低緯度から不足している高緯度への熱輸送は,以下の3つの方法で行われている。
1.大気の大循環による熱輸送
2.海流による熱輸送
3.大気中の水蒸気(潜熱)による熱輸送

海流による熱輸送

大気中の水蒸気

水は気体、液体、固体と状態を変えながら循環し熱を運ぶ。
氷→水→水蒸気のときは熱を吸収し、逆は熱を放出する。

湿度

水は一定の気温のもとで単位体積当たりの空間に含むことのできる水蒸気量に限界がある。これを飽和水蒸気量という。
これは気温が高いほど大きい。
湿度は飽和水蒸気量に対する、水蒸気の量の割合をいう。
だから気温15℃で湿度50%と気温30℃で湿度50%では30℃の時のほうが水蒸気量は2倍以上ある。


気温が14℃で1m3中に9gの水蒸気を含んだ空気があります。
(1)この空気の湿度は何%ですか。四捨五入して小数第一位まで答えなさい。
 湿度は飽和水蒸気量に対する水蒸気量の割合を言う。よって
 ここで飽和水蒸気量は表より12.1g、現在の水蒸気量は9gだから
 湿度は 9÷12.1=0.7438 小数第一位までの%で答えるので 0.7438×100=74.38 四捨五入して74.4 湿度は74.4%
(2)この空気の温度を20℃まで上げると、1m3あたり、あと何gの水蒸気を含むことができますか。
 表より20℃の飽和水蒸気量は17.3g。よって 17.3-9=8.3 答え 8.3g
(3) この空気の温度を6℃まで下げると、1m3あたり、何gの水滴が生じますか
 6℃での飽和水蒸気量は表より7.3g。よって、現在9g含まれている水蒸気のうち過剰なものが水滴になる。よって
 9-7.3=1.7 答え 1.7g

大気の安定/不安定


空気の塊をある高さに持っていった場合は、上昇した空気の塊の重さが周囲の空気より軽ければ上昇し、重ければ下降する。
同じ量の空気を比べた場合、温度の低い空気の方が温度の高い空気よりも密度が高くなる。
空気の塊が上昇すると、高い所は気圧が低いので、上昇した空気の塊は膨張して温度が下がる。上昇した空気の温度が周りの空気より下がると、密度は周囲の空気より高く重くなり、もとの高さに戻る。
上昇させた空気の塊の温度が周囲の空気よりも高い場合(左)は、上昇した空気の塊の方が周囲の空気よりも密度が小さく軽いと。このため、上昇した空気の塊はさらに上昇する。

安定な大気
地上の気温が20℃、上空100mの気温が19.8℃だったとする。
このとき、地上にある空気の塊が上昇したとすると、上昇した空気は、100m上昇するごとに約1℃下がるから、上空100mでは19℃になる。
このように、持ち上がった空気の塊が周りの空気よりも温度が低い場合、持ち上がった空気の塊の方が重いので、上昇せず下降する。
空気が下降するということは、上空に雲ができない。そのため大気が安定し、雨が降らない。

不安定な大気
地上の気温が20℃で、上空100mの気温が18℃だったとする。
このとき、風が海から山の方に吹くなどして、地上にある20℃の空気が持ち上がったとする。
上昇した空気は、100m上昇するごとに約1℃下がるから、上空100mでは19℃になる。
このとき、持ち上がった空気の塊は周りの空気よりも気温が高くなっている。
そのため、持ち上がった空気の塊の方が軽いので、空気の塊は浮力を受けて、どんどん上昇する。つまり、持ち上がった空気の温度が周りの空気の温度より高いと上昇気流が起こる。
上昇気流が続くと、いずれ雲が発達して、雨が降る。

断熱変化

空気は熱を伝えにくい物質なので、短い時間では、空気の塊とまわりの空気の間で熱のやり取りは無視できるほど少ない。
周囲との熱のやり取りが無視できる状態で体積が変化することを断熱変化という。

大気中を空気塊が上昇するとき初めは乾燥断熱率(1℃/100m)で温度が下がり、凝結高度(水蒸気が水になり始める温度になる高さ)に達すると雲が発生する。(雲底)
こののちは湿潤断熱率(0.5℃/100m)で温度が下がり、雲が成長する。
空気塊の温度とまわりの温度が等しくなると雲の成長が止まる。(雲頂)

フェーン現象


ふもとで20℃の気温は、山頂(2000m)と山の反対側(0m)の気温は何度になっているか。
まず、水蒸気をたくさん含んだ湿った空気が山に沿って上昇する。
標高が高くなるにつれて、気温が下がり、水蒸気は水滴となって雲ができる。
  1000mのところの空気の温度は?乾燥空気なので10℃下がるから20-10=10 10℃
この雲が雨を降らせて、山頂まで達する。
  山頂での空気の温度は、湿潤空気が1000m上昇するので、さらに5℃下がる。よって10-5=5 山頂は5℃
その後の空気は乾燥。
この空気が山に沿って下降。
  乾燥空気が2000m下がるので、気温は20℃上がる。よって反対側のふもとは、5+20=25 25℃
ちなみに、乾燥空気(雲がない) :1000m上昇につき10度気温が下がる。
湿潤空気 (雲がある):1000m上昇につき 5度気温が下がる。
と計算する

前線

暖かい空気と冷たい空気が接したとき、すぐには混じり合わないで、境目を作る。この境目が、前線面で、その前線面が地上と接したところが前線。
前線には3種類ある。
空気は暖かい方が冷たいものよりも軽い。

寒冷前線:

冷たい空気(寒気)の方が暖かい空気(暖気)より勢いが強い場合、冷たい空気が暖かい空気を押し上げながら下に潜り込んで進む。これが、寒冷前線である。冷たい空気が暖かい空気の下にもぐり込む場合、前線面(境目)は、左図のように丸くなり暖かい空気を急激に押し上げる。急激に押し上げられた空気は、冷えて積乱雲をつくる。積乱雲は、たてに成長した幅がせまい雲なので、大粒の激しい雨を短時間降らせる。

温暖前線:

暖かい空気(暖気)の方が冷たい空気(寒気)より勢いが強い場合、暖かい空気が冷たい空気の上を滑るように上昇しながら進む。これが、温暖前線である。この場合、前線面(境目)は、中図のように斜め横に広がり、暖かい空気がゆっくり上昇する。ゆっくり上昇した空気は、後方の前線近くに層状の乱層雲を作る。乱層雲は、横に広く広がっているので、小雨が長く降り続く。

停滞前線:

(梅雨と秋の長雨)暖かい空気と冷たい空気が接したとき、すぐには混じり合わないで、前線面を作るのは、寒冷前線や温暖前線と同じだが、暖かい空気(暖気)と冷たい空気(寒気)の勢いがほとんど等しいため、前線が同じ位置にとどまる(停滞する)。これが、停滞前線である。この場合、暖かい空気が冷たい空気の上に乗り上げる形になり、温暖前線と同じ前線面を作る。ここでは、暖かい空気はゆっくり上昇するので、温暖前線の時と同じように層状の乱層雲を作る。乱層雲は、横に広く広がっている上に、停滞前線が移動しないため、何日にもわたって天気が悪い日が続く。


低気圧に伴う前線

世界の気候帯

世界の気候帯は大きく5つ+高山帯に分かれる。
(1)一年を通して気温が高く雨が多い気候帯:熱帯(torrid zone)
(2)降水量がきわめて少なく、砂漠や草原を形成する気候帯:乾燥帯(arrid zone)
(3)四季の変化が見られ、比較的降水量も多く暖かい気候帯:温帯(temperate zone)
(4)一年の気温差が大きく、夏は短いが比較的暖かく冬には氷点下になり寒さが厳しい気候帯:冷帯(cool-temperate zone)
(5)一年を通して雪と氷に閉ざされる気候帯:寒帯(arctic zone)

気温と降水量を組み合わせて12種類に気候区分

気温
  ①熱帯( A )…最寒月平均気温( 18 )℃以上
  ②温帯( C )…最寒月平均気温( -3 )℃以上、( 18 )℃未満
  ③冷帯( D )…最寒月平均気温(  -3  )℃未満、最暖月平均気温( 10 )℃以上
  ④寒帯( E )…最暖月平均気温(  10  )℃未満
降水量
  ①「 f 」…一年中降雨(最少雨月降水量が60mm以上)
  ②「 w 」…冬季少雨(夏の最多雨月降水量が冬の最少雨月降水量の10倍以上)
  ③「 s 」…夏季少雨(冬の最多雨月降水量が夏の最少雨月降水量の3倍以上)
  ④「m」モンスーン気候:fとwの中間の意味

日本の気候区分


(1)北海道気候

(2)日本海岸式気候

(3)太平洋岸式気候

(4)内陸式気候

(5)瀬戸内式気候

(6)南西諸島気候


ウユニ塩湖の星空
by加賀谷譲